〈戸籍法改正〉どうなる? キラキラネーム「卒業式で校長先生に名前を間違えられた」「名前はかわいいのに見た目がフツー…」渋谷で300人に聞いた切なすぎる話!
3月7日、政府は戸籍法などの改正案を閣議決定した。法案が成立すればこれまで戸籍に記載がなかった氏名の「読み仮名」が必須となるほか、読み方に一定のルールが設けられる。いわゆる「キラキラネーム」に代表される本来と異なる漢字の読み方に一定の制限がかけられる可能性が出てきたのだ。そこで「集英社オンライン」ではキラキラネームの実情について、渋谷で300人に緊急アンケート取材を実施した。
この“キラキラネーム法案”ともいえる改正案が成立した場合、2024年度から施行される見通しだ。なぜこのような改正案が提出されるのかというと、背景には「行政手続きのデジタル化」がある。3年前に新型コロナ給付金が給付された際、戸籍に読み仮名がなかったために銀行口座との結びつけに手間取り、給付が大幅に遅れる事態となったのだ。戸籍に読み仮名を記載することでこういった作業の効率化につながるという。
改正案では「読み方は一般に認められているもの」と規定され、「いきすぎた『キラキラネーム』など社会に混乱を招く極端なものは記載されない」とされている。ただし、辞書に載っていない読み方でも社会にある程度受け入れられている読み方であれば認められる方向だ。
認められないケースについては「法律施行までに通達で示す方針」とされているが、原則認められないケースとして、
1 漢字の意味と反対の読み方をさせる(高と書いて「ひくし」と読ませる)
2 読み違いかどうか判然としない(太郎と書いて「サブロウ」と読ませる)
3 漢字の意味や読み方からはおよそ連想することができない(太郎と書いて「マイケル」と読ませる)
などが想定されている。改正案が成立すればすでに戸籍がある国民全員が読み仮名の記載を行う。
この改正案に対しては「名前の読み方まで国が口を出すのか?」「昔、話題になった光宙(ピカチュウ)や天使(エンジェル)みたいな名前がつけづらくなることには賛成」など賛否両論がネット上で議論されている。
今回、「集英社オンライン」ではキラキラネームにまつわるエピソードについて渋谷で300人の若者に尋ねてみた。
まずは自身も含め周囲の知人か「友人にキラキラネームはいるか?」と尋ねたところ、55人がキラキラネームが「いる」と回答。一例を以下に紹介しよう。
勉人(たけと)くん
「初めて読む人はみんな〝べんと〟と読みます。今まで初見で読めた人はいませんでした」(20歳男性・大学生)
虎銀(こてつ)くん
「友人の話ですが、かなりの確率で〝とらぎん〟と間違った読み方されると言っていました。『こてつだよ!』といちいち訂正するのが面倒だと言っていました」(10代男性・高校生)
朗花(さえな)さん
「〝ろうか〟とかって間違えられますね。あとはまったく読めないという人も多いです。自分自身はけっこう気にいっているんですけどね」(20代女性・大学生)
また、字面だけを見ると読めた気がしても、「実際の読み方は難解」との名前も。
七海(ほな)さん
「圧倒的に〝ななみ〟と読まれます。まあ、そうですよね。卒業式でも校長先生にも名前を間違えられていました」(10代女性・高校生)
南七星(ななほ)さん
「最初に〝ななせ〟でしょ?と聞かれて違うと言うと、みんな考え込んでまさかと思うけど〝みなみしちせい〟?と尋ねてきます」(10代女性・高校生)
真直(ますぐ)くん
「趣味で知り合った友人の名前なのですが〝まっすぐ〟ではなく〝ますぐ〟。まず読めないですよね。〝ますぐん〟というあだ名で呼ばれていたのですが、まさか本名からきているあだ名とは思いませんでした」(20代男性・会社員)
ヒップホップ好きな父がつけた名前は“鈴音”
当て字で外国人風の読みをする名前もまだまだ根強い人気があるようだ。
藝(うえる)くん
「由来とかはまったくわかりませんが、父親が名付け親と聞いています。両親とも日本人なので外国人ぽい名前が恥ずかしいときもありましたけど、もう慣れましたね」(10代男性・高校生)
都夢(とむ)くん
「僕の時代はまだキラキラネームというのが根付いていなかったので、よく「外国人か!」って、いじられましたよ」(30代男性・会社員)
鈴音(べる)さん
「友達からラッパーみたいだ、と言われます。私自身はまったくそっち系ではないのですが、父親がヒップホップ好きで『音』という字を入れたかったそうです」(10代女性・高校生)
他にも青空(はるく)、空(すかい)、竜生(りゅうい)、美安歌(びあんか)などがあった。また、親が好きなテーマパークやブランドやキャラクターにちなんで名付けたという名前も。
蘭人(らんど)くん
「後輩なのですが、彼の母親がディズニーが大好きだったというのが由来みたいです。本人はあまり気にいってないみたいでしたが(笑)」(20代男性・大学生)
史惟(しい)くん
「蘭人(らんど)の弟です。やっぱり本人はあまり気に入っている様子ではありませんでした(笑)」(20代男性・大学生)
未虹(みにぃ)さん
「ディズニーのキャラクターに有名なミニーがいるから、ディズニー関連の話になるとよく茶化されてました。友達の彼女なんですけど、ヒロインキャラの名前だけあって可愛かったです」(20代男性・大学生)
翼(たばさ)さん
「友達なのですが〝サマンサタバサ〟と言われていました。たばさの家はお金持ちだったし、彼女は見た目も可愛かったからぴったりの名前だと思っていました」(20代男性・会社員)
あだ名がバンホーデンになる“心愛”って?
また、親がセシルマクビーという洋服のブランドが好きだから星知(せしる)、シャネルが好きだから心(ここ)という名前の子もいた。当然、つけられた子はイジられることも多いと言う。
心愛(ここあ)さん
「元カノなのですが小さい頃はバンホーテンとか森永とかココアのメーカー名で呼ばれていじられていたらしいです。ただ、高校生くらいになると可愛い名前だと言われることが多くなったみたいで本人も気に入っている様子でした。ちなみにバンホーテンのココアが好きだと言っていました(笑)」(20代男性・会社員)
世聞(せぶん)くん
「常に世の流れを読んで、世の声に耳を傾けられるようにという立派な由来はあるのですが、セブンイレブンといじられます」(10代男性・高校生)
真鈴(まりん)さん
「私の元カノがまりんちゃんでした。もちろん『パチンコ海物語』のマリンちゃんイジリは相当されたみたいです。ただアイドル顔負けのビジュアルで学校でも相当モテて目立っていたので、“名前負けしなくてよかったね”と話したことがあります」(20代男性・会社員)
キラキラネームの由来となった“キラキラ系”の名前もいまだに人気だ。
騎士(ないと)くん
「由来は父親が好きだった『スターウォーズ』のジェダイの騎士からと聞いてます。小さい頃は『仮面ライダー龍騎』の中に仮面ライダーナイトってライダーがいてカッコいいって思われてました」(25歳男性・会社員)
綺羅里(きらり)さん
「一周回って最近だとそんなに珍しいとは思われないみたいです。今は逆に〝はな〟みたいなひらがなの子の方が目立ってますよね」(20代女性・大学生)
輝羅良(きらら)さん
「名前について嫌だとかは思わないけど、昔は書くのがめんどくさいって思ってた。だから今でもひらがなで書いちゃうことが多いです」(20代女性・会社員)
“名前いじり”が“いじめ”に発展…
可愛い名前だけど私は普通だから…
最愛(もあ)、萌愛奈(もあな)、琥珀(こはく)、樹音(じゅおん)、空蒼(くう)、来夢(らいむ)などの“綺麗系ネーム”には、こんな変わり種のエピソードも。
心姫(ここひ)さん
「中学生、高校生の時は名前のせいでイジメられました。漢字からとても可愛い感じを連想させてしまうのですが、私自身はごく普通の見た目だったからツラかったです」(20代女性・会社員)
輝蘭(きらん)くん
「なんか女の子っぽいし、キラキラすぎる名前が嫌。名前が嫌すぎて初対面の人にはできれば偽名を使いたいなと思う時がある」(20代男性・会社員)
七夕(なゆ)さん
「やっぱり7月7日が近くなると“七夕ちゃんの季節だよ”みたいな感じでいじられます。ただそのおかげで7月7日がもうひとつの誕生日みたいに思えるようになりました」(20代女性・大学生)
キラキラネームの当事者からは「読み間違いされたり、いつも読み方を聞かれるのが面倒」との声が多く聞かれた。
法改正でこれらは解消されるのだろうか。
取材・文 集英社オンライン編集部ニュース班