ステッキ専門店に聞く、正しい杖の選び方・持ち方・歩き方「バッグや傘を選ぶように楽しく選んで」
気をつけていても起こってしまう《うっかり転倒》。万全を期すために、杖や靴の選び方を知っておいてもいいかもしれません。最近は自治体の主催する予防教室なるものも……。骨折経験のあるライターが専門家を訪ねました(撮影:藤澤靖子)
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バッグや傘のように楽しく選んで
在宅仕事で日にも当たらず、おまけに長年の運動不足がたたって、骨粗しょう症との診断を受けてはや5年。注射と服薬の治療は続けているが、なかなか骨密度は上がってくれない。
もちろん骨折はしたくない。しかしながら、年齢を重ねると本当に、段差と呼べないくらいのちょっとした段差でつまずくもの。一体どうしたらいいのだろう。
まずは「転ばぬ先の杖」との教訓にしたがい、ステッキの専門店を訪れてみた。浅草の「瀬川商店」は、昭和6年創業の杖専門メーカー。熟練の職人による軽量で機能的なステッキ(歩行補助杖)の製造と販売を行っている。
店頭にはインバウンドのお客さんが喜びそうな日本刀ふうのおちゃめな傘も並べつつ、隣には目の不自由な人向けの白杖も並び、さすが杖の専門メーカーだと思わされる。
店内に入ってまず驚くのは、おしゃれな花模様から蒔絵風のシックな柄まで、バリエーション豊かなステッキの数々だった。
「もとは黒や茶色など地味な色が多かったのですが、20年ほど前からカラフルなステッキが増えました」と教えてくれたのは、瀬川商店三代目の瀬川洋一さんだ。

ステッキの素材も長さもさまざま
体のバランスを保ち、歩行の安定をサポートしてくれるステッキ。年齢とともに足腰の筋力が弱まってきたり、膝や腰に不調を抱えるシニアには欠かせないアイテムといえるだろう。
しかしそのイメージが強いためか、「最初は、抵抗感のある人も多いのです。ご家族からプレゼントされても、『年寄り扱いしないで!』と反発してしまったり。いわば、初めて電車で席を譲られた時のようなショックがあるようですね」。
とはいえ実際に使ってみれば、歩行の不安はぐっと軽くなる。私もケガでしばらく入院して下半身の筋力が落ちてしまった時、ステッキを使えばリハビリの散歩が無理なく行えたことを思い出す。
またおしゃれなステッキは、「お友だちから褒められて、次は違う色が欲しくなったり、バッグや傘を選ぶように揃えていく方も多いです」。
そうした品揃えの豊富さはもちろん、専門店では実際に見て触れて、「自分の体や使い方」に合わせてステッキを選べるというメリットも大きいだろう。
まずステッキの長さ。大まかには「身長の半分の長さ+2〜3cm」を参考に決める。私ならば152cm÷2+2〜3cmで78〜79cmだが、さらに瀬川さんは私に計測用のステッキを持たせて微調整。
「持った側の足先の20cm前にステッキの先を置いて、肘が30〜40度の自然な角度に曲がったあたりが、ちょうどいい長さになります」と教えてくれた。

正しい握り方の一例
長さの調節や折り畳みができるものも
瀬川商店が扱うステッキには、木のシャフト(支柱部分)を切って調節する一本ステッキと、上下に分かれたシャフトで調節するスライドステッキ、携帯に便利な折り畳みタイプがある。
最も長さの調整が利くのは一本ステッキだが、「一度切ると元に戻せませんし、使い方によっても自分に合う長さは微妙に違う。初めて持つ方はスライド式から試すといいと思います」。
折り畳みタイプはバッグに収まるほどコンパクトになるので、食事や観劇などの時にも邪魔にならず、また「帰り道にちょっと疲れた時だけ取り出す、といった使い方もできますね」。
ハンドル(グリップ)も素材や形状、サイズが一本一本微妙に違うため、手の大きさや握りやすさを考えて選ぶと良い。
T字やL字ハンドルの場合、持ち手の端だけを持つのは不安定になり危険だそう。「人差し指と中指で支柱を挟むか、人差し指を支柱に添えてグリップの中央をしっかりと握ってください」と教えてもらった。

<骨活ポイント>
続いて、歩き方。
痛みや不調のある足と反対の手に持ち、(1) ステッキを20cmくらい前につく。(2) ステッキに体重をかけつつ、悪いほうの足を前に出し、(3) 続いて、良いほうの足をステッキより少し後ろに出す。
最初は少しとまどうものの、3拍子のリズムをつかんでくると歩行がスムーズになるのが実感できる。また、痛みが少ない場合は(1) と(2) を同時に行う、2拍子のリズムでもいいそうだ。
続いて実際にステッキを選んでみようと棚から手に取って、その軽さにびっくり!
「100歩進めば100回上げ下げするわけですから、できれば軽いほうがいい。加工しやすいアルミ製のほかに、当社ではゴルフや釣り具のメーカーに依頼して軽くて丈夫なカーボンファイバー製のステッキも作っています」と瀬川さん。逆にあまり軽いと不安だという人は、重みのある自然木などを選ぶそうだ。
通販でも手軽に手に入るとはいえ、「やはり、《気持ちの問題》が大事なんです。使っていてどこか『不安だな、怖いな』と感じるならば、専門店で自分に合ったステッキへの買い替えを検討してほしいですね」。
また先端に付けるゴムは消耗品。金属シャフトが見えるほどすり減ったまま使うと、地面についた時に滑って転倒したり、ステッキの破損にもつながるため、早めの交換がおすすめだという。その時に再度、長さの調節など使い方の相談ができるのも、専門店ならではの頼もしさかもしれないと思った。
「転びにくい靴選び」につづく
