頼総統の外遊 中台対立が脅かす飛行の自由
中国は台湾を国際社会で孤立させるため、他の国に台湾との断交を迫ったり、台湾の活動に協力したりしないよう圧力をかけてきた。
中台の緊張が続く中、アフリカで台湾の航空機の飛行が認められず、国際法に基づく飛行の自由が脅かされる事態が生じたことに、懸念を禁じ得ない。
台湾の頼清徳総統が、2日から5日までアフリカ南部エスワティニを訪問した。当初は4月下旬に訪問予定だったが、中国が妨害したとして取りやめていた。
頼氏の外遊は、異例の経緯をたどった。頼氏は4月に総統専用機に搭乗する予定だったが、セーシェル、モーリシャス、マダガスカルの3か国が上空の「飛行許可」を取り消したため、出発の前日になって延期を発表した。
台湾専用機への飛行許可取り消しについて、3か国は台湾に理由を明らかにしなかったというが、台湾側は、中国が3か国に「経済面での威圧を含む強い圧力をかけたことが原因だ」と主張した。
その後、エスワティニ副首相が国王専用機で台湾を訪問したことから、頼氏は往復ともこの専用機に搭乗して訪問を実現させた。エスワティニはアフリカで唯一、台湾と外交関係を維持している。
頼氏の訪問実現について、中国外務省報道官は談話で「外国機でこっそり台湾を抜け出した、密航まがいの外遊」と非難した。中国は、先に台湾機に飛行を許可しなかった3か国の対応を「高く評価する」と称賛していた。
そもそも、頼氏の専用機が通過しようとしていた空域は、3か国周辺の公海上空だった。国連海洋法条約は、公海における「上空飛行の自由」を認めている。
一方、国連の専門機関・国際民間航空機関(ICAO)は、公海上の飛行の安全を確保するため、加盟国の領空周辺に「飛行情報区」を設定し、各国に安全な飛行のための天候情報提供や高度指示などを実施するよう求めている。
3か国は今回、こうした航空交通業務を拒否したことになる。飛行の安全を阻害する正当な理由を示さないまま、飛行情報区の担当国が飛行許可を取り消す事態が相次げば、世界中で飛行の自由が維持できなくなる。
木原官房長官は航空行政について、「航空安全という国際社会の共通利益を確保するために、すべての関係国が透明性をもって運用することが重要だ」と述べた。日本は、航空交通を武器化する動きには強く反対していくべきだ。
