「日本一高価な住宅地」は“意外な場所” 不動産業者も「あそこが1位というのは不思議」
9年連続トップ
地下鉄の駅を出て、ちょっときつい坂を上ること約6分。アメリカ大使公邸や高級ホテルのオークラ東京が見えてきたところに10階建てのマンションがある。街並みはすっきりとしていて、コンビニや飲食店は見当たらない。時折、高級外車がゆっくり走ってゆく。場所が場所だけに、ポリスボックスがあり、警察官がうろんな視線を送ってくる。
ここは、「東京都港区赤坂1丁目14番地11号」。3月17日に発表された公示地価で、日本一高価な住宅地となった場所だ。
公示地価とは不動産取引の際の基準となる価格で、件の赤坂の土地は1平方メートル当たり711万円。都心の地価高騰もあって昨年より2割もアップしており、しかも9年連続でトップだ。ちなみに、商業地では中央区銀座4丁目の山野楽器銀座本店がトップである。高級店・老舗が立ち並ぶ銀座が日本一なのは分かるにしても、なぜ、人通りもまばらな赤坂の一角が全国トップの住宅地なのか。千代田区の番町(ばんちょう)や渋谷区松濤(しょうとう)、最近「ヒルズ」で話題の港区麻布台など、高級な場所なら他にもあるはずだ。

地元の不動産業者に聞いてみると、
「たしかに、あそこが日本一の住宅地というのは不思議だと思っていました。現地はホーマットロイヤルというマンションが立っているぐらいで、他は宗教団体とか法人が持っている物件ばかり。不動産の売買はめったになく、もちろん、私たちの会社にも情報は入ってきません」(現地から300メートルほど離れた場所にある「六港商事」の担当者)
複雑な手順
毎年3月に発表される、1月1日時点での公示地価を決めているのは、国土交通省が設置する「土地鑑定委員会」だ。メンバーはベテランの不動産鑑定士や大学教授など7人である。
不動産アナリストの森島義博氏が解説する。
「公示地価の価格というのは、住所番地そのものではなく、近隣一帯の価値を指しています。赤坂1丁目の件のマンションはあくまで標準地であり、そこが必ずしも日本一高いというわけではありません。そもそも公示地価は、かなり複雑な手順で決められる。具体的には以前の取引事例との比較、賃貸に出した場合の収益性、取得価格といった三つのモノサシを使い、これらを比較衡量する。また“格差率”という指標もあって、交通の便や道路の広さ、安全な環境、周辺施設など、何十という項目にプラスやマイナス点をつけて総合点を出すのです」
なるほど、世界最強国の大使公邸と日本を代表する高級ホテルが目の前にあり、いつも警察官が見張っているという治安の良さ。やはり日本一であっておかしくない。
「週刊新潮」2026年4月2日号 掲載
