ついに、この日が来た…年収850万円・55歳部長が隠し続けた「秘密」。給料振込日「銀行の入金明細」で露わになった真実
毎月25日、銀行口座に振り込まれる夫の給料を確認する。それは、Aさんの妻にとって長年の習慣でした。ですが、ある日、画面に表示された金額を見て、思わず声が出ました。金額が大幅に少なくなっていたからです。この“異変”が、夫が1年間隠し続けてきた「ある事実」を明るみに出すことに――。事例と共に、50代ならではの「キャリアの節目」について考えていきましょう。
妻が気づいた給料の異変…夫が隠していた「秘密」
Aさん(仮名・55歳)は専門商社で働く会社員。28歳のとき、結婚を見据えて長く働ける会社に勤めたいと転職して以降、ずっと同じ会社で働いてきました。
転職当時の年収は300万円台後半。決して多くはありませんでしたが、この会社には年功序列の名残があり、勤続年数が増えるごとに収入は上がっていきました。
同僚の多くが転職していくなか、Aさんは自然と部長職の座に上りつめました。年収は54歳時で850万円(月収48万円、それ以外が賞与)。会社の規模からすると十分な水準です。ところが、右肩上がりだった収入に終わりが訪れました。「役職定年」の到来です。
Aさんの会社では、55歳以上の役職者は役職定年となり、一般社員として業務にあたる慣習がありました。役職手当の支給もなくなり、賞与も役職手当を含まない給与を基に決まります。結果として、月収は約32万円まで下がり、年収は4割減の見込みという厳しいものでした。
もちろん、長く会社に勤めているAさんが、この制度を事前に知らないわけではありません。54歳になったとき、人事担当に呼ばれ、資料とともに役職や給与体系の変更について説明を受けました。
しかし、Aさんはその事実を妻に伝えられませんでした。がっかりさせたくない、自分が会社で「終わった人間」だと思われたくない――複雑な感情が入り混じっていました。言わなければ、言わなければ……そう思う間に1年がたち、とうとう役職定年を迎えてしまったのです。
その事実が明るみに出た理由は、ごく単純でした。
「え? あなた、これ見て。間違ってる!」
その夜、妻が見せてきたのは、銀行の入金明細が表示されたスマホ。毎月25日に夫の給料を確認するのがルーティンだった妻が、その異変に気づきました。
Aさんには、こうなることがわかっていました。それでも、ついにその日がくるまで、何も言うことができなかったのです。
真実が明るみになった後の「静かな修羅場」
Aさんは観念しました。
「間違いじゃない。役職定年で給料が下がったんだ……」
そこから、妻との話し合いが始まりました。それは、静かな「修羅場」の空気です。なぜもっと早く言わなかったのか、そう詰め寄る妻。少なくとも60歳までは少しずつ年収が上がっていくのだろうと予想していた妻の想定は、突如大きく崩れたのです。
Aさんには2人の子がいますが、下の子は大学1年生。教育費はあと3年かかり、住宅ローンも抱えています。さらに、年収が減れば65歳から受け取る年金額にも影響が出ます。
もともと家計について夫婦で話す機会が少なかったというAさん。妻の怒りの理由が「収入減」そのものではなく、「その事実を隠していたこと」にあると気づき、深く反省したといいます。
「妻は怒りながらも、パートを増やしたり節約をしたり、家計の立て直しを考えてくれています。ですが、私を見る目は冷たいです。私も副収入を得たいですが、何をやればいいのやら……。役職定年という現実を直視せず、その時が来るまで放置してしまった。プライドなんて捨てて、もっと早く妻に相談していればよかったし、減った収入をどうするのか考えておくべきでした」
役職定年を見据えた老後計画の必要性
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の調査によると、「役職定年制」の導入率は2019年時点で28.1%。およそ3割の企業で導入されています。この制度がある会社では、55歳前後から役職定年が始まるケースが多いようです。
役職定年になると、それまでの肩書が外れるとともに、役職手当などがなくなり収入が減少します。1〜3割、場合によっては半分近くになるケースもあるといいます。
人材の流動性を高めることや若手社員に昇進の機会を与えること、人件費の抑制などが目的とされていますが、定年まで数年ある中で収入が大きく減ることは、経済的な面はもちろん、精神的な落ち込みも少なくありません。しかも、その数年後、60歳を迎えて継続雇用となれば、さらなる収入減が待っています。
50代は、会社員としてのピークを迎え、そしてそのピークが下り始める年代です。その収入でも納得しながら働く心構えをしたり、副収入を得たり、あるいはスキルアップや人脈づくりをして条件のよい他社に移ったりすることも可能でしょう。
50代特有の「キャリアの節目」をどう乗り越えるのか。早めに考えておくことが大切です。
