ここ1年で急増した「男の日傘」、きっかけは大阪万博? 「もはや“シェルター”です」傘ソムリエが説く推奨カラー
前編記事【「男が日傘なんて」はもう古い…今夏も必須のメンズ日傘、実は50〜60代こそ積極派だった】では、メンズ日傘の利用者が実は50代・60代のミドル層が多いという興味深いアンケート結果と、その背景に災害級の気候変動があるという実態を紐解いた。調査結果をさらに深掘りすると、「日傘を使っていない」と答えた男性の意識もさまざまであることが見えてきた。
【写真を見る】正しい日傘選び「色・形・機能」どこを見れば?ほか「ためらいはない」「もう違和感がなくなった」各世代男子200人の声も
前編で紹介したとおり、30歳以上の男性200人を対象にしたアンケートでは「使っていない」という男性が84.3%を占めた。

「近年の強い日差しの時は必要かなと思う」(68歳・茨城県)
「暑さ対策のため、男性も日傘をしたほうがいいと思う」(49歳・福島県)
「今後検討するかも。特に晴雨兼用の傘について検討したい」(67歳・愛知県)
と、前向きな声も聞こえてくる。使っていないけれど日傘にポジィティブな層とすでに日傘を使っている層と合わせると、回答者全体の42%(200人中84人)に達する。
今後はあり? 変わりゆく世間の空気
「ここ1年でメンズ日傘の普及率が急激に上がっていることを体感しています」と語るのは、世界初の「傘ソムリエ」であり、傘選びのプロフェッショナルとしてメディアやいベントで活躍する土屋博勇喜さんだ。
「大きな潮目の一つになったのが、大阪万博です。広大な万博会場で、日差しを避ける場所が大屋根リングくらいしかなかったため、日傘を無料で貸し出していました。それでも足りず、万博協会や大阪府が来場者に日傘の利用を呼びかけた影響は大きかったと思います。私自身、現地で日傘をさす男性たちにインタビューをしてみたのですが、『そら、こんな暑かったらさすやろ』という返答が返ってきました。それほどまでに、切実に暑さを感じているのだと痛感しましたね」(土屋さん、以下同)
東京都でも、HTT(電力を減らす・創る・蓄める)というカーボンフリープロジェクトの一環として、エネルギーを使わない暑さ対策である日傘の利用を積極的に呼びかけるなど、自治体や国レベルでバックアップの動きが加速している。
「最初は奥様のものを借りてみたり、あるいは奥様や娘さんからプレゼントされたりして日傘を体験される男性が多い。そこで『お、これは想像以上に快適じゃん』と気づき、そこからご自身の習慣になっていく。酷暑日の増加という自然環境の変化と、万博のようなイベントが重なったことで、男性が日傘を持つ心理的なハードルが一気に下がったと感じています」
激増するゲリラ豪雨にも! 日傘選びの3つの基準
日本の日傘市場は年々拡大を続けており、それに伴い業界全体で商品ラインナップも劇的に進化している。近年では、雨傘よりも、日差しもしのげる晴雨兼用傘の生産を増やすメーカーの動きが拡大しているという。
では、過酷な夏を乗り切るために、私たちはどのような1本を選べばいいのか。傘ソムリエの土屋さんは「失敗しない日傘選び」のポイントが大きく3つあるという。
「まずは、UVカット・遮光・遮熱性能を確認します。チェック方法はシンプルで、一つは、生地の裏面にコーティングが施されていること。もう一つは、製品に付いている『機能下げ札』で数値を確かめること。基本的には、UVカット率と遮光率が100%で、さらに、暑さも回避できる遮熱率が35%以上のものを選ぶのがオススメです。最近は技術の進化により、遮熱率が最高値67%に達するような、圧倒的に涼しい超高機能素材も登場しています」(土屋さん、以下同)
2つめはサイズ選びだ。
「目安は、広げたときに自分と普段持っている荷物がしっかり入るのが理想です。日傘の標準サイズは親骨(傘の軸から放射状に広がる骨組み)50センチが一般的ですが、広範囲をカバーしたい人や荷物が大きい人は55センチ以上を選ぶと安心感があります」
3つめは、突然の突風や強風から身を守る耐風性に着目。
「耐風性を示す、業界で統一の具体的な指標はありませんが、製品の特徴として風への強さを謳っているかをチェックしましょう」
実は雨傘よりタフ? 晴雨兼用傘の誤解
ところで、晴雨兼用傘というと、日傘がベースなのだから雨に弱いのでは、という先入観を持つ人も少なくないだろう。だが、土屋さんによればそれは全くの誤解だという。
「実は、裏面にコーティングが施されている晴雨兼用傘は、一般的な雨傘よりもはるかに高い耐水性を持っています。通常の雨傘の耐水性能が250〜350ミリ程度であるのに対し、晴雨兼用傘は、1,000ミリや数千ミリ、なかには1万ミリ以上の雨に耐えられるものもあります。つまり生地の性能だけで言えば、ゲリラ豪雨や大雨にも、十分に耐えうる力を持っているのです」
これからの傘選びは、強力な雨、風、日差しをブロックし、全天候で使える晴雨兼用傘一択といってもいえるかもしれない。また、日傘といえば黒、というイメージが強いが、灼熱化する日本の夏に、土屋さんが推奨するのは意外にも白やグレーなどの明るい色だ。
「色の特性として、外側の表面が明るい色であるほど太陽光を反射するため、傘の表面に熱がこもりにくく、体感として涼しく感じられます。とはいえ『明るい傘を差すのは気恥ずかしい』という男性の声も多いため、最近のトレンドとしては、男女兼用で使いやすい“くすんだ”白やグレー、ベージュといったニュアンスカラーが登場しています。そのため、大人の男性が日傘を持つハードルはさらに下がっていると思います」
日傘は「持ち運べる避難所」
古い価値観にとらわれて、いまだに日傘を「女性が使うもの」「男がさすのはダサい」と敬遠する男性諸氏の心理的な壁は高い。しかし、激変する環境を前に、日傘はもはや単なる日よけや日焼け止めアイテムではない。
「現代の日傘は、過酷な外気から生命や健康を守る『ポータブルシェルター』です」
と、土屋さんは強調する。
「雨が降ったら傘をさすのと同じように、過酷な夏に日傘をさすのは当たり前の行為。強い日差しや猛烈な熱波から自分の身を自分で守るという、いわば“防衛”の領域だと思います。私が接客時によくお伝えするのが、『ご本人が心配するほど、周りの人はお客様を見ていませんよ』ということ。ですから、我慢せずにぜひ一度、体験してみてください。圧倒的な快適性に納得するはずです」
さらに、周囲に与える印象という、身だしなみの観点からも、その価値は大きいと土屋さん。
「待ち合わせの場所に、汗だくで顔を真っ赤にして現れる男性と、日傘を使って汗をかかずにスマートに現れる男性。ビジネスでもプライベートでも、どちらが好感度が高いかは一目瞭然です。ぜひ、新時代のエチケットの一つとしても日傘を積極的に活用してみてほしいです」
●現在、日傘を使っていますか?
イエス 15.7% ( 31人)
ノー 84.3% (166人)
➡イエス派の声
1位 暑さ対策、熱中症予防(48.4%)
2位 紫外線や美肌対策 (25.8%)
3位 その他
➡ノー派の声
1位 持ち歩くのが面倒、邪魔 (35.5%)
2位 必要ない、帽子や車で十分 (26.5%)
3位 恥ずかしい、周囲の目が気になる(15.7%)
取材・文/荒木睦美
デイリー新潮編集部
