浜辺に打ち上げられたマッコウクジラの死因について調査していた研究者が、腸の中から香水の原料として高値で取引される龍涎香(りゅうぜんこう)の塊を発見しました。今回発見された龍涎香は重さ約9.5kgもあり、取引価格は50万ユーロ(約7700万円)になるとみられています。

Pathologist finds €500,000 ‘floating gold’ in dead whale in Canary Islands | Whales | The Guardian

https://www.theguardian.com/environment/2023/jul/04/las-palmas-pathologist-ambergris-block-dead-sperm-whale



$500,000 chunk of 'floating gold' found in dead whale | Live Science

https://www.livescience.com/animals/whales/dollar500000-chunk-of-floating-gold-found-in-dead-whale

アフリカ大陸の北西沿岸に位置するスペイン領カナリア諸島のラ・パルマ島の浜辺に、マッコウクジラの死骸が打ち上げられました。ラス・パルマス・デ・グラン・カナリア大学の動物病理学者であるアントニオ・フェルナンデス氏は、このマッコウクジラの死因について調査を実施しました。

以下の写真が、実際にラ・パルマ島の浜辺に打ち上げられたマッコウクジラです。



消化器系に問題があったのではないかと疑ったフェルナンデス氏がマッコウクジラの結腸を調べたところ、中に何か硬いものが入っていることに気がついたとのこと。フェルナンデス氏は、「私が取り出したのは直径50〜60cm、重さ9.5kgの石でした」「私が浜辺に戻ったのを皆が見ていましたが、手にしていたものが龍涎香だとは気づいていませんでした」と述べています。

龍涎香はマッコウクジラの腸内で発生する結石であり、消化が難しいイカやタコのくちばしが臓器を保護するために分泌物で覆われ、石のように固まったものと考えられています。作られたばかりの龍涎香は海や糞便の臭いがするそうですが、熟成されるにつれて甘い土のような香りに変化するとのこと。そのため、古くから香水の原料として重宝されており、合成原料が発明された現代でも依然として一部の企業は龍涎香を使用しています。

マッコウクジラの中でも龍涎香を作るのはわずか1〜5%程度だそうで、非常に希少なものといえます。通常、龍涎香はある程度の大きさになると体外に排出され、軽い比重のために海上を漂ったり、浜辺に漂着したりします。そのため、龍涎香は英語で「floating gold(浮遊する黄金)」とも呼ばれていますが、時にはマッコウクジラの体内にとどまり続け、腸を破裂させてしまうケースもあるそうです。

フェルナンデス氏の検証で、今回のマッコウクジラは龍涎香のせいで腸が破裂し、敗血症を起こしたために死亡したと結論付けられました。今回発見された龍涎香の写真が以下。



マッコウクジラは国際的に保全活動が進められており、条約による保護を受けています。しかし、動物の排せつ物と見なされる龍涎香については、アメリカやインドなどを除くほとんどの国々で合法的に取引することが可能です。

ラ・パルマ島を領有するスペインおよびEUでも龍涎香の取引は合法であり、今回発見された龍涎香の買い取り価格は約50万ユーロとみられています。フェルナンデス氏はこの龍涎香を売却し、2021年に発生した火山の噴火からの復興費用に充てたいと考えているとのことです。