【漢字トリビア】「熊」の成り立ち物語
「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は「熊」。熊手を抱えてそぞろ歩く酉の市。十一月十一日の一の酉に続く二の酉は、二十三日・勤労感謝の日。いつもに増して、にぎわいそうです。今回は「熊」に込められた物語を紹介します。

「能力」「才能」の「能」の下に、「れんが」と呼ばれる「火」を添えた「熊」という漢字。
そのなりたちには諸説あります。
「能」の形が大きな口をあけて尾をふりあげている熊の様子で、そこに黒く燃えたつ炎を添え、黒い熊を意味したという説。
「能」は「強い力がある」「すぐれた」という意味をもち、そこに勢いのある火を添えて勇壮な熊を表したという説。
白川文字学でおなじみの白川静博士は、「能」は獣の形であるらしいとするものの、なぜ下に火を加えているのかは明らかでない、としています。
熊は火の精とされる獣だからという説や、武勇の象徴とされるので燃える炎を加えたという説など、こちらもさまざまな言い伝えがあるばかりです。
熊の掌といえば、中国で珍重されている美味なる食材ですが、日本で「熊の手」といえば酉の市の風物詩。
酉の市はもともと、農民たちの収穫祭として始まったもので、東京都足立区花畑にある花畑大鷲神社では、農家の人々が農具や収穫した農作物を売っていました。
その中のひとつ、熊手が“運をかきこむ”縁起物として評判をよび、商売繁盛を願う商人たちの祭りになっていったのです。
ではここで、もう一度「熊」という字を感じてみてください。
『熊手と提灯』は正岡子規が病の悪化する前の明治三十二年に記した随筆です。
初冬の月が冴え渡る二の酉に、熊手を買って帰る人々を眺め、想像をたくましくしながら人物鑑定をする子規。
隠居しようとしない威張った父親のせいで、仕方なしに若旦那で居る、そんな人相の男がもつ中位の熊手。
普段着のまま下駄をかっかと鳴らして歩く、働きもののおかみがもつのは手ごろな熊手。
熊手で福を掻きこめば、明るい未来がきっと、やってくる。
実に綺麗で実に愉快な提灯に照らし出される無邪気な顔。
慌しい師走の手前の、ゆったりと華やいだ空気に感化され、ふと、希望にあふれた子どもの頃の気持ちになりかける子規。
いつしか小さな熊手を手にし、ささやかな夢を集めてみるのでした。
漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。
その想いを受けとって、感じてみたら……、
ほら、今日一日が違って見えるはず。
*参考文献
『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)
『動物の漢字語源辞典』(加納喜光/著 東京堂出版)
『ちくま日本文学040 正岡子規』(所収「熊手と提灯」)(正岡子規/著 ちくま文庫)
11月12日の放送では「在」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。
【あわせて読みたい】
★「ぼくのおじさん」で読み解く子どもの成長とは?(2016/11/2) http://tfm-plus.gsj.mobi/news/FBAlpDja0p.html
★今でも食べたくなる「おふくろの味」は何ですか?(2016/10/31) http://tfm-plus.gsj.mobi/news/fMoDCMQW00.html
★【漢字トリビア】「冊」の成り立ち物語(2016/10/30) http://tfm-plus.gsj.mobi/news/JCe6cYduYj.html
<番組概要>
番組名:「感じて、漢字の世界」
放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット
放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜7:20〜7:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)
パーソナリティ:山根基世
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/
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この記事の放送回を『radikoタイムフリー』で聴くことができます(1週間限定)。
(スマートフォンは「radiko」アプリ(無料)が必要です。⇒詳しくはコチラ http://www.tfm.co.jp/timefree_pr/)
■番組聴取は【コチラから http://radiko.jp/share/?sid=FMT&t=20161105072000】(無料)
聴取期限 2016年11月12日 AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用頂けます。
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「能力」「才能」の「能」の下に、「れんが」と呼ばれる「火」を添えた「熊」という漢字。
「能」の形が大きな口をあけて尾をふりあげている熊の様子で、そこに黒く燃えたつ炎を添え、黒い熊を意味したという説。
「能」は「強い力がある」「すぐれた」という意味をもち、そこに勢いのある火を添えて勇壮な熊を表したという説。
白川文字学でおなじみの白川静博士は、「能」は獣の形であるらしいとするものの、なぜ下に火を加えているのかは明らかでない、としています。
熊は火の精とされる獣だからという説や、武勇の象徴とされるので燃える炎を加えたという説など、こちらもさまざまな言い伝えがあるばかりです。
熊の掌といえば、中国で珍重されている美味なる食材ですが、日本で「熊の手」といえば酉の市の風物詩。
酉の市はもともと、農民たちの収穫祭として始まったもので、東京都足立区花畑にある花畑大鷲神社では、農家の人々が農具や収穫した農作物を売っていました。
その中のひとつ、熊手が“運をかきこむ”縁起物として評判をよび、商売繁盛を願う商人たちの祭りになっていったのです。
ではここで、もう一度「熊」という字を感じてみてください。
『熊手と提灯』は正岡子規が病の悪化する前の明治三十二年に記した随筆です。
初冬の月が冴え渡る二の酉に、熊手を買って帰る人々を眺め、想像をたくましくしながら人物鑑定をする子規。
隠居しようとしない威張った父親のせいで、仕方なしに若旦那で居る、そんな人相の男がもつ中位の熊手。
普段着のまま下駄をかっかと鳴らして歩く、働きもののおかみがもつのは手ごろな熊手。
熊手で福を掻きこめば、明るい未来がきっと、やってくる。
実に綺麗で実に愉快な提灯に照らし出される無邪気な顔。
慌しい師走の手前の、ゆったりと華やいだ空気に感化され、ふと、希望にあふれた子どもの頃の気持ちになりかける子規。
いつしか小さな熊手を手にし、ささやかな夢を集めてみるのでした。
漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。
その想いを受けとって、感じてみたら……、
ほら、今日一日が違って見えるはず。
*参考文献
『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)
『動物の漢字語源辞典』(加納喜光/著 東京堂出版)
『ちくま日本文学040 正岡子規』(所収「熊手と提灯」)(正岡子規/著 ちくま文庫)
11月12日の放送では「在」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。
【あわせて読みたい】
★「ぼくのおじさん」で読み解く子どもの成長とは?(2016/11/2) http://tfm-plus.gsj.mobi/news/FBAlpDja0p.html
★今でも食べたくなる「おふくろの味」は何ですか?(2016/10/31) http://tfm-plus.gsj.mobi/news/fMoDCMQW00.html
★【漢字トリビア】「冊」の成り立ち物語(2016/10/30) http://tfm-plus.gsj.mobi/news/JCe6cYduYj.html
<番組概要>
番組名:「感じて、漢字の世界」
放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット
放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜7:20〜7:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)
パーソナリティ:山根基世
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/
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聴取期限 2016年11月12日 AM 4:59 まで
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