トラブル発生! 仕事上の「謝罪」6つのアクション

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相手の肩書の軽重で頭の下げ方を変えてはならぬが、「仕事の場面」別の謝罪効果を最大化するコツは知るべし。

■モタモタしないで、すぐに駆けつける。謝罪の9割は、それで完了する!

「潔く詫びることで顧客や取引先などの心を癒やし、またこちらも許してもらうことで癒やされる。これを実現したときに謝り上手と評価され、ビジネスパーソンとして信用も得るのです」

こう語るのは、高井・岡芹法律事務所会長で人事・労務専門の弁護士として長年活躍する高井伸夫氏である。

これまで高井氏は礼を尽くした謝罪を欠いたばかりに、営業面で大きなダメージを受けるケースをたくさん目撃してきたという。ピンチをチャンスにする気概で顧客や取引先の相手の心に響く謝罪の基本手順を知っておきたい。

「やってはいけないのは通りいっぺんの粗雑な謝り方です。謝罪する相手が誰でも重要なのはこちら側の失策・失敗・無礼に対して、相手が最も重要視している視点は何かを把握すること。これが謝罪の手順その一です。人間は個々の価値観・性格がみな異なっており、同じ失策でも『そんなことは別に気にしない』という人もいれば、『逆鱗に触れたように怒る』人も。怒りの発火点の核心を掴むことが重要です」

謝罪を求めてくる側の怒りは、たいていは期待や理想と現実とのミスマッチから発生する。したがって、相手側の期待や理想とは何か、それらと現実との間にどのようなギャップが生じているのか、という根本的な部分を認識すれば的確な謝り方もでき、関係の修復に乗り出すことも可能だというのだ。

仕事上のトラブル発生時に動揺するからなのか、案外こうした基本的な心構えができていない人が多いという。

「トラブルが生じたらアポなど取らなくてよいから、何はさておき相手のもとに駆けつける。これは鉄則ですが今の若い人はできない。相手が留守なら『こういう事情でお詫びにまいりました。改めてまた伺います』と当人以外の人(秘書、同じ部署の人など)に告げ、このとき、自分の名刺に同様の趣旨を書き込んで置いてくるのです。相手が怒っていて、面会を拒絶されることもあるでしょうが、何度でも足を運ぶ。三顧の礼をされると、相手も『自分を立ててくれた』と感じ、怒りも徐々に鎮まる。会ってくれないからとお詫びメールで処理してはいけません」

そして、相手方と面会したら、「誠に申し訳ありません。ご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます」と頭を下げる。これだけで許してくれる場合も多いという。だがこのときトラブルの原因や弁解などをすぐ口にしてはいけない。言い訳と取られるのがオチだ。

「頭の下げ方は『深々と』が基本です。両手両足をそろえて上半身を45度くらい前に傾ける。時間にすれば、その最敬礼の状態でゆっくり3つ数えるくらいの長さは頭を下げたままにする。そうするとお詫びの余韻が残ります。自分としては深々と下げているつもりでも、人から見ると首だけちょっと下へ向けた程度にしか思えないことはよくあります。こんなときぐらいは人生最高のお辞儀をしてください。先方が複数人出てきた場合は、一人ひとりに頭を下げてお詫びします。もちろんポジションの軽重で頭の下げ方やお詫びの言葉を変えるような真似をしてはいけません。またお詫びして退出するまで、相手が許してくれそうだと油断して笑顔を見せてはいけません。心から申し訳ないと思っている表情を崩さない気構えが必要です」

帰社後は、改めてお詫び状を必ず自筆で書いて郵送することも重要だ。繰り返し謝意を述べると誠意の度合いが深まり、不祥事が「マイナス10」であっても、その繰り返しが「プラス14」のポイントを得て、差し引き「プラス4」となって、相手はこちら側の言い分を広い気持ちで受け入れてくれることもある、と高井氏は語るのだ。

「謝罪は、絶対に形式的・建前的・マニュアル的になってはいけません。そんな謝罪は心や姿勢の問題であることを知らない者がすることで、そうした行為からは、相手の心を溶かすだけの誠意や謙虚さがにじみ出てくるはずがありません。コップ1杯の水の中にも人間の心が入っているかいないかは、一瞬にしてわかるものなのです」。

●正しい謝罪の注意点

・謝罪先で出されたお茶には手をつけない
・タバコは吸わない
・椅子には浅く腰掛けて背筋を伸ばす
・すまなそうな表情を崩さない
・マニュアル的な謝罪は絶対回避する
・誤解を解くための弁解は必要だが、保身的なエゴ弁解(言い訳)はしない

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高井伸夫(たかい・のぶお)
弁護士。1937年生まれ。東京大学法学部卒業後、1963年に弁護士登録。企業の雇用調整によるリストラ問題、企業再生の各種相談や講演活動をおこなう。
内藤誼人(ないとう・よしひと)
心理学者。立正大学講師。有限会社アンギルド代表としてコンサルティング業務をする一方、執筆業に力を入れる心理学系アクティビスト。

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(大塚常好=構成)