廃プラとたばこの吸い殻が強靱な「次世代のアスファルト」に生まれ変わる
気をつけて運転しないと、ダラスでは普通の道路や高速道路の出入り口にある亀裂でパンクしたりするんですよね…。
「道に穴が…」とか、「暑さでアスファルトがフニャフニャに…」なんて経験、ありませんか? それとは関係ないのですが、海を漂うプラスチックごみや、街中に捨てられたたばこの吸い殻は、私たちの社会にとって厄介者です。
でも、もしこの「壊れやすい道路」と「あふれるごみ」というふたつの問題を同時に解決できる方法があったらどうでしょう?
実はいま、各地でプラスチックごみやたばこの吸い殻をアスファルトに混ぜて、道路をより強く、長持ちさせるという「一石二鳥」の試みが進んでいるんです。
テキサスの猛暑に耐える「プラスチックの道」
まずは、アメリカのテキサス州ダラス近郊にあるロックウォールという街の事例から。ここでは、テキサス大学アーリントン校(UTA)のSahadat Hossain教授が率いるチームによって、プラスチックを配合したアスファルトの試験導入が行なわれています。
私たちが普段使っているビニール袋やペットボトルなどのプラスチックごみを洗浄して細かく砕き、高温で溶かしてアスファルトの結合剤(ビチューメン)に混ぜるという方法をとっているそう。
ビチューメンの約8〜10%を廃プラに置き換えるといい、まるでコンクリートの中の鉄筋のような役割を果たしてくれるのだとか。
驚くのはその耐久性です。テキサスの夏は38度を超える猛暑日も少なくありません。もう40度を超えても驚かなくなりました。通常の道路が熱でダメージを受けるなか、プラスチックを配合した道路は、目立った亀裂もなく、しっかり形を保っているとのこと。
The Conversationに寄稿した記事で、Hossain氏は「私の目標は、プラスチック汚染の問題を、道路の老朽化という別の問題を解決するために活用することです」と述べています。
ロックウォールでは、約1.6kmの片側1車線の区間で、4.5tのプラスチックごみが再利用されました。この措置によって、プラスチックごみが削減されるだけでなく、道路の寿命が数年延び、将来的な補修コストも抑えられると期待されています。
ハワイの海を守る「漁網のリサイクル」
次は、美しい海に囲まれたハワイでの取り組みです。ハワイでは、陸上のごみだけでなく、海に廃棄された漁網(ゴーストネット)が深刻な問題になっています。
ハワイ・パシフィック大学海洋ごみ研究センター(CMDR)とハワイ州運輸局は、島に打ち上げられた漁網や、家庭から出るプラスチックごみを回収し、道路の素材として活用する実証実験を行なっています。
「道路からマイクロプラスチックが流れ出すんじゃない?」思いますよね。でも、11カ月にわたる調査では、再生プラスチック配合道路から流出する微粒子は、通常の道路と差がないという結果が出ました。
むしろ、道路の摩耗よりも、タイヤのカスの方が圧倒的に環境への影響が大きいこともわかってきたそうです。タイヤ由来のマイクロプラスチックは年間600万tですものね…。
舗装の耐久性の評価にはさらなる研究が必要とのことですが、初期の実証実験では、再生プラスチック配合アスファルトが、プラスチックごみの現実的な最終処分方法になり得る可能性を示唆しているそうです。
CMDRの環境化学者であるJennifer Lynch氏は、次のように話しています。
プラスチックのリサイクルはデマだ、効果がない、あるいは難しすぎると思っている人もいます。でも、この取り組みは、社会が持続可能性を選択すれば、リサイクルは機能しうることを示しています。
たばこの吸い殻が最強の補強材に?
そして最後は、世界で最も捨てられているごみのひとつ、たばこの吸い殻です。なんと、世界で年間約4.5兆本もの吸い殻が捨てられているそうですよ。世界人口で割ったら、子どもを含めても1人あたり550本以上って恐ろしい。オリンピックサイズのプール528杯分に相当するとのこと。ちょっと理解が追いつかない。
吸い殻に含まれるプラスチック成分(主にフィルター部分)や化学物質は環境に悪影響を与えますが、これに目をつけたのがスペインのグラナダ大学とイタリアのボローニャ大学の研究チームです。
特に電子たばこのフィルターには、セルロースやポリ乳酸(PLA)といった繊維が豊富に含まれています。研究者たちは、吸い殻を洗浄・裁断し、結合材として機能する特殊なワックスと混ぜてペレット状に加工します。
このペレットを高温のアスファルトに混ぜると、ワックスが溶け出して、リサイクルされたセルロース繊維やプラスチック繊維が放出されます。これが補強材として機能し、電子たばこの繊維のみで作られたペレットと比較すると、特殊なワックスを混ぜたペレットは、アスファルトの亀裂に対する強さがなんと最大6倍も向上したといいます。
さらにうれしいことに、このワックスのおかげで、アスファルトを混ぜる時の温度を下げられるため、製造時のエネルギー消費量とCO2排出量を抑えられます。
「ごみを減らせて、道路が強くなって、環境負荷も小さくなる」という一石三鳥の解決策です。スロバキアのブラチスラヴァでは、すでにこの技術を使った道路が実際に使われ始めているそうです。
研究チームは、学術誌Construction and Building Materialsに掲載された論文のなかで、今後の課題について以下のように記しています。
今後の研究では、リサイクル剤を入れた繊維のペレットを製造する工程の最適化や、リサイクル剤の添加量を増やすことによって、その性能特性をさらに向上させることに焦点を当てるべきです。
捨ててしまえば、環境と生態系、動物と人々の健康にも影響するプラスチックごみ。何十年にもわたってリサイクルシステムが確立されないこともあって、2019年には世界で3億5300万tのプラスチックごみが廃棄されました。
プラスチックごみのうち、1900万tから2300万tが水生生態系に流出しており、川や湖、海を汚染しています。
2060年までに、プラスチックの生産量と廃棄物の量は3倍になると予想されています。
リサイクルできるきれいなプラスチックごみを安定供給するシステムや、大規模な実用化に向けた課題はまだあります。でも、テキサスやハワイ、そしてヨーロッパでの成功例は、今ある技術を組み合わせれば、現在よりも少し持続可能な社会にできることを証明してくれています。あとは、やるかやらないかなんでしょうね。
Source: The Conversation, Dallas Innovates, Phys.org, Interesting Engineering, Fox News
Reference: WHO(世界保健機関), Guo et al. 2025 / Construction and Building Materials, OECD: 経済協力開発機構(1, 2), UNEP(国連環境計画)
