ガンジス川「放尿騒動」 何が起きていた? 目撃した案内人が証言 「相手国へのリスペクト忘れないで」
2025年12月末、インドを流れるガンジス川で、サンタクロースの赤い帽子をかぶった日本人グループと現地の人たちの間でトラブルが起きた。
その映像がSNSなどで流れ、日本やインドのメディアは、日本人男性が川に放尿したことが原因だったと報じるなど、大きな騒ぎになった。
日本のYouTuberの男女が撮影のため現地を訪れており、放尿したのは彼らの友人だったという。
インドの魅力を伝えるため、現地の屋台の魅力を取り上げた動画配信やコーディネーターとして活動する坪和寛久さんは、彼らを案内する中でトラブルに巻き込まれた。
突然の放尿行為に驚かされたのは他ならぬ坪和さんだったが、現地を案内していた立場として説明する責任を感じ、SNSで経緯を報告したうえで謝罪した。
「同じような問題が今後生じてほしくない」と考える坪和さんが、改めて弁護士ドットコムニュースの取材に答えた。海外を訪れる動画配信者の振る舞いが問題になることがある。失敗を教訓として、渡航先の国に対する敬意を忘れないでほしいと話す。
●現地を案内するに至った経緯
坪和さんによると、企画を検討したYouTuberグループから頼まれ、現地を案内することになった。
坪和さんは、現地で12年ほど撮影に取り組んできた。その知見を頼り、インドロケの際には日本の配信者が坪和さんにコーディネートを依頼するのだという。
舞台となったガンジス川はインドのヒンドゥー教徒にとって極めて神聖な場所とされる。
坪和さんによれば、この一帯でもサンタクロースの衣装は売られており、サンタクロースの格好でガンジス川を訪れたとしても、特に問題はないと、現地の人間に確認していた。
また、インドを訪れる配信者の中には「ガンジス川の汚さ」などに注目した動画企画が作られることもあるが、坪和さんは「インドの魅力を伝えたい」と心掛けている。
事前の打ち合わせを通じて、YouTuberグループが「インドの楽しいところを届けたい」と考えていることを確認し、協力に動いたという。今回については、坪和さんは親切心から無償で協力した。
●あのとき起きたこと
12月25日の現地では実際に何が起きたのか。坪和さんに振り返ってもらおう。
「YouTuberグループの3人はガンジス川にサンタクロースの格好をして向かいました。3人の他、グループの友人という男性が当日のロケから合流しました」
この男性と坪和さんは、この時が初対面だった。事前にヒアリングしていた通り、サンタの格好をした日本人に対して当初、友好的なムードで受け入れられていたという。
少し離れた場所で荷物の番をしていた坪和さんの耳に、急に誰かが騒ぎ出す声が聞こえてきた。
あわてて3人のもとに駆けつけると、現地の人たちが、サンタの格好をしたメンバーに詰め寄っているところだった。
このときはまだ、友人が川に放尿していたことを把握していなかった。友人が川に放尿していたのを現地の人が見つけ、咎めていたのだった。
●現地の人にも丁寧に謝罪「同じ日本人として謝ります」
「その場で放尿した友人男性が謝罪をすると、現地の方も落ち着きました。用意していた企画の撮影をすることはなく、現場から離れています」
友人男性も「2度とやらない」と口にしていたという。
坪和さんだけが現場に残り、そこにいた現地の人々に説明を試みたという。
「放尿のシーンを僕は見ていませんが、同じ日本人として謝ります。ごめんなさい。日本人としてインドをリスペクトしています。今回は行き違いがありましたが、ご理解してほしいと思います」
このように説明すると、現場ではインドの人たちも理解してくれたように見えた。
●速やかに謝罪に動いた
問題が「炎上」したのはその後だった。
サンタの格好をした日本人が詰め寄られている映像がSNSやネット上にアップされ、拡散していった。
「現場で責められている日本人がサンタの格好をしているので、どうしてもバツの悪い印象を与える映像でした」
映像に対して、「サンタクロースの格好が宗教的に問題だ」などとSNS上で指摘されることもあった。
坪和さんたちが炎上状態にあると認識したのは、12月30日か31日ごろのこと。メンバーとともに話し合い、31日の夜に謝罪の声明文を公開した。
●日本とインドでの取り上げ方に温度差を感じた
坪和さんによれば、この騒動はインドでもネットニュースとして報じられ、ネットやSNS上で話題になった。
「インドと日本では取り上げ方に温度差があるように感じました。インドでは、このような騒ぎが起きたが、外国人の受け入れを寛容にするべきという論調の印象です。そこまで問題視しているようには感じませんでした」
坪和さんは、どちらかと言えば、日本に情報が届いてから大きく炎上したと感じているという。
「非常に問題があった行動ですから、反論の余地はありません。私見ですが、日本で移民問題や外国人の振る舞いが問題だとして報じられるケースが目立ってきました。外国人が神社の鳥居にぶら下がったり、電車でのマナーに問題があったと指摘されるようなケースですね。今回は逆に、日本人が外国で問題行動に及んでしまった。そのため、日本人の振る舞いに対して大きな反応が日本で生じたものと考えています」
●リスペクトのなさ→情報収集不足→知らないことがトラブルに
「同じような問題を起こすリスクを軽減させるため、渡航先の国へのリスペクトを持ってほしい。少なくとも、事前の情報収集を忘れないでほしい」と坪和さんは繰り返す。
「ガンジス川はインドの人々にとって、いわゆる母なる川であり、沐浴して罪を洗い流したりする神聖な場所です。火葬場の機能もあり、遺体を燃やされて川に流されるのが素敵なことだと考えている人もいます。
一方で、そこで歯を磨く人もいるなど、生活の場でもあります。神聖だけど身近な存在なのです」
相手国へのリスペクトのなさが情報収集の不足につながり、知らないことがトラブルにつながりがちだ。
たとえば、女性が露出の多い服装で出歩くことや、日本から持っていったお土産に、インドでは忌避される豚肉成分が入っていることなども、知識不足によるトラブルの典型です」
●ポジティブな発信を心掛けてほしい
「インドはおもしろい国です。日本の人たちにも、インドをもっと知ってほしいし、来てほしいのですが、もし来るのであれば、最低限、渡航先の情報収集を忘れないでほしいです。
インドでは、どこでも日本人をリスペクトしてくれます。日本から来たとわかれば、笑顔で歓迎してくれると思います。
かつては、インドについて『汚なすぎる』『お腹を必ず壊す』などと煽るような動画が再生数が上がるとされ、積極的に発信されていました。今は、『意外とそうでもない』と冷静な発信に変わってきたように思います」
坪和さんがYouTuberに協力するのは、日本の旅行者に伝わるようなポジティブな動画を発信してほしいと期待するからだ。
「日本とインドは本当によい関係を築いてきたと思います。こんなトラブルはお互いにとって損ですから、より理解を深めていきましょう」
