【真壁昭夫】文在寅のもとで韓国経済が「日本化」してるってどういうことだ? ハコモノ依存を強めている…

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政府支出でカバーしたけれど…

昨年、韓国経済の減速が鮮明化した。

10〜12月期のGDP成長率は政府の支出によって大きくかさ上げされたものの、成長率の低下を隠すことはできなかった。

当面、韓国経済の大幅な回復を見込むことは難しいだろう。

その中で、財政支出の重要性は高まる可能性がある。

文在寅(ムン・ジェイン)大統領が左派団体の支持を取り込むためにも、財政支出によって景気を持ち上げる必要はあるはずだ。

文在寅大統領〔PHOTO〕Gettyimages

一方、朝鮮半島における、北朝鮮問題をめぐる緊迫感が高まることは重要な地政学的リスクとして軽視できない。

そうした懸念などを背景に、韓国株を売却し今後のリスク回避を優先する海外の大手投資家もいる。

今後、そうした動きが鮮明化すると、韓国の株式市場が不安定化することも懸念される。

それが、韓国経済にとって大きなマイナスの悪循環につながるかもしれない。

政府支出増大でも隠し切れない韓国経済の減速

2019年の韓国経済は、事実上、政府の支出と建設に支えられた。

政府が景気の下支えのために財政支出を増やし、それがインフラや“ハコモノ(庁舎など)”の建設・や土木工事を増やした。

政府が支出を増やせば、その分、GDPは押し上げられる。この経済運営を見て思い出されるのが、1990年代のわが国の景気対策だ。

当時、わが国は、バブル崩壊後の景気の低迷にあえいでいた。

1997年度まで政府は公共事業関係費を積み増し、“ハコモノ”などの建設を進めることで雇用を保護し、景気を支えようとした。

〔PHOTO〕iStock

一方、わが国は不良債権処理や、一時的な痛みを伴う構造改革に背を向けた。

この結果、デフレ環境が鮮明化し、経済は“失われた30年”などと呼ばれる停滞に陥った。

文在寅大統領の経済政策には、バブル崩壊後のわが国の発想によく似た部分があるように見える。

今後も、文政権の経済運営は財政政策に偏重したものとなるだろう。

わが国の経験を踏まえると、インフラ需要が一巡した経済において財政支出を増やし、構造物の建築を増やしたとしても、持続的な経済の成長は難しい。

現在、多くの経済の専門家が、世界経済が1990年代以降のわが国の経験したような長期の停滞に向かっているとの懸念を強めている。

この状況は“ジャパナイゼーション”と呼ばれている。

文氏の経済運営の方向性を考えると、韓国経済の停滞懸念は高まりやすく、同国はジャパナイゼーションに向かう有力候補といえるだろう。

文政権と朝鮮半島情勢のリスク

韓国経済の安定は、朝鮮半島情勢に無視できない影響を与える。

韓国が自国の国力を高めるためには、経済を落ち着かせ、社会心理を前向きなものに変えていかなければならない。

しかし、左派の文政権下、社会心理は混乱し、韓国が自力で景気回復を目指すことも難しい。

更に、左派政権が支持基盤の拡大を重視し、米国との距離感が広がりつつあることも深刻だ。

その上、中国では新型コロナウイルスによる肺炎が発生した。

これは、韓国のみならず、世界経済にとって無視できないリスクだ。

財政面に加え、文大統領は景気の安定を目指して中国の意向を伺い、関係強化を目指すだろう。

また、4月の総選挙を乗り切るために、文大統領が財政支出を通した北朝鮮への支援を重視する可能性も排除できない。

その状況は北朝鮮にとって非常に都合がよいはずだ。

足許、北朝鮮は米国に対して核実験の再開などを仄めかし、更には対外強硬派とみられる軍出身の人物を外相に据えた。

韓国において左派の政権が続く間、北朝鮮は強硬姿勢を強め、制裁の緩和・解除を通した国内経済の窮状打開を目指すだろう。

文政権がその展開を食い止めるとは思いづらい。

今後の展開を考えた時、韓国の半導体輸出が底を打ち、景気先行き懸念が幾分か解消する可能性はある。

しかし、それは韓国の実力によるものというよりも、外部環境の変化によるものだ。

文大統領の経済政策運営が韓国の国力向上につながるとは考えづらい。

左派政権下、韓国の社会心理はさらに悪化し、朝鮮半島情勢の不安定感が高まる可能性は軽視できない。