“孤独なバカ”をリーダーに変えるフォロワーの力とは
■孤独な男が、リーダーに仕立てられるとき
ときに、今まで存在しなかったことに挑戦したり、思い切った行動を起こそうとしたりすると、人は冷ややかな目で眺めてバカにすらするかもしれない。ところが、その人物を追随する人が現れて思想が広がることで、今までマイナーだった存在が一気に先頭に立つ人間に変わっていくことがある。
デレク・シヴァース氏は、TEDのプレゼンでいかにしてリーダーが生まれ、社会が動いていくかをつぶさに解説してくれている。使われた映像は、心地よさげな広場で裸でおどけて踊るひとりの男性に、だんだんと人が追随していくふざけたもの。しかし実は、これこそが端的にムーブメントの巻き起こり方を表しているという。
映像はこんな具合だ。広い公園か原っぱで、大勢の人たちが気ままにくつろいでいる。
1.<ひとりの男性が裸でデタラメに踊り出し、周りは笑って見ている>
2.<ひとりのフォロワー(追随者)が同調して、一緒に踊り始める>
3.<そのフォロワーが、最初の裸の男性と同じように踊り周りに見せる>
4.<さらに2人目のフォロワーが加わることで、次々とほかの人も踊り出す。>
5.<このとき、最初に踊り出した裸の男は一緒に踊る人を対等に扱う。そして、フォロワーが次々と友達に声をかけていくことで、みなが一緒に踊り出す>
6.<たったひとりで踊っていた裸の男性を中心に、大勢の人間が加わり取り巻いていく。加わらない方がむしろバカにされる状態になりそうな勢いになる>
裸になって気持ちよさそうにふざけるひとりの男性に、ひとりふたりと追随者が出て、最後は一大ムーブメントかのように、多くの人を巻き込む動きが起こっていく……。こんな日常の一コマを、シヴァース氏は社会運動の起こりやリーダーシップが効力を発揮する基本的な流れと同じだとしている。では、ここに見られるおどけた風景を、社会的ムーブメントとしてとらえると、どうなるかを見ていこう。
■リーダーが生まれる瞬間
まずは、先ほどの映像を、汎用性をもたせた一般論として分解してみよう。
1.最初にリーダーが勇気を持って立ち上がるが、周りからは嘲笑される。でも、彼の行動に続くのはすごく簡単そうだ。(裸で踊る男性をまわりは嘲笑する)
2.最初に後を追うフォロワーが動き出す。彼はみんなに”どう従えばいいか”を示す重要な役割を担っていく。(一緒に踊り出す男がいる)
3.最初のフォロワーは、実はリーダーシップの一形態として、みんなを導き、ひとりで裸で踊り始めた時点での”バカ”を”リーダー”へと変えていく。(フォロワーがいることで、くだらない行動をしているように見えた男がリーダーとなる)
4.複数のフォロワーが現れる。今やひとりや2人きりのバカでもなく、3人という集団になったことで注目が集まる。(複数の人が動くことで、運動が公のものとなっていく。)
5.他のフォロワーが一緒に踊り出す。リーダーは、複数のフォロワーを対等に扱う。最初のフォロワーたちは、友人たちに声をかけていく。(フォロワーがリーダーの一端を担い、ムーブメントを広げている)
6.だんだん人が加わることで勢いがつき、臨界点に達する。(みなが運動に加わる)
これが、ひとつの大きな社会的な運動になった瞬間であり、運動が巻き起こっていく流れである。ここで大切なのは、リーダーばかりを過大評価しすぎずに、フォロワーの存在の重要さに目を向けることだろう。
■フォロワーシップが生み出すリーダーシップ
以前にも、学者エヴェリット・ロジャーズ氏が作った「普及と時間の関係」を表す分布図から、新製品の普及がどんな風に起こるかをまとめた表をご紹介させていただいた。商品(ここでは運動)が普及していく段階で、行動を起こす時間的なズレから消費者(フォロワー)を5つに分類している(「優れたリーダーが人の行動を促す「なぜか」の理念(http://president.jp/articles/-/12699)」の回参照)。
この最初のフォロワーたち(15%ほど)がイノベーター<革新者 2.5%>とアーリー・アダプター<初期採用者 13.5%>であり、リーダーの一端を担う人間である。ただし、次の段階のアーリー・マジョリティ<初期多数派 34%>までのギャップが大きい。
爆発的に人に広がっていくためには、このアーリー・アダプターからマジョリティのギャップを埋める臨界点、つまりは、市場浸透率の15%から18%に達する必要がある。この層に届くことで、「人が持っている」「よかったらしい」(だから私も加わる)と残りの人たちにも広がりやすくなり、市場ではヒットにつながるだろう。
同様に、多くの人が加わるほどに自分に振ってかかるリスクは小さくなるために、決めかねていた人たちも、今や加わらない理由はなくなる。もう目立つことも、笑われることもない。さらには、急げばコア集団に入れそうだと駆け出すかもしれない。こうして運動は大きなムーブメントに変わっていくわけだ。
だからこそ、リーダーは自分の直感に従って決める初期の行動を起こしてくれるイノベーターたちを惹きつけて、「そうしたい」と思ってもらい、行動を促すことが必要なのだ。そこで大切なのは、最初のフォロワーであるイノベーターたちを平等に扱うことである。
市場やムーブメントでのリーダーシップをとったのは、最初に踊り出した男性ではなく、それに追随し、その方法をみんなに示した最初のフォロワーだ。新たなフォロワーたちはリーダーではなくフォロワーを真似るだろう。
リーダーはフォロワーがあってこそつくりあげられるものであり、リーダーひとりではリーダーたりえない。スゴイことをしている”孤独なバカ”を見つけたら、立ち上がって参加する最初の人間となることも、ものごとを自分で動かすためには必要な勇気なのだ。
[脚注・参考資料]
TED Derek Sivers, How to start a movement, Filmed Feb 2010 TED
https://www.ted.com/talks/derek_sivers_how_to_start_a_movement
(上野陽子=文)
