〈元トランプ大統領副補佐官が語る〉イラン戦争から日本が学ぶべき“2つの教訓” 「台湾軍が中国軍の大規模な上陸を阻止できれば…」
「戦争から得られる教訓に目を背けるのは賢明ではない」と語る、第1次トランプ政権の国家安全保障担当の大統領副補佐官を務めたマット・ポッティンジャー氏。イラン戦争から、日本が学べる点をポッティンジャー氏が考察した。(近藤奈香訳)
【画像】第1次トランプ政権の国家安全保障担当大統領副補佐官のポッティンジャー氏
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イラン戦争から学ぶ教訓
まずは、この紛争からイランが示している教訓に目を向けましょう。
教訓1――人類が航空機を戦争に用いるようになって以来百余年、航空戦力だけで政権交代を実現できた例はほとんどありません。
政権を倒すには、通常、数十万規模の兵士を伴う地上侵攻が必要になります。
今回のイラン戦争も、いまのところ例外ではありません。アメリカのドナルド・トランプ大統領とイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、戦争によってイラン政権を揺るがそうとしたものの、大規模な地上部隊を危険にさらすことは避けました。

アメリカとイスラエルによる空爆を受けて、自国の国旗を振るイラン国民。手に持っているのはイラン最高指導者のモジタバ師の肖像 ©AFP=時事
その結果、イラン政権は、世界最強の空軍(アメリカ)と中東最強の空軍(イスラエル)を相手にしながらも、権力の座に踏みとどまっています。
何週間にもわたり、昼夜を問わず爆撃を受け続け、最高指導層が次々に命を落とし、新たに指導者が据えられてはまた失われる――それでもなお、体制は崩れていません。
この事実は、台湾の人々にとって大きな励ましとなるはずです。
空爆だけでは占領は不可能
仮に台湾軍が中国軍の大規模な上陸を阻止できれば――100キロを超える海という「天然の防壁」に守られている台湾にとって、十分な訓練と適切な装備があれば、それは決して不可能ではありません――たとえ指導部の一部が失われる事態に至ったとしても、民主的な政府は存続しうると考えられます。
台湾政府はこのような事態を想定した訓練を公に行い、大規模爆撃の衝撃に備えるとともに、戦時下での権力継承や政府機能の維持についても実践的に備えるべきでしょう。
政府と国民がこうした点に自信を示せば示すほど、北京に対する抑止力は高まります。自国民から広く嫌われているテヘランの苛烈な政権ですら、ミサイルや爆撃の「衝撃と畏怖」に耐えうるのであれば、民主的に選ばれた正統性ある台湾政府もまた、空爆を乗り越えられるはずです。
戦争において最も大きな力を持つのは、「戦い抜く意思」、すなわち抵抗する決意です。それは超大国に対してさえ有効なのです。
教訓2――安価で大量に配備できる対艦兵器は、世界最高の海軍であっても数週間にわたり足止めすることができます。
イランは、自国の海軍の艦船がアメリカに撃沈された後でさえ、ホルムズ海峡を数週間にわたり封鎖することに成功しました。機雷、ドローン、ミサイル、小型高速艇を組み合わせ、商船に被害を与え、アメリカ海軍のペルシャ湾への接近を阻んだのです。台湾と日本は、その手法をよく研究し、自らの状況に応じて用いるべきでしょう。
ただし、この教訓には二つの側面があります。
一方では、日本と台湾が中国の艦船を自国の沿岸から遠ざける手段を持ちうるという自信につながります。
他方で、中国もまた、戦時にはエネルギーや食料、重要物資を運ぶ商船の航行を容易に妨げられるという現実を示しています。
ここから導かれる結論は明快で、日本と台湾は重要物資やエネルギーの備蓄を強化しなければならないということです。日本は、台湾が原子力発電所を停止した判断の教訓を踏まえ、石油・ガス・石炭の十分な備蓄とともに、原子力を含む自国由来の電力源を確保する必要があります。
北京はすでに、将来の戦争を見据え、長年にわたり多大な費用をかけて備蓄を進めてきました。
日本と台湾は、戦時においても重要な物資やエネルギーを輸送できるよう、国家主導の海運体制(保険も含めて)を整える必要があります。ホルムズ海峡の危機が示したように、民間船主はその多くが紛争海域を航行するリスクを取りたがらないからです。
※マット・ポッティンジャー氏の連載記事全文(3500字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています。全文では、アメリカやイスラエル、ウクライナから学ぶことのできる教訓についても語られています。
(マット・ポッティンジャー/文藝春秋 2026年5月号)
