(※写真はイメージです/PIXTA)

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富裕層の大半は、自身の挑戦によって富を築いています。そして、一度の成功に飽き足らず、また次のチャレンジをする起業家思考を持つ人が多いのも特徴です。アーリーリタイアをして悠々自適な生活を送ることをせず、あえて茨の道を進むのはどうしてなのでしょうか。本記事では、富裕層専門税理士の森田貴子氏による著書『富裕層の領収書1000万枚見てきた税理士が教える 億万長者になるお金の使い方』(SBクリエイティブ)から、富裕層に共通する挑戦の姿勢に基づく「3つの教訓」を紹介します。

好奇心やチャレンジ精神が旺盛な富裕層は「生涯現役」

筆者がこれまで見てきた富裕層は、半ば悠々自適の生活を送っていても、決してビジネスから引退しているわけではありません。

むしろ、富裕層は、早期リタイアをほとんどしていません。

常に変化し続けている世界に目を向け、いつでも新事業を始められるマインドを持っています。いくつになってもチャレンジ精神は健在です。

すでに一生かかっても使いきれないほどの財を築きながら、なお仕事を続けているのですから、「よほどビジネスが好きなのだろう」と思うかもしれません。

しかし、実際にはそれだけではありません。豊富な資産を持ちながらも借入を抱え、次々と新しい挑戦を続けているのも事実です。

つまり「何億円あっても安心はない」「まだ足りない」と感じているからこそ、動き続けるのです。これは単に「仕事が好き」という次元ではなく、仕事と人生が完全に溶け合っているような生き方だと言えるでしょう。

そして、彼らはそのときに手がけている事業について、どうすればうまくいくか、どう広げていけるかを一日中、そして一生考え続けられる人なのです。

失われることのない好奇心。さらには「儲かりそうだから」以上に「自分がワクワクするから」「世の中の人に使ってもらいたいから」「社会のために」という情熱や使命感が、圧倒的な成功を導いています。これらもまた、持続している富裕層に共通する起業家思考と言ってよいでしょう。

「行動の原点は、情熱や使命、そして好奇心なのです」

多くの富裕層が共通して口にするのは、こんな言葉です。一度摑んだ成功に執着するのではなく、「次に何をやるか」を軽やかに考えている人が大半を占めます。好奇心、チャレンジ精神、誰かの役に立ちたいという気持ち。そこには、単なるお金儲けでは測れないエネルギーの流れがあります。富裕層を見ていると、つくづく「生涯現役だな」と思わされます。

とにかく世の中への興味関心が尽きず、情報感度が高い。新しいもの好きでもある。そして何かに興味を抱くたび、新しいものに触れるたびに、ビジネスのアイデアが浮かんでしまう。浮かんでしまった以上は、動かずにはいられないのです。

間違いなく自分の可能性を信じ、前向きなエネルギーにあふれています。話を聞いているだけで元気をもらえますし、体験が豊富なので会話も面白い。遊ぶようにチャレンジを繰り返している人たちが富裕層であると考えれば、アーリーリタイアという選択肢がないのも納得できます。むしろ、これまで成功させてきた事業をあっさり他人に譲り、新たな挑戦に踏み出す──そんな姿も、決して珍しくありません。

社会への使命感「世のため人のため」の精神

究極的に言えば、富裕層は「社会をどう良くするか」を常に考えています。

彼らと話していて感じるのは、「自分さえ富を築ければいい、それで人生はアガリ」という発想がないことです。むしろ「これまで築いたものを社会に還元したい」という強い想いが根底にあるように見受けられます。そのため、自ら新しいビジネスを始めるだけでなく、将来有望な若者やスタートアップにも積極的に投資します。こうした行動を支えているのは、利己ではなく「世のため人のため」という価値観です。

結局のところ、「アーリーリタイアしたい」という発想がないこと自体、富裕層富裕層であり続ける所以です。彼らは広い視野で自分自身と社会の両方を見据え、好奇心とチャレンジ精神、そして社会への使命感に突き動かされて行動し続けます。

すごろくのように「自分が上がったらおしまい」という小さな発想では、富裕層であり続けることはできません。そしてこの姿勢は、私たちにとっても学ぶべき点があります。長く働き続けることこそが、最も確実に収入を得る方法なのです。

■教訓1

「好奇心や使命感を原点に動き続ける姿勢」を持ち続けること。

それが生涯現役を可能にし、長く働き続けることで収入と可能性を広げる確実な道となります。

圧倒的な努力と行動量でやり抜いた経験がある

どんなに成功している富裕層にも、「圧倒的にがんばった時期」があります。

誰かに任せていたわけではなく、自分で汗をかき、自分の手で選択し続けてきた日々が、彼らの今を支えているのです。

「20代の記憶は、膨大な努力を要するビジネススクールでのMBA取得のとき以外は、とにかく働いていたことだけ」という話を聞いたこともあります。また、「何よりも仕事を優先させて長時間働くのは当たり前だった」「プライベートの予定はしょっちゅうキャンセルしていた」といった話は、多くの富裕層に共通したエピソードです。

心理学者でペンシルベニア大学教授のアンジェラ・ダックワース氏は、長期的な成功を決定づけるのは才能ではなく「やり抜く力(GRIT)」だと指摘しています。やり抜く力が高い人ほど成功の確率は高く、しかも才能とやり抜く力には明確な相関関係はないというのです。

つまり、誰もがこの力を意識的に鍛えれば、富裕層と同じように成果を積み上げることができるのです。

富裕層で「何かをやり抜く」という経験をしたことがない人はいないでしょう。その努力は、資金や人脈といった資産だけでなく、決断力、耐性、集中力といった見えない自分資産を、確実に育てていたのです。思い通りにならないことが多い中、想定外の出来事にも耐えられるストレス耐性、そしてそれらを成功へと結びつける行動力──これこそが彼らを支える原動力です。

投資で資産を増やしている人も多くいますが、その原資も最初からあったわけではありません。ゼロから積み上げた努力が成功を生み、その成果として資金が生まれたのです。

■教訓2

才能ではなく「やり抜く力」が成功を決定づけます。圧倒的な努力と行動を積み重ねることで、見えない自分資産が育ち、将来の大きな成果へとつながっていきます。そして、簡単にできることでも実際に行動に移す人とそうでない人とでは、人生に大きな違いが生まれるのです。

失敗を恐れず、挑戦という名の「打席」に立ち続ける

富裕層というと、生まれたときから恵まれた道を歩んできたと思われがちですが、実際にはそうではありません。大きな失敗や挫折を経験していない人はほとんどいません。

ファーストリテイリング創業者・柳井正氏は、著書『一勝九敗』(新潮文庫)で、何度も失敗し、それでも挑戦をやめなかった人だけが、意味ある成功を摑めると語っています。

彼らは結果が思い通りにならなくても、立ち止まることは決してなく、「失敗」を挑戦のプロセスの一部として受け止めているのです。

そしてその経験を糧に、何度でも打席に立ち続けます。その結果として、

状況に合わせて戦略を切り替える柔軟な発想と、次の挑戦へ踏み出す行動習慣が身についているのです。

ある経営陣の一人として長年関わっていたお客様が、自ら命を絶つという重い出来事がありました。筆者にとって初めての経験で、しばらくは胸の奥が締めつけられる日々が続きました。その方の上司であり、会社の代表を務め、経営の現場で厳しい状況を数多く経験してきた方が、かつて筆者にこう語ってくれたことがあります。

「森田さん、組織というのは、これが完璧、正解という状態はないんだよ」

起業間もない筆者は、その言葉の意味を十分に理解できませんでした。

しかし、その後、多くの組織に関わり、経営の浮き沈みを目の当たりにする中で、ようやく腹落ちするようになったのです。

組織は外部環境や人の変化によって形を変え、思わぬ出来事も起こります。だからこそ、経営者には、状況がどう変わっても対応できる柔軟さと覚悟が求められます。そのため、

富裕層はプランBを持つことに長けています。

打席に立ち続ければ、必然的に失敗や想定外を経験します。その過程でさまざまな可能性を想定する思考習慣が身につき、耐性や柔軟性、対応力が上がっていくのです。

ある経営者は、自らの経験をこう語ってくれました。

「やる前にあれこれ悩むよりも、その時間とエネルギーがあるなら、思い切ってドアを開けて踏み込み、行動しながら考えた方が充実します。そこで経験する失敗や悲しい出来事、うまくいかないことは、将来もっと大きなドアを開け、さらに大きな世界へ踏み込むための足場や階段になります」

富裕層は例外なく、成功の数よりも失敗から立ち上がった数の方が多い人たちです。彼らは失敗の数ではなく、そこから得たものを糧にし、それを資産として積み重ねています。

ある経営者は、資金難で諦めかけていたとき、偶然入った本屋で再会した投資家に支援をお願いし、状況を一変させました。これは非常時に思いついたアイデアではなく、日々ストック支出をして築いてきた「見えない資産」の一部が形になった瞬間です。

見えない資産とは、日々の学びや経験、人との信頼関係、思考の幅や判断力といった、数値化できない蓄積のことです。これらはすぐに成果を生まなくても、ある日突然、大きな場面で力を発揮します。挑戦を続け、経験を積み重ねること自体が、この「見えない資産」を育て、将来の自分を守る大きな武器になるのです。

知識・情報・教養への投資は、いつ役に立つかはわからなくても、確実に選択肢と対応力を広げます。

新しいことに挑戦するときに「これは何に役立つのか」と計算する必要はありません。むしろそう考えない方が、挑戦の幅は広がります。「やってみたいな」と思ったら、その体験には支出を惜しまないことです。そうした積み重ねこそが、いつでも大リーグの打席に立てる準備になるのです。

■教訓3

挑戦することで得られるのは、「耐性」や「柔軟性」。失敗や想定外の出来事そのものが人を強くします。失敗を恐れず、何度でも打席に立ち続けること。それが「見えない資産」を育て、どんなアクシデントにも対応できる力を生み出すのです。だからこそ、数回の失敗で落ち込む必要はありません。早合点して諦めないでください。

森田 貴子

株式会社ユナイテッド・パートナーズ会計事務所

パートナー・税理士