安倍政権との蜜月にも終止符が…(写真は創価学会総本部の広宣流布大誓堂。時事通信フォト)

写真拡大

 河井克行・前法相と妻で参院議員の案里氏が選挙違反容疑で東京地検特捜部に逮捕されると、斉藤鉄夫・公明党幹事長は「政権にとって大きな打撃。総理の任命責任はある」と強い言葉で安倍晋三首相の責任に言及した。ベテラン学会員が語る。

【写真】濃い水色のネクタイをし、眼鏡を掛けもう一つの眼鏡をテーブルに置く池田大作・創価学会名誉会長

「昨年の参院選で公明党広島県本部や地元の学会組織は案里ではなく、落選した自民党長老の溝手顕正氏を重点的に応援していた。しかし、選挙終盤、創価学会中央から、案里を応援するように指示が出された。

 広島の学会や公明党の地方議員には案里の評判は悪かったから不満は強かったが、渋々案里に票を投じた人が多い。それだけに今回の逮捕で裏切られたと怒りが増している」

 新型コロナ経済対策でも、公明党が安倍首相の方針をひっくり返す場面が目立っている。山口那津男・代表が安倍首相と直談判して国民一律10万円給付を飲ませたのを皮切りに、中小企業や自営業者への持続化給付金をめぐる経産省の委託業者の“中抜き”疑惑が発覚すると、公明党の赤羽一嘉・国土交通相は国民に旅行クーポンなどを配布する観光振興(Go Toキャンペーン)で、官邸が決めた発注方法を見直すといち早く表明した。

 公明党を動かしたのが“下からの突き上げ”だ。元公明党代議士の二見伸明・元運輸相が語る。

「創価学会の活動を支える熱心な学会員には商店主や自営業者などが多く、今回のコロナ自粛で経営や生活を直撃されている層に重なる。特別給付金や持続化給付金がなかなか届かない政府の対応に非常に不満が強い。そのため学会員たちが、特別給付金は国民一律でなければ困ると学会の上層部を突き上げたわけです。

 すると山口代表が安倍総理に迫って10万円支給が実現した。末端の学会員たちは自分たちで政治を動かせるとわかったんです」

 公称827万世帯の創価学会員たちが「安倍離れ」を起こし、“安倍べったり”だった公明党執行部や創価学会上層部は安倍政権に強い姿勢を取らざるを得なくなった。

 安倍首相側は創価学会をコントロールする“頼みの綱”を失っている。官邸でこれまで創価学会との交渉を一手に担ってきたのが菅義偉・官房長官。安倍首相には学会と個人的なパイプがないのに対し、「菅さんは学会首脳部の信頼が厚く、公明党を通さずに直接政治向きの交渉ができる」(菅側近議員)といわれる。

 ところが、首相はコロナ対策の政策決定から菅氏を実質的に外している。これによって安倍政権と創価学会は意思疎通ができなくなった。そのことが前述の10万円給付金問題で露呈した。政治ジャーナリストの柿崎明二氏は、創価学会側は最初に菅氏を頼ろうとしたと指摘する。

「学会幹部が菅氏に、減収世帯への30万円給付を一律10万円給付にするよう修正を求めた。それに対して菅氏が自分が経済対策を主導していないことを説明すると、学会幹部は菅ルートでの決着を断念し、公明党の山口代表を突き上げた。そこで山口氏が安倍首相と直談判し、連立離脱までちらつかせて一律10万円給付に持ち込んだ」

“私に言われても何もできない”と菅氏は調整役を投げ出したのだ。すると創価学会と公明党は首相に牙をむいて“抜き身”で給付金のバラマキを迫るようになった。

「自民党はもう公明党の協力がなければ選挙を戦えない。私は連立解消になれば自民は100議席は減ると思う。安倍首相に近いグループは“9月ごろに内閣・党改造人事をやって、菅官房長官と二階俊博・幹事長を切って総選挙”という構想を話していた。

 でも“菅外し”は“公明・学会外し”も同然で、学会とパイプがある2人を切って選挙では自民党がもたない。もともと公明党は『自公連立を維持していく』気はありますが、『安倍首相個人を守る』わけではない。公明・学会の支持を失えば、安倍政権にとって致命傷です」(政治ジャーナリスト・鈴木哲夫氏)

※週刊ポスト2020年7月10・17日号