追い越し車線を走り続ける行為は2つの違反につながる

 2019年、自動車業界の流行語大賞があったとすれば「あおり運転」が選ばれただろう。法改正による対策など、2020年になってもあおり運転は自動車社会における重要課題となっている。それにしても、これだけあおり運転がメディアなどで騒がれていても、いまだにのんびりマイペースで追い越し車線を走り続ける人がいるという。

 あおり運転自体、高速道路だけで起きているわけではないが、それでもあえてリスクを取りにいく必要はないだろう。なぜ右側の追い越し車線を走り続けてしまうドライバーが生まれてしまうのだろうか。その理由として多く言われるのは「合流してくるクルマが少ないから走りやすい」というもの。たしかに複数車線のある高速道路では(一部の都市高速を除いて)、インターチェンジやパーキングエリアからの流入は左側からとなっている。追い越し車線を走っていれば合流を気にする必要はなくなる。

 また、片側3車線の高速道路で中央を走っていると、右からも左からも車線変更してくるクルマがあって、左右に気を配る必要がある。その点でも右側の追い越し車線を走っていれば、左側にだけ気をつけていればよいので運転に自信がないドライバーほどメリットに感じる部分もあるのだという。とはいえ、車線変更してくるクルマに気を遣うのであれば、後方から迫ってくるクルマにも気が付くべきだとは思うが……。

 なにしろ、追い越し車線をずっと走っているのは道路交通法でいえば、2つの違反につながる可能性がある。ひとつは「通行帯違反」。追い越し車線はその名のとおり「追い越し」のために使うべき通行帯であって追い越しを済ませたらすみやかに走行車線に戻る必要がある。

走行車線からの追い抜きもあり!

 もうひとつが、「追い付かれた車両の義務違反」で、こちらは法定速度未満で走行しているときに後続車両に追い付かれたら進路を譲らなければならない(その際に加速することも違反)というもの。法定速度未満という条件が付くので、スピード違反状態で追い付かれたとしても、この違反には問われないだろうが、猛スピードで迫ってくるクルマを認識したら、安全に車線を変えて道を譲ってしまうのが得策だ。

 そもそも走行車線を走っていれば、後方から猛スピードで迫ってくるクルマに遭遇することは少ない。速いクルマは追い越し車線を走るからだ。その意味では、後方に気を配る余裕があまりないというのであれば、左側の走行車線を走っているほうが安心であるし、走りやすいはずだ。

 一方、追いついた側の視点でいえば右側の追い越し車線にクルマが並んでいる状態というのは、一台一台が車線を変更するのを待っていられないという気分にもなり、そうしたイライラがあおり運転につながってしまう。もし、追い越し車線を法定速度以下で走行するクルマが連なっているようであれば、走行車線を法定速度で走って追い抜いてしまえばいい。

 左側から追い越すことはルール違反だ、と思うかもしれないが、道交法でいう追い越しは車線変更をして、ふたたび走行車線に戻るところまでがワンセットとなる行為だ。本当に追い越し車線にクルマがズラっと並んで、法定速度以下で走行しているとすれば、それは渋滞に近い状態といえる。

 そして、法定速度を守っている範囲において走行車線は追い越し車線よりも速度を落とさねばならないというルールはない。たまたま走行車線のほうが流れていて“追い抜いて”しまうぶんには問題にならないのだ。あえて、あおり運転と疑われるようなリスクを冒す必要はなく、流れているほうの走行車線を淡々と走っていればいいだけの話だ。

 ちなみに、前述した「追い付かれた車両の義務」が課されるのは法定速度未満で走行している車両。法定速度を超えているクルマに追いついた場合は、「道を譲るのは道交法で決まっているルールだ」とは言えないことは覚えておこう。