ベスト10入り!(公式HPより)

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大規模上映でもないのに……

 5月22日から24日の「国内映画ランキング」(興行通信社調べ)が25日に発表され、7位に初登場の「名無し」(城定秀夫監督)がランクインした。同作は俳優の佐藤二朗(57)が、初めて漫画の原作を手がけたサイコバイオレンス作品を、佐藤の主演・脚本で映画化したもの。

【写真を見る】衝撃の殺戮シーンに、82分の上映時間…怪作「名無し」を支えた俳優たち

 ある昼下がり、若い客でにぎわうファミレスで無差別大量殺人事件が発生する。被害者は皆、鋭利な刃物のようなもので切りつけられていたが、犯人と思われる坊主頭の中年の男は凶器を所持していない。しかし、彼に触られた人々は次々と血を吹き出し、その場に倒れるという不可解な状況が生まれる。防犯カメラに映ったその異様な光景に、警察は困惑しながらも捜査を進め、徐々に男の素性やその過去が明らかになっていく――。

ベスト10入り!(公式HPより)

 キャスト陣は、主人公である連続殺人犯・山田太郎役を佐藤が演じ、身寄りも名前もなかった少年期の「山田」の名付け親となる巡査・照夫役をSUPER EIGHTの丸山隆平(42)。山田と同じ児童養護施設で育ち、共に暮らしていた山田花子役をMEGUMI(44)、そして山田の犯行を止めるべく奔走する刑事・国枝役を佐々木蔵之介(58)が演じている。

 関係者が注目するのは、今作が小規模公開でありながら、しっかり集客していることだという。

「今回のランキングでトップ10入りした作品は、300館以上で公開される大規模作品が大半。108館での公開にとどまった『名無し』のトップ10入りは驚きです。興行収入は8000万円ほどながら、今後、どこまで数字を伸ばすかが注目されます。作品は過激な内容なので、12歳未満は親または保護者の助言・指導があれば鑑賞可能なPG12指定。それでも、自分が鑑賞した平日の夕方の都心の劇場では、7、8人の高校生の姿もあり、上映後はあれこれ感想を言い合っていました。82分という短い上映時間もヒットの要因では」(映画ライター)

 佐藤が演じた太郎は、MEGUMI演じる花子とともに、遺棄児として児童養護施設で育つ。しかし一緒に暮らすうちに、花子は太郎の手が持つ能力に気づいてしまう。大人になった太郎と花子は同棲。子宝にも恵まれ、間もなく花子が出産を迎えようとしていたのだが、そこから2人だけでなく、太郎の出没先にたまたま居合わせただけの、罪なき人々の悲劇が始まることになる。

凄みを増す佐藤の演技

 幼少期から花子以外の人と関わらず、ろくに言葉を発することもない生活を送りながら、ようやく手に入れたささやかな幸せ――それを失う反動は、壮絶だ。

「自分が持つ“神の手”の能力を悪用し、次々と無差別殺人事件を起こすのです。顔色を変えることもなく、まるで単純作業を繰り返すように人を殺めていく。逃走中もろうそくの炎をぼんやり見つめながら、まったく感情を露呈しない。警察はなかなかその行動を読めず、捜査が難航します」(映画業界関係者)

 ところが、かつて太郎が起こしたある事件がきっかけで捜査が進展し、意外な人間関係も明らかになる。

「そして迎えたラストシーンは意味深で、含みを持たせていました。犯行を重ねる太郎は、かなり中途半端な髪形をしていますが、その髪形も佐藤さんのアイデアだったとか。いずれにせよ、佐藤さんはまた、ハマり役に出会うことになりました」(同)

 これまで、数々の映像作品で活躍していた佐藤。ヒットメーカーである福田雄一監督(57)作品の「銀魂」シリーズ、「今日から俺は!! 劇場版」(20年)、「新解釈・三國志」(同前)、「アンダーニンジャ」(25年)ではコミカルなキャラクターを演じることが多く、「明るくておもしろいオジサン」というパブリックイメージを持たれていたはず。

 しかし、昨年公開の映画「爆弾」でその評価は一変する。

「佐藤さんが演じたのは、微罪で逮捕されたうだつの上がらない中年男で、自称・スズキタゴサク役。しかし、実はその正体は連続爆弾魔。取調室では、心理戦や絶妙な駆け引きで、取り調べにあたった刑事たちを翻弄し、捜査は難航します。ただ、『名無し』で演じた役と違い、冗舌で感情の起伏も激しい役でした」(同前)

 佐藤は同作の怪演により、「第50回報知映画賞」の助演男優賞、「第68回ブルーリボン賞」の助演男優賞など、ほぼ国内の映画賞を総なめにした。

「佐藤さん自身、2本目の監督作品となった『はるヲうるひと』(21年)で演じたのは、架空の島にある置屋の粗暴なオーナー役。娼婦たちに過酷な生活を強いるだけではなく、時には自分の妹にも行為を強要するなど、とんでもない役柄でした。しかし、コロナ禍の上映だったこともあり、あまり話題にならず、集客に苦戦しました。ですが、この作品を見ている人は、その後の『爆弾』、『名無し』とバージョンアップした佐藤さんのダークな役の変化に感嘆させられるはずです」(映画担当記者)

あの名門企業が…

 昨年10月公開の「爆弾」は、興収31億円超えのヒットを記録した。一方、同12月に公開された福田監督の最新作で、気心の知れたムロツヨシ(50)とダブル主演の「新解釈・幕末伝」は、ヒットの基準を超える興収10億円は上回ったものの、11億円にとどまった。

 そして現在、フジテレビ系で橋本愛(30)とダブル主演のドラマ「夫婦別姓刑事」が放送中だが……当たり作とはならなそう。

「特に福田組は、気心が知れた俳優たちとアドリブやり放題でやっているので、ガチで演技しているようには見えません。『夫婦別姓刑事』もかなり肩の力を抜いて演技しているような印象です。それだけに、劇場で『名無し』との“本気度”の違いを見比べてほしいものです。昨年度の助演賞に続き、この作品では各賞の主演賞も期待されます」(同)

 そして、「名無し」の配給元は、2月のミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケートペアで史上初の金メダルを獲得し引退した「りくりゅうペア」こと、三浦璃来さん(24)と木原龍一さん(33)の所属先として話題になった「木下グループ」傘下の映画会社「キノフィルムズ」。同グループが佐藤にとっても大きな後ろ盾となったことは間違いない。

デイリー新潮編集部