もう手遅れとわかっていても…最新の調査で分かった、加速する「AI」に対するアメリカ人の微妙な反応
わずか1年で利用者数は約9億人に急増し、OpenAIのChatGPTに迫る規模へと拡大したGoogle製のAI「Gemini」。先週アメリカで開催された「Google I/O 2026」での発表によれば、Geminiの定期利用者数は僅か1年で倍増し、今では約9億人に達したという。
この9億人という数字はChatGPTの利用者数にほぼ肩を並べる規模であり、アンソロピック製AI「Claude」の約30倍に相当すると見られている。その背景には、AI性能そのもの以上に、「Chrome」「Gmail」「Android」など、世界中の生活インフラに組み込まれたGoogleの巨大エコシステムがある。今後は、AppleのiPhone向けAI「Siri」にもGeminiが採用される予定で、「標準搭載AI」としての支配力は一段と強まりそうだ。
【前編】「ついにChatGPT時代の終焉か…グーグル「Gemini」9億人突破のウラで、CEOが語っていた「やっぱりグーグルが最強」の根拠」よりつづく
主力事業の「検索」もAIシフトが加速する
そうした中、グーグルにとって最も繊細な問題は主力事業である「検索」の行方だ。同社は最近、約四半世紀ぶりに検索画面をリニューアルして、「AIによる要約(AI Overview)」や「AIモード」などがデフォルトとなった。
ポッドキャスト番組司会者からの「(グーグルは)10本の青いリンク(従来の検索結果)を完全に廃止して、フルAIモードに移行するのか?」という質問に対し、ピチャイCEOは「すぐに従来の検索を捨てるような強硬策はとらない。ユーザーを置き去りにせず、段階的に進めることが重要だ」と慎重な姿勢を見せた。
また「今後AI検索が普及しても、(Google DocsやGeminiなどの)有料サブスクリプションと広告収入の組み合わせによりグーグルの経済的価値は維持できる」とピチャイCEOは自信を覗かせた。
ちなみに「アダム・スミスの経済原則は新しい世界でも変わらない」というのが、ピチャイ氏の持論だという。
アダム・スミスの古典的な経済学では、市場は「需要」と「供給」、そして「価値の交換」で成り立っている。ピチャイCEOによれば、「AI検索によって従来の検索結果が大きく変化しても、ユーザーに便利な回答(高い価値)を提供し続ける限り、そこから同じく高い収益を生み出す手段は必ず存在する」という。
実際、今でも巨額の赤字を出しているOpenAIなど新興勢力を尻目に、グーグルはクラウド事業を中心に早くもAIビジネスの黒字化を達成。その豊かな資金力を背景に、さらに利用者の拡大を進めている。
主力の検索エンジンなど潤沢な資金力に裏打ちされたグーグルの優位性は明白だ。ChatGPTやClaudeの無料版はユーザーに対し、入力できるトークン数やアップロード・ファイル数をはじめ各種の利用制限をかけているが、Geminiの無料版ではそれらの利用制限がほぼ無いか、あっても極めて緩い。これがGeminiのさらなるユーザー獲得に拍車をかけている。
AIへの反発や非難は理解できるが長期的には楽観
一方、これら各社のAIによって今後大きく変化すると見られる「労働の行方」や、それに対する社会的不安にもピチャイCEOは言及した。
「AIによる雇用破壊」などを背景に、最近のアメリカの世論調査では、「AIを良いもの」と考える人が16パーセントにとどまったのに対し、逆に「AIを悪いもの」と考える人は35パーセントに達している。また大学の卒業式では、「AIへの支持」を表明する祝辞講演者に会場の学生達から激しいブーイングが浴びせられている。
これについてピチャイCEOは「今の変化のスピードがあまりにも速いため、人々が経済的な将来に不安を感じるのは当然のことだ」と理解を示す一方、長期的な展望については楽観的だ。
「かつてのスプレッドシート(表計算ソフト)が財務分析を容易にしたように、これからのAIはコーディング(ソフト開発)を大衆化して、人々や社会の生産性を底上げするだろう。また医療の世界では、かつて『AIが放射線科医の仕事を奪う』と言われたが、実際にはデジタル化で画像データが10倍になり、今やAIの助け無しには診断が追い付かない状況になっている。
これらの医師は(AIのお陰で)わずらわしい事務作業から解放され、本来の治療に専念できる。(これのどこが悪い世界だと言うのか?)」とピチャイ氏は自信を示した。
AGIの到来は不可避
またグーグルの研究開発部門「DeepMind」を指揮するデミス・ハサビス氏が、I/O 2026のステージ上で、AI開発の現状を「AGI(汎用人工知能)の山麓(にまで辿り着いた)」と表現する中、ピチャイCEOも「AGIの到来は不可避」と考えている。
AGIが実現する時期について、ピチャイCEOは「かつては10年先と考えていたが、今ではより近い時期(3〜5年先)と考えるようになった」と述べた。
GeminiのようなAIが自らを改良していく「知能爆発」の段階には未だ達していないが、グーグル内部では従来数千時間もかかっていたOS(基本ソフト)の開発を、AIがわずか12時間でこなしてしまう、といった現象が既に起き始めているという。
かつて2023年、グーグルがChatGPT(OpenAI)の巻き起こした生成AIブームに乗り遅れた当時を振り返り、ピチャイCEOは「あれから永遠の時間が経ったかのように今は感じている」と述べた。
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