「糖質制限ダイエット」は脳の老化を早める…「炭水化物抜き」食生活の恐ろしいデメリット

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炭水化物を控えれば、あとは何を食べても痩せる―“甘い”言葉に従って過度に糖を制限した先には、思わぬ落とし穴が待ち受けている。

【前編を読む】糖質制限は日本人の体質に合っていなかった…「糖質不足は長期的には寿命を縮める」という衝撃の事実

炭水化物の摂取が少ないと死亡リスクが増す

米ハーバード大学が約1万5000人のアメリカ人を対象に調査を実施し、'18年に発表した論文によると、1日の摂取エネルギー(カロリー)のうち炭水化物が占める割合が40%未満の人は、50〜55%の人に比べて、寿命が約4年も短いことが判明した。

同様の傾向は、日本人でも明らかになっている。名古屋大学が9年間にわたって約8万人を追跡調査し、'23年に発表した論文によると、炭水化物の摂取量が少なすぎると死亡リスクが増すという。この研究を主導した同大准教授の田村高志氏が解説する。

「摂取エネルギーに占める炭水化物の割合が50〜55%の人々を基準に比較したところ、男性の場合、40%未満では死亡リスクが1・59倍、がんの死亡リスクも1・48倍に増加しました。この結果は、先に行われたアメリカでの研究とも整合的です」

なお厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準(2025年版)」によると、60歳の日本人男性が1日に必要とするエネルギーは約2650キロカロリーで、女性は約1950キロカロリー。このうちの50%を炭水化物から摂取するならば、男性は白いご飯を茶碗(150g)に5.7杯、女性は4.2杯を食べることになる。糖質制限どころか、むしろお腹いっぱいになるのではないか。

「ただし女性の場合では、炭水化物の摂取量が多すぎるのもハイリスクで、割合が60%以上だと死亡リスクが1・71倍に達している。つまり摂りすぎも摂らなさすぎも、どちらもよくないということを示しています。また男女で結果が異なる点にも注意が必要でしょう」(田村氏)

エネルギー不足で脳の老化が加速する

さらに糖質を過度に制限すると、脳にも悪影響をおよぼしかねない。東京都立大学教授の安藤香奈絵氏が話す。

「脳の神経細胞は、糖を分解して作られるATPというエネルギーを利用しています。糖質を過度に制限してしまうと、脳がエネルギー不足に陥って老化が早まるうえ、アルツハイマー型認知症を招く恐れもあるでしょう。

そもそも年齢を重ねると血流が衰えていき、脳に糖を運んでエネルギーとして利用する働きも弱まります。同時にインスリンがあまり効かなくなり、細胞内に糖を取り込みにくくなる。そのため脳がエネルギー不足になって、老化や認知症が進むわけです。

実際、ヒトと老化メカニズムが近いショウジョウバエで、脳の神経細胞での糖の取り込み量を増やす実験を行いました。すると年を取っても元気で活発に行動したうえ、神経細胞の状態も若いころとさほど変わっていなかったのです」

こういった研究結果に照らし合わせても、糖質制限は長期的にはデメリットのほうが大きそうだ。前出の厚労省の基準では、炭水化物は1日の摂取エネルギーの50〜65%を目安に摂るのが望ましいとされている。加えて前出の岡本氏は、「同じ炭水化物でも未精製のものがいい」と話す。

糖質制限以外の選択肢

「白米や食パンなどの精製された炭水化物に比べて、未精製の玄米やライ麦パンには食物繊維やビタミン、ミネラルがより多く含まれています。しかも吸収スピードが遅いので、食後の血糖値の上昇が緩やかになるのも特徴です」

また前出の松生氏は、痩せたい人には「魚介類やオリーブオイルを使った地中海食」を薦める。

「イスラエルで、やや肥満気味の人に地中海食か低炭水化物食を食べてもらい、それぞれのグループを6年間追跡調査した研究があります。その結果、前者のほうが体重の減少幅は大きかった。痩せたい人にとっても、糖質制限以外に有効な選択肢があるのです」

及ばざるは猶過ぎたるがごとし―何事も中庸を目指すのが、最良の健康法なのだ。

「週刊現代」2026年5月25日号より

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