【動画公開】紗倉まなインタビュー「AVは絶対的な本職」と語る彼女がそれでも書く“理由”

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2月12日に10冊目となる著書『あの子のかわり』(河出書房新社)を上梓した紗倉まな。AV女優であり、小説家という唯一無二の存在である彼女に、今作のテーマである「出産・妊娠」や、女優業と作家業との関わりなどについて聞いたインタビューの【後編】だ。

文学賞にもノミネート

AV女優としての活動は2月で15周年目に突入、小説家としても10周年を迎え、異才の二刀流として存在感を発揮している紗倉。AV女優として成功を収めているにもかかわらず、小説を書き始めたきっかけは何だったのだろう。

「もともと書くことは好きで、息抜きがてら日記やコラムなどを書き溜めていたんです。とあるインタビューで知り合った編集者さんから『(紗倉さんは)小説を書かないんですか?』と聞いていただいたのが、スタートでした。今見るとクオリティが低すぎて恥ずかしいですが(笑)。まさか仕事として書き続ける未来があるとは夢にも思いませんでした」

そう謙遜するが、彼女の作品は純文学の有名文学賞に2度ノミネートされたこともあるほど。繊細な感情表現と情景描写力は折り紙付きだ。

「初期の頃の文章には、どこか背伸びをして選んだ言葉もあったように思います。ただ作品を重ねるごとに、私がどう思われるかなんて不要だという意識が強くなり、次第に着飾らない文章になっていった気がします。ただ、今も校閲チェックを受けると日本語の間違いを指摘されることが多々あって、穴があったら入りたい気持ちになることもあります(笑)」

書くことで救われている

その一方で「一冊の小説を書くことは並大抵の大変さではない」とも語る。人気ナンバーワンAV女優の呼び声も高い彼女が、なぜそれほどの思いをしてまで小説を書き続けるのか。その力の源について聞いた。

「自分がこの仕事に就いて実感したのはAV女優は“人の目にさらされる仕事”だということ。次々と他者が『あなたはこういう人だ』と、都合よくラベリングしてくるようになる。そんな経験を続けていくうちに、自分のことを見つめ直す機会が増えていったんです。これが小説を書くときの、登場人物の内面を探って言語化する作業と似ているのかもしれません」

つまりAV女優が“表”で、書くことが“裏”。二つの職業は表裏一体なのだ。

「個人的にAV女優って、撮影をしているその時間だけでなくて、世間から向けられた悪意や好意を処理する時間も含めて“仕事”だと思うんです。褒め言葉であっても軽蔑的な視線が含まれていることがあるので、自分の言葉で自分を整理するプロセスが不可欠。

だからきっと、AV女優じゃなかったら小説を書くことはなかったんじゃないかなと思います。著者自身の考えを書くエッセイと違って、小説は“私”を見せずに私の思いを他の人物に投影できるわけで……。

他者からイメージを決められてしまいがちで作り込まれた設定のAVの世界にいて、小説は自由に自分の姿を見せずに見えている世界を表現させてくれる。そのことに救われているな、と感じます」

書くことは、AV女優でい続けるためになくてはならないもの。紗倉にとってかけがえのない居場所の一つだ。

「私の本職はあくまでAV女優ですが、今年は小説を書き始めて10周年。『どちらも本職だよね』と言ってもらえることが増えました。それでもAV女優としての自分のことも好きで、絶対的な本職だと思っています。長く続けていきたいという気持ちはデビュー当時から今も変わりません」

一行でも、毎日書く

本職であるAVの仕事と小説を書く作業は、どのようなバランスで行っているのだろうか。

「メーカー専属なので、この14年間はAV作品のリリースは月に1本。撮影も月に1日か2日のみです。他に作品に関連したイベント出演やバラエティ番組出演、最近はAV女優と作家が合体した立場で呼ばれる場も多いですが、それでも執筆は毎日行うようにしています。

規則的な仕事ではないので書く分量は日々変わりますが、以前、芥川賞作家の田中慎弥さん(53)と対談させていただいたときに、『毎日一文でも一語でも書くことが大事だ』とおっしゃっていたのが印象深く心に残っていて。以来、なるべく毎日、スマホにでもいいので書く作業を絶やさないようにしています」

執筆の仕方も、大きく変わったという。

「以前はよく、夜中に勢いで書いていたんです。でも、生活のルーティンの変化とともにだんだんと朝型にシフトしていきました。やはり朝のほうが頭が冴えているし、集中力も高まるので……。だから今は、起きて犬の散歩をした後に書くことが多いですね。お昼にご飯を食べると血糖値が上がって、今度は眠くなっちゃうので……」

叩かれるほど書きたくなる

AV女優であり続けるために書き続ける――。清々しい表情を浮かべた彼女だが、気になるのは次回作だ。書きたいテーマはもう決まっているのか聞いてみると、「自分が見ていない世界を書いてみたい」のだという。一体どういうことか?

「これまでは、AVとか妊娠・出産とか、自分の現実と地続きのことを書いてきました。自分の中にある思いを拾い上げて練り上げることが多かったぶん、自分がまったく見たこともないようなものを書けたらすごいな、と思っています。

イメージ的には『ハリー・ポッター』の世界のように、舞台となる世界もそこにおける常識もすべてが架空。そんなゼロの状態から自分の中だけで構築していく物語って、どうやったら書けるのか。私だから書けるもの、というのはあると思うけれど、さらにもう一つ、私が見ていない世界を見たかのように書ける、そんな力もつけたいなと思っているんです」

「毎回身を削るようにして書いているから、次に書けるものはもうない、これが最後の小説なんだろうな」と思っていつも書いていると話す紗倉。それでも結局、書きたいものは尽きないのだと話す。

「新たに書きたいことは意外とすぐに出てくるんです。不思議ですけど、人からいろいろな言葉をかけられるほどに、人、そして自分への興味が増していくんです。もちろん罵詈雑言には傷つきますが『もはやここまでくると香ばしいな』と、そういう言葉を投げつける人の心理や実像を探りたくなる。これは皮肉でもなんでもありませんが、みんなが私に小説を書かせてくれているんです」

AV女優で小説家。もはやどちらを抜きにしても、紗倉まなという存在は語れないだろう。

YouTube動画では実際のインタビューの様子や、記事に収録できなかったウラ話も公開している。

取材・文:奈々子