イヌは進化の過程で「愛くるしい外見」や「子犬のような目」といったヒトに可愛がられるような特性を獲得してきたと考えれられています。新たに、アリゾナ大学の研究チームによって「イヌは学習せずとも、ヒトと社会的なコミュニケーションをとれる」ということが明らかになりました。

Early-emerging and highly heritable sensitivity to human communication in dogs: Current Biology

https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(21)00602-3

Puppies are born ready to communicate with people, study shows | EurekAlert! Science News

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2021-06/cp-pab052621.php

研究チームは、アメリカ最大の介助犬組織であるCanine Companionsと協力して、平均8.5週齢の子犬375匹を対象に、ヒトとの社会的なコミュニケーションの可否を確かめる実験を行いました。

実験の内容は以下の通り。まず、2つのカップを用意して、イヌから見えないように片方のカップにエサを入れます。次に、エサの入った方のカップを指さす(A)か、エサの入ったカップの横に黄色い目印を置く(B)ことで、イヌがヒトの行動を読み取ってエサの入った容器に近づくか否かを確かめました。同時に、匂いによる影響がないことを確かめるために、指さしも目印の設置も行わない実験も実施しました。



以下の図は上記の3つの条件でイヌがエサの入ったカップを選択できた割合を示しており、青色が指さしを行った場合、オレンジが目印を置いた場合、グレーが何も行わなかった場合の結果を表しています。図を確認すると、何も行わなかった際は平均48.9%の確率でエサが入っている方を選択しているのに対して、指さしを行った際は67.4%、目印を置いた際は72.4%の確率でエサが入ったカップを選択できていることが分かります。この結果から、研究チームは「イヌは発達の初期段階から、ヒトのジェスチャーコミュニケーションに対して強い感受性を示す」と結論付けています。



続く実験では、研究チームはゲージの外側から「赤ん坊に話しかけるような高い声」で話しかけた後、ゲージの中に入り、イヌが話しかけたヒトの顔を見つめる時間を計測しました。



その結果、イヌは、話しかけたヒトの顔を平均18秒見つめたとのこと。この結果から、研究チームは「イヌは、ヒトの子どものように、ヒトによる社会的シグナルを理解して反応することができる」と主張しています。



研究チームは、上記の実験結果と実験に参加したイヌの情報を基に、実験で示されたイヌのコミュニケーションに対す感受性や社会的シグナルの理解力が「遺伝的要因」によるものか「環境的要因」によるものかを評価する統計モデルを構築しました。その結果、イヌの「ヒトとの社会的なコミュニケーション能力」の40%以上が遺伝的要因によるモノだということが明らかになりました。

研究チームの一員であるエミリー・ブレイ氏は「イヌの社会的スキルの高さには、遺伝的な要素が強く影響しています」「この研究結果は、イヌが、オオカミの集団から『ヒトとのコミュニケーションスキルが高い傾向にある個体』が選択された結果生み出された生き物であるという可能性を示しています」と述べています。

また、ブレイ氏は、「次のステップは、イヌの社会的スキルの高さに関わる遺伝子を特定することです」と、今後の研究の展望を語っています。