坪嶋拓真さん(C)日刊ゲンダイ

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【ビジネスの発想を学べ!】

「たこべえ」大ヒット 菓子職人・経営者の起死回生<前>

 坪嶋拓真さん(昼job代表) =前編

  ◇  ◇  ◇

 まさにタイムリーな商売だ。元キャバクラ嬢やフーゾク嬢など“ナイトワーカー”経験者に特化した人材紹介サービス。コロナ自粛のあおりを受け、仕事を失った元ナイトワーカー女性からの問い合わせが殺到している。その数はコロナ以前の約3倍!

 といっても、コロナ騒動に便乗した火事場泥棒ではない。社長の坪嶋さんが起業したのは約2年前。水商売と関わり始めたのは、15年近く前にまで遡る。

 大阪府八尾市出身。高校卒業後に単身上京し、昼は親戚が営む舞台制作会社、夜はバーやスナックなどで働き始める。

「水商売は若いうちしかできないと思って。人生経験としてやってみたかったんです」

 社会勉強のつもりだったが、よほど水が合ったのだろう。常連客もしっかり付き、20歳の時には裕福なマダム客の後ろ盾で、小さなスナックを出した。経営は順調。しかし23歳の時に店をたたみ、水商売からはすっぱり足を洗った。

「店をつくったのは仲間が集まれる場所をつくりたかったから。夢が実現したら、それで満足しちゃって……」

 その後はパチンコ店に勤務。店長代理にまでなったが、29歳の時に転機が訪れる。

「子供が生まれまして。一生このままでいいのかと。あと背広を着て昼に働く“ちゃんとした”社会人への憧れもありました」

 心機一転、これまでとは全く畑の違う不動産業界に飛び込む。しかしそこは水商売で鍛えられたコミュニケーション能力。入社7カ月で賃貸事業部の責任者に抜擢される。そして入社1年半後には本社の人事責任者に。

「僕自身には何の才能もありませんが“自分を助けてくれる人を見つける”のは得意なんです。不動産会社でも、パチンコ店で部下だった人間を大勢引き入れました。自分のチームをつくったんですね」

 部下を生かすことの重要性は多くのリーダー論で語られている。それをサラリーマン時代から自然にできていたのは、まさに天性のリーダー気質と言っていいだろう。

 さて、この不動産会社の人事責任者時代に、現在の「昼job」につながる出会いがあった。入社面接に来た21歳の元キャバクラ嬢だ。

「来ていきなり言ったのが“私は静岡のキャバクラでナンバーワンだった”。履歴書には自分がナンバーワンになるために努力してきたことがズラリと書き連ねてありました。履歴書の書き方はもちろん、初対面でタメ口という時点で社会人失格なのですが、目標に向けて努力する姿勢やガッツに引かれるものがありまして……。ダメ元で採用してみたんです」

■夜の世界にはダイヤの原石がゴロゴロ?

 すると入社1年目で8000万円の粗利を稼ぎ、同社の不動産売買の全営業マンの成績を抜く偉業を達成。まさにダイヤの原石だった。

 この経験から、「夜の世界にはこうした逸材がたくさんいるのでは」と思ったという。2018年5月に、社内ベンチャーとして元ナイトワーカー専門の人材紹介サービスを立ち上げる。  =つづく

(聞き手=いからしひろき)

▽つぼしま・たくま 大阪府出身。高校卒業と同時に上京し夜の世界へ。20歳でスナックを経営。パチンコ店勤務を経て不動産会社に就職。1年半で人事担当の責任者に。採用した元水商売女性の頑張りにヒントを得て、2018年に元ナイトワーカーに特化した人材紹介サービス「昼job」を社内起業。3カ月後に独立・法人化し、同社代表に就任。現在、大阪、福岡、北海道に支店を持つ。1児の父。