分野特化でアピール、北欧タブロイド紙の「サブスク」戦略:ドキュメンタリーで新規2万獲得
シブステッド(Schdsted)が所有するノルウェーのタブロイド紙「ヴェルデンス・ガング(Verdens Gang:VG)」は2017年以降、ペイウォールの枠にドキュメンタリーを入れることで、会員数が2万人増となり、総会員数は15万人近くに上った。VGの有料プレミアム会員版となるVGプラスでは、独占記事や長文記事のほかに、約400件ものドキュメンタリーを掲載している。これは同紙の動画スピンオフであるVGTVが過去5年間で入手したものだ。なかには、「サーチング・フォー・スーパーマン(Searching for Sugar Man)」や「アミー(Amy)」、「キャットフィッシュ(Catfish)」のような国際的な受賞作品も含まれる。VGプラスの年間契約料は、695ノルウェークローネ(約9480円)だ。
ドキュメンタリーに特化
VGTVで買収責任者を務めるアンドリース・フェイ氏によると、同パブリッシャーはNetflix(ネットフリックス)がノルウェーにローンチした直後から放映権の獲得に乗り出したという。しかし、だからといってスカンジナビアの大手がアメリカの大手技術プラットフォームとの競合を恐れたわけではない。ロイター通信が毎年発行するデジタルニュースレポートによると、VGプラスのドキュメンタリーにとって最大の競合(Netflixを除く)は公共放送のNRKだという。NRKはテレビとラジオを通じてノルウェーの人口の61%に相当する500万人にリーチしている。
「我々はドキュメンタリーの主要プロバイダーとして、特定分野のトップというポジションを得る機会を得た」と、フェイ氏はいう。約65名のスタッフを抱えるVGTVではここ数年間、さまざまなジャンルで実験的な試みを実施してきたが、ニュースブランドに合致しやすいということから、ドキュメンタリーに絞ることに決めた。フェイ氏は別のスタッフ1名とともにドキュメンタリー作品の獲得に尽力し、さらにVGの編集チームや社外パートナーと協力し、ドキュメンタリーの自社制作にも取り組んでいる。
VGは、ドキュメンタリーによって回転率や利用頻度が改善されることに気がついた。フェイ氏によると、ドキュメンタリーのプロモーション経由でサインアップした人は、そうでない人よりも退会率が低いという兆候が当初よりあらわれている。会員調査の結果も、これを裏付けるものだった。
「確かにドキュメンタリーには商業的な価値があるが、それだけではなく、完全性の価値もある」と、フェイ氏はいう。「我々はユーザーに対し、多様なフォーマットでより良い体験を提供している。それらは皆、異なったレベルで作用するものだが、必ずしも収益につながるものではない。私見になるが、ドル箱である必要はないのだ」。
視聴完了率は上がった
ロイター通信のデジタルニュースレポートによると、ノルウェーは有料コンテンツ利用者獲得に関しては、世界をけん引する立場だ。昨年、ノルウェーの人々の40%がNetflixなどの有料動画コンテンツを利用していた。たとえばイギリスを見ると、有料コンテンツ利用率は25%弱にとどまっている。
無料の広告支援型だった頃、VGTVのドキュメンタリーのストリーミング開始回数は月平均50万回程度だった。フェイ氏によると、再生開始回数は大きく減少したものの、視聴完了率は上がったという。
「すべてのプラットフォームを通して、既存ユーザーと新規の潜在顧客にコンテンツを送り出す方法には、多くの可能性がある」と、フェイ氏はいう。「我々はApple TVを利用しているが、その体験はまだシームレスとはいえない。それこそが、いま我々が力を注いでいるところだ」。
Lucinda Southern(原文 / 訳:Conyac)
