皇室史家が語る皇族養子案の核心と「絶対に超えてはならない一線」/倉山満
◆皇室典範改正実現を宣言
4月15日、皇位継承に関する国会の全体会議が一年ぶりに再開された。二つの政府案を軸に議論を進めている。第一案が「内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持することとすること。」であり、第二案が「皇族には認められていない養子縁組を可能とし、皇統に属する男系の男子を皇族とすること。」である。
この中で注目は、新たに議論に加わったチームみらいである。「女系天皇は先例が無いから」と実質は否定。皇室の議論の基礎は先例である。オールドメディアやSNSでは「(選挙ですらない)世論調査で次の天皇を決めよ」等と軽佻浮薄な議論が蔓延っているが、政界の大勢はマトモだ。
問題は、野党第一党の中道である。一か月の猶予で意見をまとめることになった。皇室の話は、政権交代くらいでひっくりかえされないよう、与野党合意で進めねばならない。責任は重い。
森英介衆議院議長(自民党出身)は、今国会でも皇室典範改正実現を宣言した。ということは、政府の方では法案ができているのだろう。ならば、今後の議論は、条文化した際におかしなことにならないように議論を進めるべきだ。
◆政府の主眼は「養子による皇籍取得」
政府の主眼は、第二案である。
現状で何もしないと、悠仁殿下が即位された時代に、皇族がいなくなる可能性がある。また、悠仁殿下にお子様が生まれれば良いが、どこにもそんな保証はない。だから、皇族を増やさねばならない。では、どこにそんな皇族が?
占領期、GHQに身分を奪われた方の子孫がいる。俗に「旧皇族」と呼ばれる方々だ。旧皇族はすべて伏見宮家に源流を持つ。この、皇族に生まれるはずだった方々に、本来の身分を取り戻していただこうとの考え方だ。これが第二案の「養子による皇籍取得」である。
さて、「養子による」は皇室典範の第九条を、「皇籍取得」は第十五条を変えねばならない。
皇族の養子は、近代でこそ禁止されているが、それ以前は常例である。
何より伏見宮家の歴代当主は、その時の天皇か治天の君の養子となって、家を継いだ。血が遠くても、「天皇の子」との擬制を続けたのである。養子は、典範改正による恒久法でも構わない。
問題は、「一般人は、女性が結婚する時以外は皇族になれない」とする第十五条である。
◆血がつながっていれば良いのではない
皇統に属する男系男子と言っても、血がつながっていれば良いのではない。たとえば、近衛文麿は後陽成天皇十二世孫の男系男子である。同じように西園寺公望は東山天皇七世孫なのでもっと近い。しかし、近衛や西園寺が皇族になれるなどとは、誰一人思わないのが常識である。
基本的に皇籍離脱したら、皇族に戻れない。ただ例外はある。特別の御由緒により、いったん臣籍に下っても皇籍復帰した例、子孫が皇籍取得した例はある。
では現在、そのような特別な御由緒があるのは誰か。旧皇族の男系男子孫と呼ばれる方たちだけである。政府は「旧皇族は日本国憲法下でも皇族であった」ことを理由に、その男系男子孫の皇籍取得を可とする。
伏見宮家は皇室に何かあった時に備える家として、室町時代に後花園天皇の勅命により永世御所とされた。その後、近世では永代親王家の一として続き、明治の典憲体制でも皇族だった。だから日本国憲法下でも皇族であった。このような特別な御由緒があるのは、伏見宮家を源流に持つ、いわゆる旧皇族だけである。
