大学の「100円朝食」、物価高に苦しむ学生が行列…協賛企業は就職先としてアピール
大学の学生食堂などが提供する「100円朝食」に行列ができている。
朝食を抜く学生の生活習慣改善が主な目的だったが、物価高に苦しむ学生が並んでいる。食材費の高騰で継続が危ぶまれる中、就職先として学生にアピールしたい地元企業を巻き込み、費用を捻出している大学もある。(橋爪悦子)
毎日売り切れ
武蔵野大学(東京)は、経済的に困窮する学生がいることなどを受け、今年4月から都内2か所のキャンパスで、100円朝食の提供を始めた。
今月19日に武蔵野キャンパスの学食で用意された100円朝食は、日替わりで唐揚げやハムカツが付く「朝食セット」など4種類。通常は500円以上する献立だ。午前8時15分の提供開始から30分ほどで、限定50食のうち約40食が売れた。毎日ほぼ売り切れる。
宮城県出身で週1回程度利用する薬学部3年の女子学生(20)は「生活はアルバイトと仕送りでやりくりしている。朝食は安くてボリュームも十分」と感謝。茨城県出身で教育学部1年の女子学生(20)も「友人と食材が安いスーパーの情報を交換している。100円で食べられる温かい朝食はありがたい」と喜ぶ。
仕入れ値2・6倍
100円朝食は、乱れがちな下宿生の生活習慣の見直しにつなげようと、2000年代から全国各地の大学で導入された。費用は保護者や卒業生らが負担するケースが多い。
関西大(大阪)千里山キャンパスでは、学食を運営する大学生協が15年度に100円朝食を始めた。費用は18年度から保護者で作る後援会や卒業生による校友会が負担し、現在は本来500円程度で販売するメニューを平日朝に限定170食で準備する。
しかし、食材費はこの10年で1食あたり50〜100円上昇。米の仕入れ値も最大時2・6倍まで上がった。23年度から後援会などの負担額を25%増やしたが、学生の需要も高まっており、足りない時は、大学生協がカレーを提供することで補っているという。
同大学生協の尾形恒(ひさし)理事は「厳しい状況だが、何とか工夫をして続けたい」と述べる。
1口15万円
100円朝食の継続が難しくなる中、埼玉大(さいたま市)は、キャリアセンターが中心となって、地元企業などから協賛金を募り、運営費に充てている。
協賛金は1口15万円。特典として朝食を取る学生に向けた講演が1回でき、チラシ配布や学食のテレビに広告を映すことができる。
今月22日は、埼玉県越谷市の包装機器メーカー「大森機械工業」の人事担当者が来校。学食には午前8時から、チキン竜田丼とみそ汁の100円朝食を求め、175人が列を作った。学生が食べ始めると、人事担当者が業務内容を説明し、「超がつくほどの安定企業。ぜひホームページを見て」と訴えた。教養学部1年の女子学生(19)は「朝ご飯を食べながら地元企業も知ることができる。一石二鳥以上の価値がある」と笑顔を見せた。
協賛企業は開始した24年前期の8社から、今年前期は12社に増えた。石阪督規・キャリアセンター長は「協賛企業のおかげで物価高でも100円朝食を維持できる。学生のキャリア教育にもつながる」と話した。
「カレー物価」5年で95円増
物価高は、学生と保護者の懐を圧迫している。
民間調査会社「帝国データバンク」が発表する、自炊に必要な原材料費や光熱費を表す「カレーライス物価」は、2025年度平均で1食353円。直近5年で95円も上がった。
一方で、東京地区私立大学教職員組合連合が昨年、首都圏9大学1短大の新入生の保護者を対象に行った調査では、6月以降の仕送り額は月平均9万1600円。1986年の調査開始以降、最高だった94年(12万4900円)から約3割も減った。一人暮らしの学生の家賃は月平均7万1800円と過去最高を記録し、仕送りから家賃を除いた1日に充てられる生活費は660円にすぎない。同連合の担当者は「学生はアルバイト前提の生活を強いられ、学業に支障が出かねない」と訴えている。
