皇族として長く国民に親しまれている方が皇位継ぐべき、女性天皇も議論を…東大名誉教授・北岡伸一氏
[論点 皇位継承]<5>
皇室には、国内の様々な対立を緩和し、社会を安定させる働きがある。
それゆえ、国民が納得し、尊敬の念を抱き、親しみを感じる皇室制度であるべきだ。その意味で、皇族数の確保を巡り、国会で行われている議論には疑問がある。
第一は、女性天皇の可能性を議論していないことだ。男女が対等に活躍している現代に、男性にしか皇位継承権がないのは、おかしい。明治の旧皇室典範制定の際でさえ、最終的には退けられたが、女性天皇や(母方のみ天皇の血を引く)女系天皇の容認は、有力な選択肢だった。
歴史をひもとけば、男系男子による継承は側室制度とセットだった。長く続いた男系相続を変えるべきでないというなら、側室制度も続けるべきだが、できるはずがない。長く続く制度でも、国民の意識の変化に応じて変えるべきだ。
男系相続は、イスラム諸国などにもある。日本が世界に誇るべきなのは、皇室が国民の厚い支持で長く続いてきた点だ。女系では、誇れなくなるとは思えない。安定継承には長子相続が筋だし、世界の大勢だ。
第二に、旧皇族の男系男子を対象にした養子案は、門地による差別を禁じた憲法14条に違反する可能性がある。この制度が実現すれば、違憲訴訟が続発するのではないか。「憲法違反の疑いがある」と言われる皇族を作り出すことにならないか、懸念を禁じ得ない。
そもそも国民は、一般人から突然、皇族になった人を尊重するだろうか。現在の皇族は、男女を問わず生まれた時から国民に見守られ、愛されて育っている。皇族側も常に国民の目に触れながら皇族の自覚を育んできた。養子になる本人が皇位継承権を持つわけではないが、性別によらず、皇族として長く国民に親しまれている方が皇位を継ぐべきではないか。社会が広く納得することが大事だ。
仮に養子を認めるならば、全ての人に可能性を開くべきだろう。優れた人格や識見が重要であり、血筋だけで決めるのは適切ではない。養子縁組の可否を誰が判断するのかも課題だ。いつの間にか知らないうちに決まったというのでは、国民は納得しないだろう。
各種の世論調査で養子案への賛否が割れている。高市首相(自民党総裁)は「国論を二分するような政策に果敢に挑戦していく」と言うが、国論を二分して決めるべき問題ではない。
内容以上に腑(ふ)に落ちないのは、与党が今国会での皇室典範改正を主張していることだ。政府が条文を作成後、最低1年程度は議論を深めるべきだ。具体的な条文があって初めてメリット、デメリットが明らかになり、賛否が言えるようになるはずだ。
