2026年3月末、取材に応じた坂口杏里

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 八王子市内のコンビニでサンドイッチを万引きし、3月17日に逮捕された坂口杏里(35)。2世タレントとして活躍した彼女の転落ぶりは大きな注目を集めたが、「釈放後の生活」もまた衝撃的なものだった。彼女への取材を続けてきたライターの河合桃子氏が密着レポートする。【前後編の前編】

【写真】坂口杏里と吉田さん(仮名、47)の自宅前でのツーショット。居候している吉田さんの自宅なども

「おじさんに会いたい。どうすればいいですか」

 呂律の回らない杏里から着信があったのは、3月30日のことだった。

「おじさんに会いたい。どうすればいいですか」

 杏里が"おじさん"と呼ぶのは、坂口の継父でプロゴルファーのジェット尾崎こと、尾崎健夫氏のことだ。窃盗の疑いで現行犯逮捕された杏里は、9日間の勾留を経て釈放されていた(4月8日に不起訴処分)。釈放された杏里の居場所が気になってLINEを送ったところ、冒頭の電話が来た。 

 杏里は、半年ほど前にライブ配信で知り合ったファンの男性・吉田さん(仮名・47)の自宅に今年3月初旬から居候しているのだという。

 本人の現状が気になった私は取材の約束をし、吉田さん宅に車で向かった。大きな一軒家で、雨戸は昼間なのにすべて閉め切られていた。庭には鉢植えが置かれていないアルミ花壇がある。

 車内で待つこと40分、杏里は「桃子さーん」と愛嬌を見せて家から出てきた。その姿は、今年1月に取材した時よりも明らかに太っていた。隣には、杏里よりも背の低い分厚いレンズの眼鏡をかけた中年男性がいた。「はじめまして」とはにかんだ吉田さんは、上顎に1本だけ残る前歯が印象的だった。「家は散らかっているので」と2人が言うので、3人で近くのイタリアンチェーン店「サイゼリヤ」に行くことになった。

「別々の部屋で寝ている」

 2013年に亡くなった大女優・坂口良子さんの長女として生まれた杏里。バラエティ番組で親子共演するなど芸能界で活躍したが、良子さんの死後は生活が安定しない。2度の電撃婚と離婚を繰り返し、今回で逮捕は3度目となった。私は記者として10年ほど、杏里に定期的に取材している。今年1月、当時新宿2丁目のバーで働いていた杏里は、今後についてこう語っていた。

「フツーの恋愛をしたい。フツーの人と幸せに暮らしたい」

"フツー"を手に入れたい杏里はなぜ事件を起こし出会ったばかりの男性宅に身を寄せているのか。聞けば吉田さんは障害者手帳1級2種を持ち、現在は就労継続支援B型という作業所で週3日働いているという。両親が購入した自宅を相続し、障害年金と作業報酬で生計を立てている。吉田さんは優しい雰囲気で経緯をこう説明した。

「僕は杏里ちゃんがタレント時代からファンでした。杏里ちゃんがライブ配信をするようになってから投げ銭して、2丁目のバーにも5回くらい行った。杏里ちゃんがバーを辞めて行くあてがないと言うので『ウチにおいで』と言いました」

 そうして杏里は3月2日、吉田さん宅の最寄り駅にキャリーケースを引いて現われた。

「杏里ちゃんが怖がらないように部屋は別で、寝る時ももちろん別です」

万引きした時は「お金がないわけじゃなかった」

 吉田さんは「杏里ちゃんのことを見守りたい」と言うが、杏里は同居後すぐに事件を起こした。

「その日は杏里ちゃんが『体が痛い』と言うので、家の近くの接骨院に送って僕だけ先に帰った。その後、杏里ちゃんは僕に何も言わず隣駅まで行き、その近くのコンビニで万引きしたみたいです」

 なぜ万引きをしたのか。杏里は嘘か本当か、「お金がないわけじゃなかった」と言う。

「レジに10人くらいいて、並ぶのダルいなって。スリルも味わいたくなって、そのまま外に出ちゃった」(杏里)

 店員に引き止められ、駆けつけた警察官2人に現行犯逮捕される。近くの警察署に連行され、事情聴取ののち別の警察署に移動した。その後、杏里の勾留は9日間にわたった。釈放まで時間がかかったのは、身元引受人が決まらなかったからだ。杏里には継父として尾崎氏が、また実兄がいる。しかし良子さんの死後はあまり良好な関係を築けず、疎遠になっていたようだった。

「おじさんもお兄ちゃんも(携帯)番号がわからないから、身元引受はヨッちゃん(吉田さん)に頼むしかなかった」(杏里)

 吉田さんには、刑事などから電話で「身元引受人になってほしいと連絡があった」という。

(後編へ続く)

【プロフィール】
河合桃子(かわい・ももこ)/1977年、東京都生まれ。ライター。週刊誌を中心に執筆。幅広く取材活動を行なっており、特に性風俗にまつわる事件などアングラな業界を長年取材している。2025年、第32回小学館ノンフィクション大賞を受賞。

※週刊ポスト2026年5月1日号