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「仕事が忙しくて家庭や自分の時間が取れない」。そんな悩みを解決する鍵は、根性ではなく「休み方の質」にありました。世界トップレベルの舞台で圧倒的な成果を出し続ける人たちは、時間を「消費」するのではなく、自らのエネルギーを再生するために「設計」するプロフェッショナルです。彼らが実践する「休み方」とは。元マッキンゼー・パリ社員で現OECD職員の星歩氏が、著書『世界基準の仕事術』(大和出版)より、キャリアの頂点に立ちながら私生活も大切にする、世界トップレベル人材の休日設計術に迫ります。

休日は「心身の回復」と「将来への投資」を

以前、こんなことを言った同僚がいました。「自分は、周りと比べて残業時間が少ないから、周りと同じ速さで成長することはできない」彼女は真面目で努力家でした。しかし、彼女にとって「残業=成長」という考えが当たり前になっていたのです。

キャリアの成長は、残業時間の長さで決まるものではありません。大切なのは、どれだけ長く働いたかではなく、どれだけ成果を出し続けることができたか。そして、休むことが成果を出し続けるための1つの秘訣だと思っています。休まずに成果を出す続けることができる人は、この世の中に誰1人として存在しません。

私も最初は休むことに罪悪感を覚えました。こんなにゴロゴロしてしまっていいのだろうか、こんなに寝てしまって良いのだろうか、こんなに長いバカンスを取ってしまって良いのだろうか。

でも今は、「休むことも仕事だ」と思っています。心身を回復させること。しっかりと睡眠時間を取り、自分の好きなことを心から楽しむこと。これらは、怠惰ではなく「次の成果を出すための準備」です。むしろ、上質な休息を取れない人ほど、思考力も創造力も低下し、成果を出し続けることができなくなります。

そして、もう1つ大切なのが「将来への投資」の時間です。自分のキャリア、将来の目標につながるような学びや経験を、少しずつ休日に取り入れていくこと。休日に、好奇心を持って学び続ける。それこそが、あなたをさらに成長させる鍵だと思います。

本を読む、新しい分野に触れる、業界の専門家との交流。そのすべてが、仕事とは異なる角度からあなたの視野を広げ、発想の引き出しを増やしてくれます。休日の数時間を、自分の将来に投資する。その積み重ねが、数年後に大きな差になります。こういった学びは、世界基準で成果を出す人にとって、「努力」ではなく「楽しみ」なのです。

過労でうつ病になったマッキンゼーから転職して…

私自身、OECDに働き始めてから、残業時間はほとんどなくなりました。今まで夜の23時、24時まで働くのが当たり前だった生活から、180度変わりました。週末以外にも自分のために使える時間が圧倒的に増えたのです。

自分の時間をどのように使うかは自分次第です。過労でうつ病を経験して以来、私は「心と身体の健康を最優先にする」ことを大切にしています。無理をして半年間倒れてしまうよりも、必要なときにしっかり休みを取り、長く安定して働ける自分でいる方が、ずっと効率的だと気づきました。

自分の時間が増えたことで、毎日のようにヨガをし、家族と過ごす時間を持てるようになりました。家を購入するための準備の時間も、本を読む時間も、本を書く時間も、資格の勉強をする時間も取れるようになりました。かつて「やりたい」と思いながら後回しにしていたことが、今ではすべて実現できています。

毎日朝から深夜までただ仕事に打ち込むことだけが人生ではないと思います。世界基準で成果を出す人ほど、「休むこと」を大切にしています。休むことで心身を回復させ、回復した心と身体で新しい知識を吸収し、次の挑戦へと踏み出す。それが、「成果を出し続ける人たち」の共通点だと思っています。

多忙なマッキンゼーのコンサルが子どもを4人も育てられる理由

育児、掃除、洗濯、料理、買い出し、……休日は「休み」とはいえ、実際にはやることが山ほどあります。特に仕事を持つ人にとって、週末は貴重な「休息」であるはずなのに、現実は、家事や育児で終わってしまうことが多いのではないでしょうか。

マッキンゼーで働いていたとき、驚いたのは、女性コンサルタントの多くが、仕事と家庭を両立させていたことです。なかには子どもが3人、4人いる人も珍しくありませんでした。特に当時のフランスオフィストップのマネージングディレクター(女性)は、マッキンゼーで、フルタイムで働きながら、4人の子どもを育て上げていたのです。

夜遅くまで会議が続き、メールのやりとりが終わるのは24時。それでも、彼女がキャリアをあきらめずに家庭も成り立たせていた秘訣は何か。それは、徹底したアウトソーシングでした。

支払った費用の最大50%が税控除されるヘルパー代

フランスでは、子どもの世話や家事をサポートする住み込みのヘルパーさんが多く、ヘルパーさんが朝から晩まで、掃除、洗濯、食事の準備、子どもの送迎まで、家庭のあらゆることを担ってくれます。

「そんなの高額なんじゃ?」と思われるかもしれませんが、実はそうでもありません。たとえば、フランスでは家庭用ヘルパーさんを個人で簡単に雇うことができ、支払った費用の最大50%が税控除として戻ってきます。

また、掃除代行サービスも非常に身近な存在です。政府補助を受ければ、1時間あたりたったの12.5ユーロ、日本円で2250円(1ユーロ=180円換算)。買い出しもオンライン注文とデリバリーを活用すれば、時間の節約になります。

こうした仕組みを上手に使うことで、フランスの多くの働く人たちは、「休日の時間」を意識的に確保しています。休日を家事や育児で終わらせるのではなく、家族と過ごす時間や、自分の心を満たす時間に使う。そのために、「お金」ではなく「時間」を優先するという考え方が根付いているのです。

日本でも家事代行サービスは増えつつあります。掃除だけ、料理の作り置きだけ、月1〜2回だけ、といった部分的なアウトソーシングから始めることは十分可能です。

また、すべてを「人」に頼らなくても、テクノロジーは強力な味方です。ネットスーパーや、ロボット掃除機、食洗機などは、初期投資こそ必要ですが、日々の家事の時間と労力を確実に減らしてくれます。

完璧を目指さない

もう1つ大切なのは、完璧を目指さないことです。「家事は自分でやるべき」という無意識の思い込みが、アウトソーシングへの心理的ハードルを高くしています。すべてを任せられなくてもいい、理想通りでなくてもいい。10の負担を7に減らすだけでも、心と時間には大きな余白が生まれます。

日本では制度や文化が追いついていない部分もありますが、だからこそ、1人ひとりが「時間をどう使いたいのか」を意識的に選ぶことが重要です。限られた時間の中でも、自分のエネルギーを本当に使いたい場所に集中させる。その積み重ねが、長いキャリアを無理なく続けるための現実的な戦略となるのです。

休日にSNSをダラダラ見ないための工夫

「気づいたら、もう週末が終わっていた」そんな経験、誰にでもあるのではないでしょうか。朝起きて何気なくスマホを手に取り、SNSを眺めているうちに時間が過ぎ、気づけば昼。夜も同じようにインスタグラムやユーチューブ動画を見ながらベッドに入り、あっという間に週末が終わってしまう。

以前、こんなことを言った同僚がいました。「夜寝る前と朝起きてから、ついインスタを見てしまうんです。気づくと、平日の休めるはずの時間が全部スマホで終わってしまっていて……」

こうしたスマホ時間は、私たちの「すき間時間」を少しずつ奪い、気づかないうちに「自分の休み時間」を飲み込んでしまうのです。休日は、ただ流れに任せていてはあっという間に終わってしまいます。そこで、自分の休み時間にルールをつくるのです

たとえば、SNSを見る時間を「1日30分まで」だけと決める。それ以外の時間は見ないと、あらかじめルールを決めてしまうのです。最初はなかなか従えないかもしれませんが、慣れてくると本当にやりたいことに時間を使えるようになります。

私は、インスタグラムやユーチューブといったアプリを、そもそもスマートフォンから削除しています。そうすると、見るためにはわざわざブラウザで検索する必要があるため、無意識に開いてしまうことを防いでいます。そこまでする必要はないかもしれませんが、自分の時間を守るための何かしらの工夫は必要かもしれません。

世界基準で成果を出す人の休日スケジュール

休み時間を設計する際、必ず確保しなければならないのが「心身の回復の時間」。その中で特に重要なのが「睡眠時間」。以前も触れたように、睡眠は最高のパフォーマンスを発揮するために欠かせない要素です。「睡眠時間」は削らない前提で、「残りの時間」をどう使うかを考えます。

まずは「身体の回復」のために、健康的なバランスの取れた食事を取り、軽い運動をする。可能であれば、自然の中で過ごす時間を入れます。

「心の回復」のために、好きなことに没頭する時間を取る。音楽を聴く、読書をする、料理を楽しむなど、「成果を求めない時間」を持つ。そして「人とのつながりの時間」、家族や友人と何気ない会話をすると、オキシトシン(幸福ホルモン)が分泌され、自然と心が穏やかになります。こうした時間は、「自分のエネルギーを再生する時間」です。

そして、最後に残った時間にぜひ入れてほしいのが、前項でも触れたように「将来への投資の時間」です。それは、自分の視野を広げる時間です。本を読む、興味のある分野を調べる、ドキュメンタリーを見る、自分と違う分野で働く人と話をする、どんな小さな学びでも構いません。心身が整っている状態での学びは、吸収力が一気に高まります。

「心身の回復の時間」と「将来への投資の時間」のバランスは、人それぞれだと思います。私の場合、たとえば休みの日の24時間のうち、「睡眠時間」が9時間、「身体の回復の時間」が2時間、「心の回復の時間」が2時間、「将来への投資の時間」が6時間、そして残りの5時間がその他生活のための時間。

だいたいこんな配分です。その日の疲れ具合によっては、「心身の回復の時間」の割合が増えることもありますし、エネルギーが十分にある日は、「将来への投資の時間」が自然と多くなります。

大切なのは、これらの要素をその日の自分の状態に合わせて柔軟に調整すること。そして、世界基準で成果を出す人はどんな日でも「将来への投資の時間」を必ずどこかに組み込んでいます。休日を流れに任せて過ごすのではなく、自分の意志で設計する。それだけで、1日が充実します。

[図表]休み時間設計の基本構造 出典:『世界基準の仕事術』(大和出版)より抜粋

星 歩

元マッキンゼーパリ・現OECD職員