関連画像

写真拡大

情報公開請求で取得した司法関連文書をブログで公開し続け、月間30万アクセス、総アクセス数2000万回超。「弁護士山中理司のブログ」は、法曹関係者が「調べると必ず行き着く」と評する司法情報のインフラとなった。BUSINESS LAWYERS AWARD 2025(主催:弁護士ドットコム)で審査委員会特別賞を受賞した山中氏に、その活動の原点と、生成AIを活用した今後の展望を聞いた。

●法曹界で抜群の知名度

情報公開請求を通じて取得した司法関連文書等を掲載している「弁護士山中理司のブログ」は、2017年8月の開設以来、約8000本の記事と約2万4000点の資料(9割以上がPDF)を公開。総アクセス数は2000万回を超え、Googleアナリティクスによれば、月間30万回ほどのアクセスがあるという(2026年1月現在)。

よく読まれるのは、裁判官に関するもの。経歴面では簡裁判事を除く高輪1期以降の全裁判官を網羅しており、その数は6000人以上。このほか裁判官が参考にする法律書のリストや司法にかかわる諸制度の内部文書など、法曹の目を惹く情報が目白押しだ。

法曹界での認知度は高く、アワード受賞者を決める会議でも審査委員から「司法に関して調べると必ず行き着く」「歴史的アーカイブ」「もっと昔からあると思っていた」など、賛辞が相次いだ。審査委員で元日弁連会長の中本和洋弁護士によると、山中氏が公開した資料は法曹関係の各種会議でも活用されているという。

裁判官にも個性や傾向はあるため、自社が関係する事件が裁判にかかればビジネス関係者も裁判官の経歴をチェックする。ブログでの活動は直接的にはビジネスと関係ないかもしれないが、全弁護士に対する貢献を讃え、全会一致で審査委員会特別賞となった。

山中氏自身は「企業法務との関連は特に意識していなかったので、受賞の知らせには大変驚きました」と打ち明ける。表彰式では多くのブログ読者に声をかけられたという。

●裁判所の透明性を求め

2012 年8月に知人弁護士から紹介を受けた、とある刑事事件に関する捜査機関の不当な捜査に対する不信感がきっかけとなり、2013年2月から情報公開請求の活動を開始したという。

また、ブログを始めた理由は弁護士としての営業活動の一環であったものの、開示文書の掲載を続けているうちに、営業活動の意味合いが薄れて現在のような開示文書の掲載及びこれに関連する司法関係の記事がメインとなったそうだ。

以来、裁判所に関する話題を中心に情報公開請求をかけ、その透明性の確保を目指している。ときには、ニュースなどで関心を持ったテーマについて、「○○に関し、作成又は取得した一切の文書」といった文書名で請求することもあり、基本的には、裁判官や弁護士が興味を持ちそうなテーマを選んでいる。

例年同時期に作成される文書が多数あることから、過去の開示文書の作成時期を踏まえ、エクセルで情報公開請求計画を立てている。2026年は最高裁との関係だけでも約140枚分(うち、各期の司法修習関係が約30枚分)の情報公開請求を予定しているという。1枚で複数の文書を求めることが多いため、実際に請求する文書数はこの数倍になる。

行政機関であれば、請求する行政文書1件につき請求時点の手数料は300円。裁判所及び衆参事務局相手だと請求時点の手数料は発生しないが、行政機関同様、開示文書の写しに対して枚数に応じた費用や郵送料がかかる。これまでの総費用は「集計していないのでわからない」そうだが、相当額であることは間違いない。

●生成AIでインフラを強固に

2025年4月から生成AIを本格的に使い始め、弁護士業務にも組み込んでいる。最近では自分で書いた書面よりもAIで書いた書面の方が出来がいいそうだ。

ブログ記事のテーマ探しや執筆にも積極的に活用しており、記事ジャンルの拡張につながっている。タイトルに「AI作成」と入った記事も増え、判決の評釈や開示文書などを基に裁判所の思惑を探るコンテンツなどを公開。2026年2月投開票の日弁連会長選では、投票の参考にできるよう両候補者の選挙公報を比較する記事もアップした。今後も収集した膨大なデータをAIで解析していくという。

アワード受賞後の2025年11月下旬には、サーバーの負担を軽くするため、ブログから広告を外したほか、AIと相談しながら自力で各種高速化処理を行ったり、PHP7.4からPHP8.3 へのメジャーアップデートを行ったりした結果、ユーザーはより速く快適にブログを閲覧できるようになった。

広告を外して高速化処理を行えば、裁判官の名前を検索したとき、(同じく裁判官情報を掲載する)新日本法規より上位に表示される可能性が高いとAIに言われたのがその主たる理由であるという。

ブログの読者にとっては目障りとなる広告がなくなり、より公的な“インフラ”の要素が強まった。「今回の受賞を大きな励みとして、今後ともブログ活動を通じ裁判所及び行政機関の透明性向上に努めていきたいです」などと話していた。

【プロフィール】 やまなか・まさし 京都大学法学部を卒業後、2006年10月に大阪弁護士会へ登録し、林弘法律事務所に入所。2022年8月、当時の所長である林功弁護士の逝去に伴い先輩弁護士と2人で同事務所を承継し現在に至る。得意分野は被害者側の交通事故、遺言・相続及び企業法務。近年は弁護士業務におけるAI活用の研究にも力を入れる。