【漫画】だらしないのに色っぽい…!『夜鷹ふたたび』作者が語る”ヒロインに込めた思い”

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「だらしないところも色っぽい」

「夜鷹というヒロインを、リアルで嘘のない一人の人間として描きたいと思ったんです。かっこいいところはかっこいいし、ダメなところはダメだし。だらしないところも色っぽい、みたいな」

昨年11月13日発売の『モーニング』で連載が始まった『夜鷹ふたたび』(以下『夜鷹』)。ヒロインは〈ヤニカス・酒カス・33歳(大厄)〉の“だらしない殺し屋”だ。

『ヤニねこ』(『週刊ヤングマガジン』講談社)作者のにゃんにゃんファクトリーや、お笑い芸人•『ぱーてぃーちゃん』の金子きょんちぃ(32)など、各界のヤニカスたちも絶賛している作品なのである。

単行本第1巻が3月23日に発売されたのを記念して、FRIDAYデジタルが、著者である漫画家・イズミダフユキ氏にインタビューを敢行。『夜鷹』が誕生するまでの秘蔵エピソードを公開する。

イズミダ氏は、’17年に両親を殺された少女の復讐劇をスタイリッシュに描いたダークファンタジー『BLACK BOARD』(『月刊少年ガンガン』スクウェア・エニックス)でデビュー。2作目の『マダラランブル』(『コミックDAYS』講談社)では、現代社会に跋扈(ばっこ)する吸血鬼と戦う少女たちのバトルアクションを描いた。3作目となる『夜鷹』の主人公“夜鷹”のキャラクターについて尋ねると、イズミダ氏は冒頭のように語った。

同作品は公式HPで、次のように紹介されている。

〈その女、「夜鷹」。かつては最強の殺し屋として裏社会で名を馳せた女、「夜鷹」は、今ではヤニカス・酒カス・33歳(大厄)となっていた。過去の姿はどこへやら、ボロいアパートで、無職ライフを満喫中。そんな心も体も弛みまくった夜鷹の元に、殺し屋時代の後輩から現役復帰のお誘いが…!! 今ふたたび戦場に返り咲くんか!? 夜鷹さん!!!!〉

つまり今作は、前2作の“可愛くてかっこいい少女”とはまったく異なる“タイプ”のヒロインなのだ。

イズミダ氏と漫画の出会いは、中学時代に遡る。最初は『鋼の錬金術師』(『月刊少年ガンガン』スクウェア・エニックス)や『BLEACH』(『週刊少年ジャンプ』集英社)といったダークファンタジー、バトルアクション系の少年漫画にどハマりしたことだった。

「そこからさらに『エア・ギア』(『週刊少年マガジン』講談社)や『天上天下』(『ウルトラジャンプ』集英社)を読んで、女の子のアクションって、かわいくてかっこいいなって思って。そういった作品が自分の発想の元になっていて、じゃあ自分が漫画家になったときには、好きなものと好きなものを掛け合わせた漫画を描きたい……。そういった少年心がベースにあります。その結果、『女性が主人公のかっこいいアクションを描きたい』と思ったんです」

「美人の散らかった部屋はロマン」

たしかに前2作は、かわいくてかっこいい少女が躍動するアクションだったが、それがどうして、今作では“だらしない殺し屋”がヒロインになったのだろう。

「1作目は復讐劇、2作目は吸血鬼モノ。3作目は殺し屋と、物語の設定は、いわゆる王道といわれるジャンルです。ただ今回は、『王道』や『メジャー感』を無視して今の自分が本当に『おもろい!』『カッケー!』と思ったことをやりたくて。そこで、担当編集者と話している中で、30代半ばになった自分たちが魅力を感じる女性は? というテーマの話になったんです。

『一番リアリティを持って、美しくてかわいいと思えて、お色気展開とかもあるかもしれないと期待感を抱けるってどんな女性だ?』と、飲み会で話すレベルですけど、そこから真剣にキャラクターを詰めていきました。前2作は、あくまでファンタジー作品。つまり、ヒロインもリアルには描いてなかったわけです。だから、今回はキャラクターのリアルレベルをどんどん引き上げていこうと。ヒロインが“殺し屋でだらしない女性”というのも、そのジャンルの中でいかにテーマをひねるか、みたいな部分はあったかもしれません」

そうやって、誕生したのが〈ヤニカス・酒カス・33歳(大厄)〉のヒロインだという。

『夜鷹』の第1話で初めて夜鷹が登場するシーンは、実に衝撃的だ。だらしなく太った夜鷹が布団に大の字になり、左手に吸いかけのタバコ、右手にスマホを持っている。布団の周りには、タバコの吸い殻で溢れた灰皿、酒の空き缶、脱ぎっぱなしのパンツ。そして、用途不明の電気マッサージ器まで……。その情景を天井から俯瞰する画角で描いている。

「『美人の散らかった部屋ってロマンあるよね』という話から設定が決まって、登場シーンでは、きれいなお姉さんのリアルな生活を覗き見している目線が欲しかったんです。外ではキレイにしていても、部屋が汚かったり、服を脱ぐと、ちょっと身体のラインがだらしなかったり。魅力的な大きなバストでも33歳になって自堕落な生活をしていたら、ラインが崩れてくるし、横になったら、重力に負けて離れて広がりますよね。少年誌でそれはNGかもしれないけど、モーニングのような青年誌では描ける。だから、身体の描写は徹底的にリアルにこだわりました」

夜鷹の本業は、超一流の殺し屋だ。引退して8年になるとはいえ、敵に襲われたときの野生の勘や身体のキレは衰えを知らず、圧倒的な強さで倒してしまう。そんなアクションシーンでもリアルな描写を心掛けたという。

「アクションシーンに関しては、結構脳内で組み立てています。この右手がこう動くと左手はこうなる……、みたいな。脳みそがオーバーヒートするんじゃないかと思うほど、集中して考えます。アクションシーンは、当然カッコよく描きたいですから、どうしてもくびれとかメリハリがつく部分が出てきてしまうんです。でも、今の夜鷹だったら腰を反っていても下っ腹は出ているし、タンクトップに団子状のシワが刻まれていたりするはず。そういうディテールにはすごくこだわりました」

そんな夜鷹を描くにあたって、モデルとなった実在の人物はいるのだろうか。

あの女優のタンクトップ姿をモデルに

「身体のラインとか、バストとか、参考にさせていただいているグラビアアイドルはいます。彼女はとてもグラマラスなんですけど、ちょっとだらしない感じもあるっていうか。彼女のYouTubeをたまに見て、作画的に参考にさせていただいています。

他にも、30代の女性のタンクトップ姿は、ドラマ『SP 警視庁警備部警護課第四係』(フジテレビ系)に出演していた真木よう子(43)さんを参考にさせていただきました。彼女のキレのあるアクションも、めっちゃカッコいいんですよね」

リアルなフェチズムをとことん追究して生まれた夜鷹。連載を始めて半年近く経つが、これまでを振り返り、イズミダ氏は次のように語ってくれた。

「好きなものを書き続けていたら、ここに行き着いたみたいな感覚ですね。これまでの積み重ねがあるからこそ、描くスピードも速くなるし、こだわりもわかりやすくなっている気がします。描いていて楽しいですからね。このまま続けさせていただけるのなら、『女性とアクション』というテーマで描き続けたいと思っています」

最後に、『夜鷹』の今後の展望を聞いた。

「夜鷹ってキャラクターを楽しんでほしいというのが一番ですね。それこそ、だらしない身体だったり、食べ過ぎちゃうところだったり、かっこいいもダメもしっかり掘り下げていく。その中で、新しいキャラクターも絡んでくる。そして、夜鷹というキャラクターがどう変わっていくか。何が変わらないのか。そういう部分も含めて楽しんでいただけたら嬉しいと思います。公式Xには海外ファンから、〈痩せさせるな〉〈Need more fatter!〉とか結構来ているらしくて。これはちょっと誤算でした(笑)」

はたして、夜鷹は殺し屋組織に復帰するのか!? 痩せてしまうのか……。今後の展開に、乞うご期待!