厚生労働省「今年から年金増えます」一見明るいニュースだが…「年金増額」の裏に潜む、国が知られたくない“不都合な真実”【FPの助言】
厚生労働省の発表によると、令和8年度の年金額は、国民年金が1.9%、厚生年金が2.0%それぞれ増額されるようです。一見明るいニュースに聞こえますが、実はその裏に、国が隠す“不都合な真実”があることはご存じでしょうか。年金増額に潜む落とし穴と、年金に依存せず老後資金を確保する方法をみていきましょう。YouTubeチャンネル登録者数約40万人の鳥海翔FPが解説します。
2026年の「年金改正」の概要
厚生労働省が1月23日付で出したプレスリリース「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」によると、令和8年度の年金額は、国民年金が前年比1.9%、厚生年金が同2.0%増額されるようです。
これにより、今まで受け取っていた年金よりも少し金額が増えるため、「これはいいニュースではないか」と感じる人も多いでしょう。
長年「年金はもらえない」と不安視されてきたなかで、実際に増えるという点は明るい材料に思えます。しかし、ここに国が知られたくない“不都合な真実”があるのです。
不都合な真実とは
実は、2025年の物価は3%上昇しています。これに対して年金の上昇率は2%前後、つまり、実質的な年金額は減少しているのです。この現実を踏まえなければ、改正の恩恵を過大評価してしまうことになります。
では実際、国民はどのくらいの年金を受け取れているのでしょうか。
厚生労働省「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」に基づく平均受給額は以下の通りです。
・国民年金:月5万7,580円
・厚生年金:月14万6,429円
男女別で見ると顕著な差がみえてきます。男性の平均は月16万66円であるのに対し、女性の平均は月10万7,200円と、月6万円近い差が生じているのです。平均14万6,000円という数字自体にはあまり意味がなく、男性にとっては16万円、女性にとっては10万円という感覚で捉えるべきでしょう。
さらに、女性の受給額は厳しい現実があります。月15万円以上を受け取れている女性はわずか10%、月20万円以上はわずか1%しかいません。
また、地域差も無視できないでしょう。
たとえば、神奈川県の厚生年金平均は月16万6,578円であるのに対し、青森県は月12万4,383円となっています。これは現役時代の給与水準に連動して年金が決まるためです。
老後の生活費と不足額は?
総務省「家計調査報告2025年(令和7年)平均結果の概要」によると、高齢夫婦無職世帯の可処分所得は月22万1,544円であるのに対し、支出は月26万3,979円でした。
つまり、月あたり約4万2,000円の不足が発生し、これを30年間続けると約1,500万円の赤字となります。さらに物価上昇を加味すれば、不足額はさらに膨らむでしょう。
ただ、ここで大切なのは「一般論」ではなく「あなたにとって」の数字です。年金制度の最も怖い点は、受け取りを開始してから不足に気づいても手遅れになることです。準備は受け取り開始前に行わなければなりません。
年金を受け取る前に済ませておきたい“事前準備”
まず、自分の受け取れる年金額を正確に把握してください。平均値に頼るのは危険です。
月12万円か14万円か16万円かで、30年間の差額は720万円〜1,440万円にもおよびます。「ねんきん定期便」や年金事務所で自分の具体的な額を確認することが第一歩です。
次に、老後の生活費を明確にしましょう。上記平均は月26万3,979円でしたが、住宅費(持ち家か賃貸か)や車、旅行などの項目によって大きく変わります。
現在所有している通帳をすべて調べて、1年間の実際の支出を算出してください。2026年1月1日の残高から、2025年の手取り収入を差し引いた額が1年間の生活費です。この数字がわかれば、毎月の不足額が明確になります。
不足額がわかったら、次は具体的な対策です。ポイントは3つあります。
1.働く期間を延ばす
65歳で完全リタイアするイメージが強いですが、必ずしも同じ仕事を続ける必要はありません。66歳から70歳まで年間100万円のバイトでも十分です。5年間で500万円確保でき、不足額を大きく軽減できます。好きな仕事やできる仕事を選べば、負担も軽くなるでしょう。
2.支出を削減する
固定費を月2万円下げることができれば、30年間で720万円浮きます。固定費とは、保険やスマートフォンなどの通信費、住宅費などが対象です。ただし、食費や光熱費、自動車保険の対人・対物部分など、命や賠償に関わるものは削ってはいけません。ここの線引きは重要です。
540万円が1,248万円に!?…お金の“寿命を延ばす”カラクリ
3.資産形成をする
資産形成は、早ければ早いほど効果的です。仮に50歳から15年間、月3万円を積立投資(年間利回り5%想定)すると、65歳時点でこれまでに積み立てた元本540万円が、約800万円になっています。
この800万円を65歳以降、毎月取り崩しながら運用を続けるとしましょう。すると、毎月の可処分所得を増やしながら、65歳時点で800万円だった資産をさらに増やせるのです。
たとえば800万円を20年間に分けて、年間利回り5%で運用されながら取り崩していくとしましょう。この場合、毎月5万2,000円受け取ることができます。
こうすることで何が起きるかというと、5万2,000円×12ヵ月×20年間で、当初の540万円が最終的に「総額1,248万円(差額708万円)」になるのです。
このように、運用を続けながら取り崩すことで、単に貯めるよりも大きな効果が得られます。
年金だけでは頼りないから…自ら動いて老後資金を確保しよう
ここまでみてきたように、働くことでプラス500万円、支出削減で720万円、資産形成で708万円――これらを合わせると、最大で「1,928万円」の不足を埋められる可能性があります。
年金だけに頼るのではなく、自分にとっての不足額を把握し、上記の3つの対策を組み合わせることで、老後の不安を大幅に軽減することが可能なのです。
年金制度は残酷な面もありますが、受け取り開始前に準備をすれば十分に対策できます。ぜひ今日から自分の数字を計算し、具体的な行動を始めてみてはいかがでしょうか。
鳥海 翔
株式会社Challenger代表取締役
FP(ファイナンシャル・プランナー)/投資家
