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交際していた彼女から「誠意を形にしてほしい」と金銭を求められ、戸惑っている──。

数カ月間、遠距離恋愛を続けてきたという男性から、弁護士ドットコムにこんな相談が寄せられました。

相談によると、同居の話が進まないことや、連絡の頻度をめぐるすれ違いから関係は破綻。別れ話の後、同居のために仕事を辞めていた女性から「誠意がなく、不安になった」「謝罪だけでは済まない。気持ちを形にしてほしい」と言われ、いわゆる“手切れ金”の支払いをほのめかされたといいます。

男性は彼女が訪れる際の交通費やデート代のほとんどを負担していたとのことです。ホワイトデーにはブランド品を求められ、金銭感覚の違いから口論になったこともあったといいます。

ただ、男性は婚約指輪を贈ったわけでも、両親に紹介したわけでもなく、これ以上の支払い義務があるのか判断がつかず、悩んでいる状況です。

恋愛関係の解消に際し、相手から金銭を求められた場合、どこまで応じる必要があるのでしょうか。男女の問題にくわしい古関俊祐弁護士に聞きました。

●「手切れ金」支払う法的義務はない

──交際や同居の約束があったとしても、婚約や指輪の贈与、親への紹介がない場合、別れに際して男性が女性に「手切れ金」を支払う義務はあるのでしょうか。

男女交際を終了させるための「手切れ金」は、法律上認められている制度ではなく、男性が女性に支払う法的義務はありません。

ただし、将来的な結婚の約束をしていたり、女性の引っ越しに男性の誘いや関与が認められる場合には、男性の一方的な交際終了によって女性が損害を受けたとして損害賠償責任が認められる余地もあります。

その場合、「手切れ金」という名目ではありませんが、結果として男性が一定の金銭を支払う必要が生じる可能性はあります。

●金銭要求がエスカレートすれば刑事責任の可能性も

──「気持ちを形にしてほしい」など、明確な根拠を示さずに金銭を求め続ける行為は、法的に問題となる可能性はあるのでしょうか。

交際を解消するにあたって、金銭の支払いを求めること自体は、法的義務の有無とは別に、直ちに違法とはいえません。

ただし、男性が支払いを拒否しているにもかかわらず請求がエスカレートし、危害を加えるような言動を伴う場合には、恐喝罪や強要罪など刑事責任が問われる可能性があります。

また、元交際相手に対して執拗に連絡を繰り返したり、つきまとい行為をした場合には、ストーカー規制法に抵触する可能性もあります。

●交際中のプレゼント代の返還請求は難しい

──逆に、交際中に男性が負担してきた交通費や贈答品代などについて、返還を求めることはできるのでしょうか。

交際中に支払った金銭やプレゼントした物品は、原則として贈与にあたるので、返還請求はできないと考えられます。

将来の結婚を前提として支払った金銭であり、女性側の事情で婚約を解消したような場合には返還が認められる余地もありますが、一般的には返還が認められる可能性は低いでしょう。

●金銭だけでなく「気持ち」の問題か見極める

──こうしたケースでは、男性はどのように対応すべきでしょうか。

まず、彼女が何に対して怒りや不満を感じているのかを冷静に考えることが重要でしょう。目的が本当にお金なのか、それとも気持ちの問題なのかを見極める必要があります。

もし将来を期待させるような言動をしていたにもかかわらず、不誠実な形で別れを切り出したのであれば、彼女が怒りを感じるのも理解できる部分はあるでしょう。

法律上は金銭を払う義務がなくても、対応に不誠実な点があったと自覚するのであれば、きちんと謝罪し、彼女の気持ちに向き合うのも優しさでしょう。場合によっては、金銭的な解決によって関係を穏やかに終わらせるという選択肢もあり得ます。

また、交際相手のためにお金を使うことが、本当に優しさや誠意なのかを改めて考える機会になるかもしれません。お金をかけなくても示せる優しさや誠意を大切にできる人であれば、「誠意を形にしてほしい」と金銭を求められるような関係には、そもそもなりにくいのではないでしょうか。

それが、素敵な男性になるためのステップなのかなと思います。

【取材協力弁護士】
古関 俊祐(こせき・しゅんすけ)弁護士
江戸川区出身。2009年3月、中央大学法学部卒業。2011年3月、明治大学法科大学院修了。 同年9月、司法試験合格。2012年12月、弁護士登録(東京弁護士会所属)。2017年、新小岩法律事務所開設を経て弁護士法人HAL代表弁護士に就任。
事務所名:弁護士法人HAL秋葉原本部
事務所URL:https://hallaw.jp/