今や完全に“徳島の男”になった柿谷。J1昇格に全力を注ぐ覚悟だ。(C)TOKUSHIMA VORTIS

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 今季7シーズンぶりにJ2の舞台で戦っている柿谷曜一朗(徳島)だが、かつての仲間が数多くプレーしているJ1の動向は常に注視している。

「今季のJリーグを見ると、J1もJ2も似たようなタイプのチームが上位にいるっていう印象かな。J1の神戸、J2の町田なんかは縦に速いサッカーをしているよね。J1は川崎が躓いている分、違うチームの躍進が目立つ感じだけど、やっぱり神戸が別格だと感じる。サコ(大迫勇也)とヨッチ(武藤嘉紀)の前線の迫力はホンマに凄いと思うよね。

 でも、下位に沈んでるチームも魅力的なサッカーをしてるところが多い。それはJ2も同じで、J3から上がってきた藤枝なんかは選手たちがすごく伸び伸びした戦いをしているし、クラブとしての未来は明るいんちゃうかなって感じますね」と、柿谷は神妙な面持ちでコメントしていた。

 育成時代から20年以上を過ごし、長く身近で接してきた小菊昭雄監督率いるセレッソ大阪のことは、もちろん注目している。

「小菊さんのサッカーが浸透してて、それプラス、(香川)真司君がおるってことで、メンタル的にかなり安定した戦いができると思う。今年こそ何とかタイトルって意気込んでるだろうし、難しいかもしれないけど、ホンマに心の底から応援してます」と古巣にエールを送っていた。
 
 とりわけ、新人時代を共に過ごし、柿谷の先を進んでいった香川の動向は大いに気になるはず。2019年夏以降のサラゴサ、PAOK、シント=トロイデンで不遇を味わった彼がここまで完全復活を遂げるとは、多少なりとも驚きがある様子だ。

「真司君はポジションが下がったとはいえ、ここまでやれるっていうのはたぶん自分でもびっくりしてるんじゃないかな(笑)。2021年の夏にスペインから戻ってきた乾(貴士/清水)君はバリバリやるつもりで帰ってきただろうけど、真司君はどこか半信半疑の部分はあったかもしれないから。

 ただ、真司君が凄いのは前から分かっていること。自分もかつてセレッソの8番をつけてキャプテンもやってましたけど、真司君は俺と比べたらあかんレベルの人。みんなよう比べてくれてラッキーやなって思うけど、彼の経歴を見てからお話ししてくれよって言いたいですもん(苦笑)。乾君もそうやけど、真司君は『世界の香川』やからね。その彼がセレッソに戻って8番をつけてるわけやから、覚悟を持って戦ってると思いますよ」と、柿谷らしい言い回しで最大級のリスペクトを表現していた。

 そういった発言ができるのも、完全にセレッソ時代に決別できた証でもあるのだろう。本人も「名古屋に行って最初の頃は、まだいろいろ思うところはあったけど、2021年のルヴァンカップでセレッソに勝って優勝した時点で吹っ切れた。今はもう客観的に見れるようになった」とキッパリ言い切り、今は「徳島の男」としてチームのJ1昇格に全力を注ぐ覚悟だ。

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 今のJリーグを見ると、柿谷の言うようにどのカテゴリーも上位から下位の差がなく、拮抗したリーグになっている。それと同時に、20代のトップ選手がこぞって欧州に行ってしまい、スター不在が懸念されるところもある。90年代〜2000年代のJリーグの盛り上がりを記憶している柿谷にしてみれば、現状が少し寂しく映る部分もあるようだ。

「俺らはJリーグを見て育ってるから、『Jリーグで活躍したい』というのはすごくあったし、『Jリーグのチームを強くしたい』って気持ちも強かった。特にセレッソは当時、そんなに強くなかったから『自分が入って優勝させたい』と真剣に思ってた。

 それに各チームにスター選手が3〜4人はおったし、そういう選手に憧れていた。そんな時代に比べると、今はスター不在は否めない。若手でも海外移籍ができる時代になったし、Jリーグに入っても数年で欧州に行きたいと考える選手も多いからね」

 しみじみとこう語る柿谷。実は彼自身も2007年U-17ワールドカップのフランス戦で超ロングシュートを決めたあと、レアル・マドリードやバルセロナといった超ビッグクラブのセカンドチーム入りの話が舞い込んだ様子だ。だが、本気で行こうとは考えられなかったという。

「10代でいきなり海外なんて怖かったし、自分がやっていけるなんて到底、思えなかった。でも今は高校からすぐに欧州へ行く選手もいるよね。福田師王とは名古屋の練習参加の時に一緒にやりましたけど、迷わずボルシアMGのU-19チームに行く決断をした。同じクラブに板倉(滉)君がいるとか環境も大きいのかもしれないけど、本当に俺たちの若い頃とは感覚が全く違うよね。

 そういった流れになっている分、Jリーグでは30代のベテランが頑張らなきゃいけないのかもしれない。正直、賞味期限が切れそうだけど(苦笑)、上手く引っ張っていければいいよね」と、柿谷は冗談交じりに前を見据えていた。
 
 直近の7月9日にはファジアーノ岡山とのホームゲームがあるが、この日は徳島県民の小中高生無料という大がかりな取り組みが行なわれる特別なゲーム。2011年まで徳島に在籍した柿谷のことを知らない子どもたちも数多く来場する見通しで、改めて彼の存在価値を再認識させる絶好の機会になるだろう。

「岡山は2011年の最終戦で勝てなくてJ1昇格を逃したり、セレッソ時代の2016年にプレーオフ決勝で勝って上がったりと、いろんな因縁のあるチーム。今年のU-20ワールドカップに参戦した佐野航大とか坂本一彩もいるし、長身の櫻川ソロモンやルカオもいますよね。ルカオはセレッソで一緒にやったリカルド・サントスにメッチャ似てる。そういう意味でも要注意ですね。

 ウチのセンターバックは高さがない分、大型フォワードの2人は特に警戒しなきゃいけない。今年の徳島は失点数が多いんで、何とかそれを減らして、上位浮上のきっかけを掴まないといけない。そういう意味でも非常に大事な試合になると思う。自分もゴールという結果でチームを勝たせたいと思います」

 30代になったからこそ、できることがある。それを今の柿谷は示せるはず。ベテランのスター選手の存在感と影響力をここ一番で発揮し、Jリーグの魅力を発信する急先鋒になってほしいものである。

※第2回終了(全3回)

取材・文●元川悦子(フリーライター)