イスラエルの国立ウミガメ救助センターでは、原油流出事故の被害にあった絶滅危惧種のウミガメを治療するために、「マヨネーズ」が使用さえています。

In Israel, mayo provides miracle for endangered turtles

https://apnews.com/article/mayonnaise-help-turtles-oil-spills-c5f679439e7a0f95fb79384978944cde

Why rescuers are feeding turtles mayonnaise after a disastrous oil spill | Live Science

https://www.livescience.com/mayonnaise-sea-turtle-treatment-after-isreal-oil-spill.html

パレスチナ・ガザ地区近くのニッツァニムからレバノンに隣接するまでの海岸沿い106マイル(170km)にもおよぶエリアで、同国史上最大規模の原油流出事故が発生したと報じられています。最初に地元メディアが事故について報じたのは2021年2月17日(水)頃で、海外メディアのFox Newsが同事故について報じた22日時点でも海岸沿いのエリアは依然としてタールに覆われたままだそうです。

タールで汚染された海岸沿いの様子は以下のムービーで確認できます。

Tar globs pollute Israel's coast after oil spill - BBC News - YouTube

イスラエルの自然保護区および国立公園を管轄するイスラエル自然・公園局は、今回の原油流出事故について「これまで見た中で最も深刻な生態学的災害のひとつ」としており、流出した数百トンもの石油がウミガメなどの生物に深刻な被害をもたらすと警鐘を鳴らしています。

海岸沿いを覆うタールに汚染されたウミガメの多くが漂着しており、一部は死亡が確認されています。そんな中、イスラエルの国立ウミガメ救助センターは絶滅危惧種であるアオウミガメを11頭保護し、治療のためにテルアビブの北にあるミクモレットの施設に輸送したそうです。

国立ウミガメ救助センターの医療助手であるGuy Ivgy氏は、AP通信の取材に対して「アオウミガメたちはタールまみれの状態でやってきました。内外の気管にはすべてタールが詰まっていました」と答えています。そして、アオウミガメの消化器官からタールを取り除くために、医療チームはマヨネーズに目を付けました。マヨネーズを使ってタールを除去するというアイデアについて、「気管をきれいにして、タールを分解し、カメが吐き出すことを可能にするためです」とIvgy氏は説明しています。



マヨネーズは水分と油という、通常は混ざることのない2つの物質が混ざったエマルションです。マヨネーズの場合、成分の約50%が水分である卵黄と、レモンジュースや酢などの酸性の液体を勢い良く泡立て、そこにゆっくりと油をそそいで混ぜ合わせることで完成します。

マヨネーズの卵黄にはレシチンと呼ばれる機能性脂質が含まれており、これのおかげで油滴は水中に浮遊したままとなります。分子は親水性である場合は水に付着し、疎水性である場合は水をはじくことができますが、マヨネーズの場合はレシチン分子が油滴を覆っているため、水と油が互いに反発して分離してしまうことはないわけです。

こういった特殊な成り立ちとなっているため、マヨネーズは親水性と疎水性の両方の特性を持っています。そのため、カメの消化器官内に詰まった疎水性のタールとマヨネーズを混ぜることで、タールの成分が薄くなり、粘度も下がります。これによりタールが水に溶けやすくなり、粘着性も低くなるため、消化器官から除去しやすくなるというわけです。



なお、原油で汚れたカメを救うためにマヨネーズを使った事例は今回が初めてではありません。2014年に公開された論文でも、スプーン1杯分のマヨネーズでタールに汚染されたウミガメの腸を洗い流したという事例が報告されています。