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アジア大会ではオリンピックより多い43競技が行われますが、注目するのは独自競技の「武術太極拳」。健康法のイメージと違う武術の太極拳とは。競技に打ち込む1人の若者を追いました。

【写真を見る】わずかなミスが“命取り”に 健康法のイメージが一変… 力強く華麗な技の数々 アジア大会注目の「武術太極拳」

9月に開幕するアジア大会。魅力の1つは、オリンピックにはない独自競技の数々です。その一つが「武術太極拳」。太極拳といえば、円を描くようにゆったり動く健康法のイメージがありますが、元は17世紀の中国で生まれた護身用の武術。本来速い動きです。

競技としての「武術太極拳」はそれに加え、直線的な突きや蹴りが特徴の「長拳」。低い構えからの攻撃と大きな発声が特徴の「南拳」。更に刀や槍など武器による演武など、伝統的な中国武術の数々が含まれます。

国内の競技人口は約7万人 アジア大会代表の有力候補は21歳大学生

日本でも盛んで、国体の競技にもなっている武術太極拳。競技人口は7万人ほどです。そのトップ選手の1人が愛知にいます。

名古屋市出身の田中駿志選手21歳。ジュニアオリンピック銀メダルや国体2連覇の実績をもつ、アジア大会代表の有力候補。いまは大学生で、名古屋と岐阜にある2つの道場を拠点に研鑽を積んでいます。

道場に張り詰める緊張感。そして、手と手を打ち鳴らす乾いた音。この日は、アジア大会の選考会に向けた、最終調整のさなかでした。

元が中国発祥ということもあり、アジア大会は「最高峰の競技会」。まだ出場できたことはありません。

鋭い蹴り・跳躍の“長拳” 技の完成度を競う

田中選手の専門は、鋭い蹴りや跳躍が特徴の「長拳」。一連の決められた「型」を行い、その正確さや美しさを競います。

(田中選手のコーチ 下起悦郎さん)
「『武術を学ぶ者まず長拳をせよ』という流れがあり、子どもがまずやる種目なので非常に人気が高い。“身一つ”だけで伸びやかに表現するところが魅力的」

空中で体を回転させながら足を叩く技や、高く飛んでの回し蹴りなど、高い身体能力が求められる「花形種目」です。

「これやりたい」始めたきっかけは“カンフー映画”

田中選手が、武術太極拳を始めたのは小学2年生。少年がカンフーの修行を通じて成長する映画を見たのがきっかけでした。

(田中駿志選手)
「映画を見て、“うわ これやりたいなと”。すぐに親に伝え、道場を探してもらって始めた」

7歳で競技を始めて15年。他のスポーツには目もくれず、武術太極拳一本でやってきましたが、大学入学前に一度競技から離れた時期もありました。

(田中選手)
「大学生活でサークルで遊びたいなとか、学生時代を謳歌したいなという思いがあった」

離れた期間は1年近く。しかし、コーチからの呼びかけもあり、競技に復帰しました。

(田中選手)
「日が経つにつれて刺激が足りない。すごく無駄にしている気がして」

10点満点で採点 ほんの少しのミスが“命取り”に

調整も最終段階に入った選考会4日前。道場には、演武の動きを入念に確認する2人の姿がありました。

武術太極拳は上限のある採点競技。10点満点で採点されるため、ほんの少しのミスが大きな差につながり、勝敗を分けることに…

(下起コーチ)
「(ほかの競技であれば)少し着地で揺れたりしても、表彰台に残っていたりするが、武術太極拳の場合はそういったことは“まれ”」

限りなくミスに厳しいこの競技。そこには、武術ならではの理由がありました。

(下起コーチ)
「刀などの武器を持って対戦(実戦)していた時は、ミスはものすごく命取りだったと思う。武術が本来持ち合わせている緊張感が残っていて、おもしろい」

さらに、大会では90秒の演武が一度だけ。小さなミス1つが、文字通り“命取り”になります。

日本代表を目指し 競技人生をかけた90秒の「戦い」

迎えた、最終選考会当日。

(田中選手)
「身体的にも精神的にも完璧な状態。100%でいうと…140%くらい」

会場は、アジア大会本番と同じ愛知県武道館。田中選手が代表の座を勝ち取るには、ここでの優勝が必須条件。

競技人生をかけた90秒の「戦い」の始まりです。

「体力の限界がくるまでやりたい」最終選考の結果は?

まずは、一番の大技である720度の回転技を見事、成功させます。

その後も、練習通り正確さと力強さを見せていきます。

しかし、回し蹴りの着地でほんのわずかに足のぐらつきが…これがどう影響するのか。

たった1つの着地ミスが響き、田中選手は僅差の4位に終わりました。

(田中選手)
「応援してくれた人や家族やコーチ・仲間に申し訳ないというか、情けない気持ちがあります。このスポーツがあっての僕だと思うので、いつかは体力的にも限界がくると思うが、その限界がくるまでやりたいと思っている」

力強く華麗な技が魅力の武術太極拳。アジア大会本番でも、その迫力に期待です。