『虎に翼』スピンオフは、人気キャラが主人公の“ハードボイルド”。「夜の放送ならでは」の表現はあるのか? 制作統括が語る
まず、尾崎氏は「朝ドラの放送終了直後にスピンオフが放送されることは結構ありますが、今回のように放送からある程度時間が空いてから放送されるのは珍しいと思います」とスピンオフドラマが制作された経緯を振り返る。
「『虎に翼』を当時は全力で作っていて、スピンオフを作る余裕はありませんでした。放送が終わった後に、スピンオフを期待してくれる人の声が多く、脚本を担当されていた吉田恵里香さんに相談したところ、『よねと轟の法律事務所の物語なら面白いものができそう』という話になり、その2人をメインにしたスピンオフを作ることになりました」
本作は“山田轟”法律事務所の物語ではあるが、中盤まではよね1人にスポットライトが当たりながら進行していく。その理由として「『どのキャラクターが主人公になっても、スピンオフドラマは書けると思います。だけどこのドラマでは、よねの話をしっかり描きたい』ということを吉田さんが話していて、そこから轟がバディとして加わる』という方向になりました」と説明する。
また、戦後の1945年が舞台となっているが、この時代を選んだ理由については「『虎に翼』では寅子(伊藤沙莉)の目線で描いたのですが、描き切れなかった部分もあり、また『よねが戦後をどう生きていたのかを見たい』という思いがありました」と語った。
◆ハードボイルドでザラザラしたタッチ
本ドラマの作中の空気はかなりどんよりとしている。『虎に翼』のスピンオフドラマとは思えない雰囲気ではあるが、尾崎氏は「それは、よねの視点で描いているからです」という。
「『スピンオフだからタッチを変えよう』ということではなく、よねが主人公ですので、よねが見ている世界、その世界から感じている心情を汲み取った結果、今回の空気感ができあがりました。朝ドラの時でも重いシーンはありましたが、よねが作品の中心になっているので、そこがより強調されたのかなと思います。
だから、朝ドラの時よりもタッチはザラザラしていて、ハードボイルドな様相です。具体的には、撮影時の照明でリアルな表現をしたり、ロケセットでも手触り感が見えるような映像にしたりするなど、チームで話し合いました」
寅子は比較的家柄に恵まれ、両親から愛情を注がれて育った。一方、よねは家が貧しく、親に女郎として売られそうになった過去を持つ。希望や愛情に触れてこなかったよねが主人公だからこそ生まれた空気感なのだろう。
◆「夜だからこそ」の表現はあったのか
朝ドラは“老若男女問わず楽しめる作品”というイメージが根強いが、夜に放送される今回のスピンオフは、気軽に楽しむには少々重々しい内容な気もする。朝ドラを意識して抑えたこと、あるいは朝ドラとの棲み分けのようなものはあったのだろうか。
「『伝えたいことを描く』ということを大切にしていたので、『朝ドラのスピンオフだからある程度は自重しよう』『今回は朝ドラじゃないから攻めたことをしよう』といった、何かしらの線引きをすることはありませんでした」
『虎に翼』の放送中、いろいろな声がSNSに寄せられていたが、真っすぐに伝えたいことを描いているからこそ、今回のスピンオフも放送後には大きな反響が寄せられそうだ。尾崎氏はSNSの反応について「社会的なものも含め、さまざまなテーマを背負っているドラマなので、当然いろいろなリアクションはあるのかなと。『SNSが荒れるから止めよう』『荒らしてやろう』という様な考えはありません。いろいろな意見が寄せられるのはありがたいなと思っています。」と話した。

