加藤綾菜「正論で説得しても角が立つから」夫・加藤茶が75歳で「免許返納」きっかけは高齢ドライバーの事故ニュース
「旦那さんが返納したら後に続く人が出るかもしれない」。まだ運転免許の自主返納が今ほど注目されていなかった7年前、加藤綾菜さんは夫婦で高齢ドライバーの事故ニュースを見たことを機に話し合いをし、夫・茶さんは75歳で免許返納を決断します。代わりに、綾菜さんが免許を取得すると、夫婦の生活にも予想外の効果があって── 。
【写真】カトちゃんの代わりに35歳で免許返納「ハンドル握る姿が凛々しい」綾菜さん(全15枚)
2019年に夫が75歳で免許を「自主返納」
── 2019年、夫の加藤茶さんが75歳のときに車の免許を返納されました。夫婦で何か話し合いはされたのでしょうか?
綾菜さん:高齢ドライバーの事故のニュースなどを一緒に見て、「そろそろ免許を返したほうがいいね」と話していました。当時はまだ高齢者が免許を返納した話はほとんど聞きませんでしたが、旦那さんが返納したら「自分も返納しようかな」と思う人がいるかもしれないね、と言っていて。
── 免許を返納する前は、旦那さんが運転する車で出かけることはありましたか?
綾菜さん:旦那さんが60歳くらいまでは、自分で運転してよくドライブしていたようですが、私と結婚したときはすでに68歳だったので、運転は控えていたと思います。旦那さんの運転するスポーツカーで出かけたのは1、2回くらい。でも、車庫に車を並べて見ているだけで楽しかったみたいですね。
── 運転はしなくても、免許返納すると身分証明をするものがなくなると、躊躇する人もいるそうですね。
綾菜さん:その場合は「運転経歴証明書」というものがあるんです。運転免許を返納した人が申請して取得できて、身分証明書としても使えて旦那さんも取得したので特に困ってないですね。
── いっぽう、綾菜さんは35歳のときに免許を取得されました。
綾菜さん:はい。大学生の頃は都内の大学に通っていたので電車で移動をしていました。23歳で結婚した当時も、旦那さんには専属ドライバーさんがいたので、「免許は取らなくていいよ」と言われていたんです。
ドライバーさんは自宅近くに住み、24時間365日待機。呼んだらすぐ駆けつけてくれるのですが、おかげで新婚当初からどこにいくにもずっと3人なんですよね。近所はもちろん、旅行に行くのも必ず3人なので、どうしても気を遣ってしまって。
それに、24時間待機といっても、時間帯によってはドライバーさんがお酒を飲んでいたり、たまたま遠出していることもありますよね。例えば旦那さんが体調を急に崩したときに、「すみません」と対応いただけないこともあったので、それなら自分が免許を取ったほうがいろいろスムーズだなと思ったんです。
妻の免許取得で変わった夫「コンビニも初体験し」
── 自分のタイミングで動けますしね。免許取得後はどんなところに行きましたか?
加藤さん:今は、2か月に1回くらい温泉に行きます。旦那さんは仕事で世界中いろいろな場所を巡っていますが、「プライベートで温泉に行ってゆっくりお湯に浸かったことがない」と言っていたので。旦那さんの体力も考えて、今は関東近郊の辺りを回っています。
免許を取ったことで、スーパーにも一緒に行くようになりました。旦那さんは20代の頃からずっと忙しくて、お手伝いさんが家のこともやっていたので、私と結婚するまでコンビニすら行ったことがなくて。スーパーやドラッグストア、ドン・キホーテも私が免許を取った後に一緒に行ったのが初めてだったようです。「こんなにお菓子があるんだ!」「見たことはあるけど入ったことはないから感動する」と言っていました。自分で選べるのも楽しかったみたいです。
私は、以前は自転車に乗って1人で買い物に行っていましたが、今は2人で楽しめるようになったので、それが嬉しいです。
── 綾菜さんの免許によってライフスタイルが変わりそうですね。
綾菜さん:そうなんです。洋服を買うのも以前は百貨店の方が自宅にいらっしゃってそこで選ぶか、自分でデザインしたものを作ってもらっていましたが、今は一緒に百貨店に行って自分で選びますし。
あと、外に出たほうが歩くんですよね。家に居たら動かないし、仕事に行くとスタッフさんが気を遣ってすぐに椅子を用意してくださるんです。80代だし、無理をさせないように、怪我をさせないようにってかなり気を遣ってくださっているようですが、私からしたら、健康のためにどんどん歩かせてほしいなって思ったり。
── 適度に動いたほうが体にもいいですしね。
綾菜さん:はい。休みの日はドライブがてら公園に行って、愛犬と一緒に遊んで体を動かしています。そんな小さなことが今はとても幸せです。
高齢者の「免許返納」正論だけでは角が立つから
── 旦那さんとは免許返納に対してスムーズに話が進んだようですが、人によってはプライドが傷つくとか、素直に受け入れられない人もいるかと思います。もし、旦那さんが免許返納に気が進まなかったとしたら、綾菜さんだったらどう説明をしたと思いますか?
綾菜さん:家族が正論で説得しても、言われたほうは嫌がると思うんですよ。「まだ大丈夫」って。
私だったら高齢ドライバーのニュースや動画を調べて一緒に見ます。「ちーたん、ちょっと来て」と声をかけて、事故の危険性とか専門家の意見を知るきっかけを作るんです。すると、「やっぱり怖いな。自分も判断能力が鈍っているかもな」と、高齢者の運転リスクを自分ごととして捉えられるようになり、「じゃあ返納するか」と。私が直接言うよりも、そのほうが効果的だと思うんですよね。
免許返納に関しては、居住地域によっては代替の移動手段がないなど、他にも現実的な課題はあります。でも、事故を少しでも防ぐためにも、自分が伝えられることは伝えていけたら、と思っています。
取材・文:松永怜 写真:加藤綾菜

