映画『90メートル』で親子を演じた山時聡真&菅野美穂…山時が稽古の時に見た菅野の「100%の演技」に感動した理由
難病を抱えた母と介護に葛藤する息子の絆を描く
3月27日に公開した映画『90メートル』でW主演を務める山時聡真(20歳)と菅野美穂(48歳)。二人が演じたのは、難病を抱えるシングルマザーの美咲と、介護のために夢を諦めかける息子・佑(たすく)。複雑な感情を抱えながらも、互いを想い合う親子の絆を見事に表現した。
撮影のなかで、菅野は美咲の姿を親としての自分に重ねたという。
「美咲は、息子にしてあげたいことを息子にしてもらわなきゃいけない葛藤を抱えている。それでも明るく振舞う姿は、演じながら見習うべきものがありました。
親になった今、同じ状況になったとき『自分にできるかな』と不安になりますが、目の前のことを一生懸命やろうと勇気づけられました」
かんの・みほ/1977年生まれ、埼玉県出身。1993年、『ツインズ教師』(テレビ朝日系)の生徒役で女優デビュー。ドラマ『大奥』『働きマン』で主演を務めるなど、代表作多数。
一方の山時は、脚本を読んだ当初の印象をこう振り返る。
「親の気持ちも、子の気持ちもどちらもわかるし、でもそれに正解がない。最初は重たい話なのかなと思って読み進めていたら、いろんな人の優しさを感じる、すごく温かい作品でした」
さんとき・そうま/2005年生まれ、東京都出身。2016年、映画『ゆずの葉ゆれて』で俳優デビュー。2023年に公開されたアニメ映画『君たちはどう生きるか』で主人公・眞人の声を担当し話題になった。
本作は、監督の中川駿氏自身の体験がもとになっている半自伝的作品だ。山時と菅野は、監督のもと介護の練習も重ねた。
「監督は基本的に任せてくださりながら、自分がしっくりこないときは、何度もトライさせてくれました。悪い雰囲気にならないやり方をしてくださって、とてもありがたかったです」(菅野)
頼りになる“母親”のような存在
山時は監督から印象的な言葉をかけられたという。
「佑役を演じるにあたって、監督と僕が似ていると言われました。それで、思うがまま自由にやってみようという気持ちになれた。この年齢の僕だからこそできるんだという覚悟を持って挑みました」(山時)
休憩中には豚汁をみんなで囲んで食べるなど、現場にはあたたかな空気が流れていたという。菅野は山時について、次のように語る。
「柔らかくて話しかけやすいし、うちの息子が将来こうならなってほしいな、ならないだろうな、と思うくらい優しい方でした」
一方、山時は俳優としての大先輩である菅野の演技を振り返る。
「美咲の佑に対する接し方には、菅野さんがお母さんとして、また先輩俳優として自分に接してくれた空気感がそのまま表れていました。
菅野さんは稽古のときから100%の力で芝居をされていて、僕はそこに食らいついていくだけだと感じるくらい、頼りになる“母親”のような存在でした」
その言葉を聞いて、菅野は照れくさそうに返す。山時の言葉を聞きながら、菅野は静かに、しかし確かな言葉で語る。
「本作のテーマは、誰もが向き合わなければならない、でも答えの出ないものだと思います。その複雑さを、少しでも多くの人に伝えられる表現ができていれば嬉しいです」
『90メートル』絶賛公開中
小学生の頃からバスケットボール一筋だった佑。母・美咲が難病を患ったことで、母子家庭で育った佑は高校2年のときにバスケを辞め、美咲の世話を優先せざるを得なくなる。ヘルパーの支援はあるものの 24 時間体制ではないため、佑が美咲のケアをしながら家事をこなす日々を送っていた。高校 3 年生になった今、東京の大学に進学したい気持ちはあるが、美咲を一人にするわけにはいかず、常に手元にある呼び出しチャイムの音が、佑の心を引き留める。その看病が一生続くかのように、自分の夢や希望はすべて諦めかけていたが、担任の先生から自己推薦での受験を勧められる。しかし、日に日に身体の自由を失っていく美咲の姿を見ると、上京したい気持ちを打ち明けられずにいた。そんなある日、介護施設のケアマネジャー・下村からヘルパーの増員により 24 時間ケアの体制が整ったことを告げられる。我が子の明るい未来を願う美咲は「お母さん、大丈夫だから。好きなようにしていいからね」と優しく声をかけるが──。
出演:山時聡真、菅野美穂、南琴奈、田中偉登、西野七瀬
監督・脚本:中川駿
撮影/岡本隆史 スタイリスト/青木千加子、西村咲喜 ヘアメイク/岡野瑞恵(storm)、郄橋幸一(Nestation) 衣装協力/レキップ クチュリエ(黒ジャケット、白ブラウス)、TASAKI(ジュエリー)
