辰巳社長(右)と旧赤田金型の赤田前社長

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 辰巳工業(大阪府茨木市、辰巳毅社長、072・649・2341)は、農業機械部品などのダイカスト金型を手がける赤田金型製作所(同市)の事業を承継した。後継者難に伴う赤田金型は清算し、全従業員の雇用と顧客基盤を受け継ぎ、辰巳工業の「金型事業部」として11月から本格的に再始動した。金型のノウハウを取り込む辰巳工業は、主力の砂型鋳造による鋳物部品の一貫製造など事業シナジー(相乗効果)の拡大につなげる。

人・技術 円滑に融合 鋳造品でシナジー 
 辰巳工業は2019年、本社工場の対面に新工場と研究用ラボを稼働した。新工場に隣接する赤田金型の土地約1500平方メートル、工場棟などの建物(延べ床面積約1000平方メートル)、機械設備を旧赤田金型の創業家から取得。取得額は非公表だが1億円程度とみられる。

 事業承継は「健康診断の共同実施など“お隣さん”としての付き合いはあった。前社長から後継者難を聞いた立ち話が契機」(辰巳社長)になったという。「(廃業になれば)取引先にも迷惑をかける。若手社員も多い辰巳工業とうまく融合できれば」と、現在は辰巳工業の金型事業部社員となる旧赤田金型の赤田和男前社長は話す。

 辰巳工業は砂型鋳造で木型を使う。旧赤田金型のアルミニウムダイカストの金型加工と組み立てのノウハウが「分野は違うが応用が可能」(辰巳社長)と見る。旧赤田金型はフライス盤やプレス機などの設備をそろえ、大型の金型の修繕ができる強みもある。辰巳工業は自前の鋳造技術との融合で今後は完成度の高い鋳造部品の一貫製造体制構築を狙う。

 経済産業省の調べによると、今後10年間で平均引退年齢の70歳超となる中小・小規模事業者の経営者は約245万人に達する見込み。約半数が後継者未定とされる。辰巳工業のような“お隣さん”同士の事業承継はユニークな事例といえる。旧赤田金型は1950年創業。18年8月期売上高は約1億円。