【小林 雅一】なんと500万件以上のアカウントが凍結…「16歳未満SNS禁止」のオーストラリアで横行する子どもたちの脱法手口

写真拡大 (全2枚)

イギリスのキア・スターマー首相は先週、16歳未満の子供を対象にソーシャル・メディア(SNS)の利用を全面禁止する方針を発表した。

昨年12月、オーストラリアが世界で初めて子供のSNS利用を法律で禁止して以降、欧州や東南アジアを中心に次々と同様の政策が発表されている。世界的な潮流が形成される中、日本も否応無く対応を迫られている。

オーストラリアよりも厳しいイギリスの法案

スターマー首相(イギリス政府)が先週発表したのは、ネット上の有害なコンテンツや過剰なスクリーン・タイム(スマホ利用時間)、さらにオンラインいじめ等から子供達を守るための政策だ。これは先行するオーストラリアと同じく新法による規制で、今年中の法案可決、来年(2027年)春の法律施行を目指している。

この新法では「実効性の確保」を主眼に、厳格な年齢確認システムが導入される予定だ。また「SNSの全面禁止」に加えて、子供が保護者の監督無しにオンライン・ゲームやライブ配信プラットフォームなどで見知らぬ人達とやり取りすることを予防する措置も導入される。

同法の規制対象(禁止対象)となる主なプラットフォームは「フェイスブック」、「インスタグラム」、「ユーチューブ」、「TikTok」、「X(旧ツイッター)」など大手10社が提供するもの。他方、教育目的の「Google Classroom」や子供向けの「ユーチューブ・キッズ」などは禁止の対象外となる。

また欧米で人気のメッセージング・アプリ「WhatsApp」や、(ちょっと奇妙な感じもするが)秘匿性が高く危険な印象もある「シグナル」なども禁止の対象外となるという。

イギリス政府によれば、その理由はまず今回の規制の主な目的が「子供の脳に中毒性を引き起こす(SNSの)アルゴリズム」の禁止にあること。また「十代の子供達が(緊急の場合などに)家族や学校関係者、友人らと連絡し合うための『デジタルの命綱』を奪うべきではない」との配慮があるという。

これらの規制は、昨年オーストラリアが先行して導入した「16歳未満のSNS禁止」法をベースに、そこからさらに規制範囲を広げるなど「オーストラリア・プラス」と呼ばれる厳しい内容だ。

その背景には高い世論の支持がある。イギリス政府による事前の意見募集では、回答した保護者らの約9割がこれらの厳しい禁止措置を支持している。政府はこうした世論の後押しを受けて今回の決断に至ったと見られている。

子供全体の6〜7割はSNSを使い続ける

一方、昨年12月に世界で初めて「16歳未満のSNS禁止法」を施行したオーストラリアでは、政府がその成果をアピールする反面、現場では「子供達の脱法行為(禁止措置をすり抜けてSNSを利用すること)」が常態化しており、法律の実効性を巡る激しい議論が起きている。

新法の施行直後から、オーストラリアのインターネット規制機関は主にアメリカや中国のIT企業(メタ、グーグル、バイトダンスなど)を対象に厳格な取り締まりを行った。この結果、同法施行後の僅か一か月間で約470万件、半年が経った現在までに500万件以上の「16歳未満のアカウント」が凍結・削除された。

これらは一見、大成功にも思える数字だが、実際には子供達の適応力が勝っており、新法は「ざる法」と批判されている。最新の調査では、「禁止されたはずの子供達の約6〜7割が現在も何らかの方法でSNSを使い続けている」と報告されている。

こうした「すり抜け」の主な手口には、まず「年齢確認の突破」がある。IT各社が実施する「カメラとAI技術を使った顔認証(年齢確認)」に対し、子供達は顔にメイクで髭を描いて大人に見せかけたり、兄・姉や親の前にスマホ(カメラ)を置いて認証をパスするケースが続出した。

また、かなり高度な手口としては、いわゆる「VPN(Virtual Private Network)」を利用し、位置情報を海外に偽装して規制(禁止)を回避するケースも見られた。他にも禁止対象の大手10社には含まれないマイナーな新興SNS、さらにはDiscordやRobloxなど「ゲーマー向けに開発されたコミュニケーション・ツール」のチャット機能に子供達が一斉に流入したという。

こうしたことから、オーストラリアの子供や親たちの感想は複雑だ。

「簡単に破れる法律をわざわざ作っても無意味だ。十代の子供達はみんなギャグのネタにして笑っている」という意見もあれば、「国が禁止してくれたお陰で子供に『スマホを置きなさい』と言い易くなった」「周りの子供達も使えなくなった(ことになっている)ので、スマホを持たせないことへのピア・プレッシャー(同調圧力)が減った」など好意的に捉える保護者も少なくない。

が、その一方では、SNSでの情報収集が絶たれることで「若者のニュース離れや社会的孤立が進んでいる」との指摘もある。

【関連記事】→10代の3割が「闇バイト募集を見た」と回答…子どものSNS禁止に頭を抱える「規制だけでは解決できない問題」

【つづきを読む】10代の3割が「SNSで闇バイト募集を見た」と回答…子どものSNS禁止に頭を抱える「規制だけでは解決できない問題」