「子どもを産まない人生を選ぼう」「姓を変えることに違和感がある」──そんな思いから、この先ひとりで生きてもいいと思っていたというゲーミングMCの荒木美鈴さん。そんな荒木さんが3月、結婚を発表しました。お相手は7歳年下の、元プロゲーマー。どんな思いで決めたのか、結婚と子どもを産まない選択についてお聞きしました。

【写真】「今と雰囲気だいぶ違う」司会の仕事を始めた20歳ごろの荒木さん ほか(全15枚)

入籍は「人生をともにする覚悟を決めた証」

── 今年3月、ご結婚と子宮摘出手術を受けたことを同時に発表されました。お体の具合と新婚生活はいかがでしょう。

荒木さん:彼とは3年前から同棲はしていたので、特に生活が変わることもなく、飼い猫ともずっと一緒だし、正直そこまで実感はないんです。入籍は私の希望で令和8年8月8日に決めているのですが、3月に子宮摘出手術を無事に終えたので、そのタイミングで結婚についても公表することにしました。

子宮摘出の手術を受けた6日後には、大好物の台湾の万頭を堪能できるなど術後も順調だったそう

── 手術も無事に終えたとのことで、お元気そうでホッとしました。ご結婚前から同棲されていたとのことですが、家事の分担はどんな感じなのですか?

荒木さん:3年前に同棲を始めたころから、彼が家事全般を担当してくれています。私の担当は、トイレと自分の部屋の掃除、あとは猫のお世話です。彼は、もともとひとり暮らしだったのと、子どものころから家の手伝いでよくしていたそうで、家事が全然苦にならないタイプみたいなんです。

── 食事も毎日作ってくださるとか。

荒木さん:そうなんですよ。それがすごくおいしいんです。料理の仕事を目指していたこともあったほど、料理は得意みたい。スーパーの買い出しも楽しいって言ってて(笑)。

正直言うと、最初の1年くらいは「キャンペーン期間」なのかなって思っていました。でも、2年経っても3年経っても、彼の様子が全然変わらなくて。それどころか、家の中にレシピ本は増え続け、Youtubeのお気に入りレシピも増えているようで。3年間、「僕が家事をやってあげている」と言われたことが一度もなく、本当に感謝しかないです。

── ご主人からの100回目くらいのプロポーズを受けて、ようやくOKされたと伺っています。決意された理由は?

荒木さん:一度結婚したもののうまくいかなかったことがあり、私自身はもう結婚するつもりはありませんでした。子どものいない人生を生きるつもりだったのと、荒木姓を変えることに違和感があったのもあります。2年前の誕生日に、彼からもらった手紙には「美鈴さんのために、毎日みそ汁を作りたい」と書いてくれていたのですが、それに対しても「前向きに検討します」と曖昧な返事で逃げていたところがありました。

心が変わり始めたのは、昨年末です。あまりにも健康管理に無頓着な私にしびれを切らした彼が、私の財布を奪って、大きな病院の診察券を取り出し、人間ドックを予約してくれたんです。そこで子宮頸がんの疑いがある前がん病変が見つかって。その後、子宮を摘出する手術を受けたのですが、その期間も彼がずっと支えてくれていました。

夜中に地震が起きたときには、真っ先に私に覆いかぶさり全力で守ってくれようとする彼に、「こんなに自分のこと以上に私を大切にしてくれる人がいるんだ。これはもう結婚をする覚悟を決めるしかない」と。それで、入籍することを決めました。私にとっては「彼と人生を共にする覚悟を決めた証」です。彼は、自分が荒木姓を名乗ることにも応じてくれて、本当に感謝しています。

子どものいない人生を選択「自分がおかしいのかな」とも

── ご主人は本当に理解のある、優しい方なのですね。いっぽうで、子どもを産まない人生を生きるつもりだったとのことですが、それについても伺ってもいいですか?

荒木さん:はい。親には愛情たっぷりに育てられてきたし、幸せに暮らしてきたのですが、なぜか子どもがほしいと思ったことがなくて。20代のころは、母や周りの人から「30歳を過ぎれば気持ちが変わるかもしれないよ」と言われていたのですが、いっこうにその気配がなく、「私が変なのだろうか」と思ったこともありました。

毎日のようにLINEで連絡を取り合う福岡のお母さんとは、何でも言える関係。写真は年2回の東京ツアーで

いっぽうで、子どもがいる人たちの話を聞くと、やっぱりお仕事を休まなきゃダメだよねとか、生活も子ども中心になるよねとか…いろいろ思うところがありました。

これまで頑張ってきた自分の仕事を認めてもらう感覚にすごくやりがいを感じていることもあって、子どもを産むという選択がどうしても考えられなくて。もし地方に住んでいて、今のMCの仕事をしていなかったら、考え方も違っていたかもしれないとは思いますが…。18歳からこの仕事を始めて、25歳で上京してからは10年以上、今の仕事でキャリアを積んできたので、自然と子どもをもつ選択肢がなくなったような気がします。

それに、いまって子育ては失敗が許されないような雰囲気を感じるんです。まわりの人たちと助け合うというよりも、どんどん個人の責任が重くなるように感じて。結局、自分が変わらないと成立しない生活は考えられませんでした。

── 妊娠・出産は、女性への負担がどうしても大きくなりがちです。

荒木さん:そうですよね。特に仕事面では、妊娠・出産して、自分のいたポジションに新しい誰かが入ったとしても、復帰したときにすぐ戻れて自分のキャリアが守れる保証があるならいいと思います。でも、実際は難しい。そう思うと、これまで積み上げてきたキャリアと周りの人たちからの信頼をこのまま守っていきたいという気持ちが強くなって。今年になって子宮の前がん病変が発覚し、子宮全摘を決断したことで、実際に出産自体が難しくなってしまいました。でも、後悔はありません。

私の選択は少子高齢化を進めているのかもしれないという自覚もあり、申し訳ない気持ちになるときもあります。現在は会社を経営しているので、子ども・子育て拠出金や税金を支払うことで社会に貢献したいという思いで、仕事を頑張っています。

母親は、「美鈴の人生だもんね」と応援

── ご主人や実家のご家族は、荒木さんの選択についてどんな反応を?

荒木さん:彼も親も私の気持ちを尊重してくれています。私が20代のころは、「子どもがいると気持ちも変わるかもよ」と言っていた母も、私が毎日楽しそうにしているのを見て自然と考え方が変わったみたいです。「たしかにお母さんの周りにも子どもを産まないで仕事を楽しそうに頑張っている人も多い。それに、美鈴の人生だもんね」と、言ってくれました。

もし男性が産める社会で、男性側も妊娠する世界だったらどうなっていたでしょうね。それなら私も前向きに考えていただろうなと思います。

ともかく、産みたいと思う方がたくさん産めるような社会になってほしいです。お金や環境のこととか心配なく、安心して出産・子育てができる社会になるといいなと思います。

── 本当に。いまは、荒木さんのような選択をする女性も増えているように思います。

荒木さん:私の場合、人生の岐路に立ってどうすればいいか悩んだとき、「どちらを選んだ自分が好きか」を想像して選択するようにしています。そうやって選んだのが、子どもを産まずに自分の仕事や趣味、それに手に届く人たちを幸せにしていく、今の生き方でした。選んだ人生を正解にしていこうと思っています。もしかしたら私の選択は普通ではないかもしれないけれど、納得できる選択ができれば、あとになって振り返ったとき、「よかった」と思えるかなと。

それに、姉が2人子どもを産んでくれているし、友達の子どもたちもすごくかわいくて。一緒に遊びながら「この子たちが幸せに笑ってくれる未来になればいいな」と願っています。

取材・文:たかなしまき 写真:荒木美鈴