全長4.7m新型「商用バン」日本上陸! 形状が変わる斬新仕様!? 新たな「PV5」とは? Kiaの販売戦略とは
Kia PV5市販車が日本上陸! 独自構造EVバンの国内展開と販売戦略を解説
Kia PBVジャパンは2026年4月17日、新型商用EVである「PV5」の市販車が日本に到着したことを発表しました。
2025年のジャパンモビリティショーで国内初披露された本車両は、いよいよ発売の時を迎えます。
今回は、市販車の国内上陸を機に、以前韓国・ソウルで行われた取材内容を振り返り、車両の特徴や開発の背景、そして日本市場における販売戦略や展開の全体像について改めて整理して解説します。
Kia PBVジャパンは、新型商用電気自動車(EV)である「Kia PV5」の市販車について、最初のロットが同月16日に愛知県の三河港に到着したことを発表しました。
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この車両の到着により、日本国内での販売開始に向けた各種の準備作業が最終段階に入ったことになります。
PV5は、2025年に開催された「JAPAN MOBILITY SHOW 2025」において日本国内で初めて公開されました。
公開当初から、企業の物流担当者や一般の来場者を含む多くの関係者から関心が寄せられており、同社は国内での販売に向けた商品開発、および販売からアフターサービスに至る体制の構築を進めてきました。
Kia PBVジャパンは、韓国の自動車メーカーである起亜(以下、キア)と、日本の総合商社である双日が事業を展開するために設立した合弁会社です。

同社の代表取締役社長には、2025年4月から田島靖也氏が就任。キアは世界的に事業を展開するヒョンデグループの一員です。
日本市場においては、すでに同じグループのヒョンデが乗用車や商用車の分野で事業を展開し、一定の実績を持っています。
そうした状況の中で、キアの日本進出にあたり既存の組織ではなく双日との合弁という新たな体制が選択された背景には、複数の要因があります。
田島社長は過去の取材において、ヒョンデの日本法人とは情報共有を行っているとしたうえで、今回の事業がこれまでヒョンデが日本で展開してきた車両のカテゴリーとは性質が異なることを挙げています。
それに加え、双日が自動車関連の事業で培ってきた総合商社としての機能と知見を活用すること、そして日本市場においてキアのブランドを確立していくことなどが、独立した事業体を設立した理由であると説明しています。

KiaはPV5の開発にあたり、キアは車両づくりの基本思想として「PBV(Platform Beyond Vehicle)」という概念を提唱しています。
これは、自動車を単なる移動の手段としてのみ設計するのではなく、利用者の事業形態や生活様式に適合し、用途に応じた機能を提供する基盤として捉える考え方です。
キアのMSVプロジェクトグループで常務を務めるスコット・ジュ氏は、この設計思想について、「このクルマはお客様の『ために』デザインされたのではなく、お客様と共にデザインされたのです」と述べていました。
この発言が示す通り、「PV5」の開発プロセスには「共創(Co-Creation)」と呼ばれる手法が取り入れられています。
従来の自動車開発とは異なり、企画の初期段階から世界各地の利用企業の声を取り入れる作業が行われました。
具体的には、「PBVパートナーズ・デー」という名称のイベントを実施し、120社を超える顧客企業から車両のデザインや搭載すべき機能に関する提案を収集。
日常業務で車両を使用する現場の意見を直接設計に反映させることにより、実務での利便性を備えた車両の構築が目指されました。
新たなミニバン!? PV5の特徴とは?
PV5の設計における構造的な特徴は、用途に応じて車体の形状を変更できる「モジュール式ボディ組立システム」の採用です。
この構造は、基本となる車台(シャシ)の上に、目的に合わせた異なる種類のボディ部品を組み合わせることができる仕組みです。
貨物の配送業務に特化した「カーゴバン」や、人員の輸送を主目的とする「乗用モデル」をはじめ、室内高を拡張した「ハイルーフ」、荷室長を延長した「ロングボディ」など、多岐にわたる車体形状を構築することが可能とされています。
将来的な計画として、一つの基本構造から最大で16種類の派生モデルを展開することが予定されています。
このモジュール構造は、製造工程の共通化による効率化に加え、運用時の保守面でも機能します。
車両の車体部分が損傷を受けた場合、被害を受けた箇所のモジュールのみを交換する作業で修復が可能となる設計です。
これにより、全体の修理にかかる費用を抑制するとともに、車両が業務に使用できない状態(ダウンタイム)の期間を短縮する効果が見込まれています。
外観の設計面では、電気自動車としての特性を活かし、空気抵抗の低減が図られています。
商用バン特有の箱型形状でありながら、空気抵抗係数を示すCd値は0.28という数値を達成。この空力性能の向上は、走行時の消費電力を抑え、1回の充電で走行できる距離を維持することに寄与しています。

室内や荷室の設計は、日常的な作業負担の軽減を考慮した仕様となっています。
カーゴモデルにおける荷室の床面地上高は419mmに設定されており、これは荷物の積み下ろしを頻繁に行う作業者の身体的な負荷を抑えるための設計です。
荷室の容量は最大で5.4立方メートルが確保され、多様な荷物の積載に対応。
また、専用設計のEVプラットフォームを採用したことで、車内の床面は平坦な低床構造となっており、人員の乗降や貨物の移動が容易な空間が実現されています。
インフォテインメントシステムには、Android Automotive OSを基盤とする機器が搭載されています。
これにより、スマートフォンで利用するような業務用アプリケーションを車両のシステムに追加することが可能となり、移動の合間に業務を処理する機能を持たせることが想定されています。
ボディサイズとスペックについて、過去に公表された詳細な仕様では、乗用モデルの「Passenger (2-3-0)」が、全長4695mm×全幅1895mm×全高1899mm、ホイールベースが2995mm。
動力用のバッテリーにはニッケル・コバルト・マンガン(NCM)を使用し、容量が71.2kWhの仕様と51.5kWhの仕様を用意。駆動用モーターの最高出力は120kW、最大トルクは250Nmとなります。
WLTC基準に準拠した1充電あたりの航続距離は、基本型で377km、航続型で521kmとされています。
貨物用のロングモデルである「Cargo (Long)」のボディサイズは乗用モデルと共通の数値です。
バッテリー構成は異なり、容量43.3kWhのリン酸鉄リチウム(LFP)を選択できるほか、乗用モデルと同様の51.5kWhおよび71.2kWhのNCMバッテリーが設定されています。モーターの出力は同じく最大120kW、最大トルク250Nmです。
走行距離は、基本型が377km、航続型が521kmであり、経済型と呼ばれる仕様の数値は別途公表される予定です。これらの仕様は、キアの社内測定基準に基づく数値とされています。
日本国内参入の理由と戦略とは?
キアはこれまで日本市場での事業展開を行っていませんでしたが、「PV5」の投入により日本の小型商用車(LCV)市場への参入を果たします。
日本の自動車メーカーが高い占有率を持つ日本市場において、新規参入を決定した背景には、現在の市場動向に対する分析があります。
キアのPBV部門責任者であるキム・サンデ氏は、日本市場の状況について、「日本の『EV化の遅れ』こそが、我々にとっては大きなチャンスだと捉えています」との見解を示しています。
現在、日本自動車メーカーは、内燃機関車やハイブリッド車を中心に製品を展開しており、特にLCVの分野において、電気自動車の競合車種が存在していない状況にあります。キアは、この競合の不在を事業展開の機会と捉え、市場を先行して開拓する立場を確立することを目指しています。
政策面での環境も参入の要因として挙げられています。サンデ氏は、「日本政府は、LCVの電動化に対して手厚いインセンティブを用意しており、2030年に向けたESG目標も設定しています。我々はこの政府の追い風を戦略的に活用し、PBVを日本市場に投入していく計画です」と説明しており、購入時の補助金制度や企業に求められる環境目標が、商用EVの導入を後押しすると予測しています。

日本国内の販売活動を統括するKia PBVジャパンが策定した販売戦略は、法人を対象とする「BtoB」領域と、個人を対象とする「BtoC」領域の2つを軸としています。
BtoB領域においては、二酸化炭素排出量の削減を経営課題としている物流業や配送業、および資材の運搬空間を必要とする建設業や工事業などを主要な対象に定めています。
田島社長は「現状、日本の企業にはEVバンの選択肢がありません。カーボンニュートラルの実現が経営課題である企業様に対し、我々はファーストムーバーとして価値を提供できます」と述べており、企業の環境対策需要に応える製品としての位置づけを明確にしています。
BtoC領域では、電気自動車が持つ静粛性や、車載バッテリーの電力を外部機器で使用できる機能を活用し、キャンピングカー市場を中心とした展開が計画されています。
車内で家電製品を使用できる利点は、野外活動において機能すると想定されます。
また、家族での日常的な利用や、送迎、福祉車両としての需要も見込んでいます。
事前の需要調査においては、当初想定していた物流や旅客輸送の事業者にとどまらず、ペットと同乗できる空間を求める層や、ルート営業で車両を使用する法人からも関心が寄せられていることが確認されています。

Kia PBVジャパンは、日本市場における「PV5」の販売目標を設定しています。発売を開始する2026年の初年度には1000台、翌年の2027年には2000台の販売を見込んでおり、新規参入メーカーとして台数の達成を目指しています。
これらの目標を達成し、事業を軌道に乗せるための課題として認識されているのが、購入後の運用を支援するアフターサービス体制の確立です。
田島社長は、「キアというブランドを日本で創っていくために、高品質な製品はもちろんですが、特にBtoBのお客様にダウンタイムなく使っていただけるようなサービス体制を整えることが不可欠です」と言及。事業に使用される商用車において、車両の故障による稼働停止は企業の業務に影響を及ぼすため、保守対応の仕組みが不可欠となります。
この課題に対する計画として、2026年の販売開始時期までに全国に8カ所の正規販売ディーラーを開設する方針が進められています。
車両の点検や整備を担うサービス網については、日本国内の既存の整備事業者と提携関係を結び、全国規模で約100カ所の整備拠点を確保した状態で事業を開始する予定となっています。
また、2026年4月17日の発表に含まれる通り、車両の販売開始に先立ち、顧客対応の基盤整備が行われています。
利用者の利便性向上と運用時の支援を目的として、2026年4月1日にカスタマーセンターおよびロードサイドアシスタンスの専用回線を開設。
これにより、事前の問い合わせ対応や、路上での不具合発生時における支援体制が運用を開始しています。
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今回、三河港に陸揚げされた市販車の初期ロットは、日本国内の公道を走行するための法的な手続きや、販売店での人員教育、さらには顧客候補への車両の提示など、発売に向けた最終的な準備段階に活用されるとみられます。
専用プラットフォームとモジュール構造を採用し、利用者の要望を開発に反映させた新型商用EV「PV5」が、国内メーカーが普及を牽引する日本の自動車市場において、どのような位置を占めていくのかが注目されます。
