実は日本は再エネのポテンシャルが高い!「五島洋上ウィンドファーム」が切り開く未来

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昨年9月、ある大手商社が洋上風力発電から撤退するニュースが広がりました。まるで日本における洋上風力発電開発がすべて頓挫してしまったかのような報道でしたから、SNSなどでも「日本の洋上風力オワタ」的な絶望的コメントが多く投稿されたのを覚えている方も多いことでしょう。確かにインパクトの大きいニュースではありましたが、一方でより実践的な大規模洋上風力発電プロジェクトがすでに進行している事実が同時に語られていたら、日本全体があそこまで打ちひしがれることはなかったかもしれません。

日本でのエネルギーの未来をひらく、海に浮かぶ風力発電

その「実践的な大規模プロジェクト」とは、戸田建設が五島列島の地元自治体・地元企業・漁業関係者のみなさんとタッグを組んで進めてきた、「五島洋上ウィンドファーム」。国内初の浮体式洋上ウィンドファーム(錨を下した船のように海底とは鎖のみでつなぎ、海上に浮かせた風車による電力発電システム)です。

2021年にスタートしたこのプロジェクトは、2022年に洋上での組み立てを開始、今年1月5日から浮体式風車8基を運用して商用発電(実際に電力を供給する発電)が始まりました。そのポテンシャルは8基で約16800kW。数字でいわれてもわかりづらいところですが、およそ1.5万世帯の年間電力使用量をまかなうことができます。現在は五島市内の事業者を通じて、島内の企業や家庭に電力を供給しています。

その洋上ウィンドファームを間近で見学する機会をいただけるとのことで、早速行ってきました。ときは2月下旬春節。五島福江港に向かう高速船の起点となる長崎では、長崎くんちとならぶビッグイベント、ランタンフェスティバルのフィナーレが開催されるということもあって、東京からの飛行機は軒並み満席。最後の一席を何とかゲットし、意気揚々と五島に乗り込みました。

当日開催されたのは、関係者向けの洋上風力施設見学会と、「五島洋上ウィンドファーム」運転開始記念式典。式典には、岸田元総理大臣や石原環境大臣をはじめ、多数の国会議員も参加しており、日本国としての力の入れようも感じられました。うん、まだまだ日本の洋上風力発電開発オワッテないじゃん、と思える政府の対応は、サステナビリティ推しのFRaUとしてもうれしいものがあります。

洋上風力のポテンシャルは、今の日本の一次エネルギー総量より多いって知ってた?

ここですこし覚えたての洋上風力知識を披露すると、洋上風力発電と一言でいっても、大きく分けて二つの仕組みがあります。ひとつは海底に風車の基礎を固定する着床式、そしてもうひとつが今回のように海に浮かべる浮体式。

実は世界の95%が着床式。着床式は陸上から近く、海底に固定するので工性が良い一方、水深が浅いところにしか建造することができない(最大60m程度)というデメリットも。日本の近海は、急激に水深が深くなっているところが多く、着床式の好立地はあまり多くないそう。一方、浮体式ならば、ある程度水深が深いところにも建設できるうえ、“おきあがりこぼし”のような構造になっているため、台風のような暴風・波浪にも“柔軟に”耐えることが可能なのです。さらに沿岸から離れた水深の深いところにも設置できるため、騒音問題や漁場への影響も最低限に抑えることができるというメリットがあるんです。今回戸田建設が作った洋上風車は、水深約130mの海域に設置されており、海面から風車の軸までの高さ60.1m(羽の長さは約40m)に対して、見えない水面下には76mもの「浮体」が風車を支えてくれているそう。

さらにもうひとつだけ踏み込んで話すと、海に囲まれた日本は、洋上風力発電の条件に恵まれていて、日本国として主権的に建造物を構築できる海域(EEZ 排他的経済水域)に設置可能な(風とか海流とか水深とかの諸条件を満たす)浮体式洋上風力に適切に建設できれば、計算上、日本の一次エネルギー消費量(石油・石炭・天然ガス・原子力・再生可能エネルギーなど、自然界から取り出したエネルギーをそのままの形で合計したもの)の1.8倍ものポテンシャルが出せるそうです。

あくまでも理論上の数値ではあるとはいえ、いま石油が高騰しているなかで、この洋上風力に限らず、地熱、太陽光(ペロブスカイト太陽電池という、日本で発明された最新技術も実用化に向けて開発中)、水力など、実は日本は再エネのポテンシャルに恵まれた国であることが、なぜかあまり語られないのは不思議なところです。

海に映える「洋上風力発電」を観光資源に!

さて、実際の見学。「風光明媚」という言葉は、自然環境の美しさを表現する言葉ですが、海に浮かんだ、風車、個人的にはとても美しいものに見えました。これも風光明媚と言っていいのではないでしょうか? そしてこの五島洋上ウィンドファームがすごいのは、漁業関係者をはじめとする地元関係者にも歓迎されているところ。計画当初から地元漁業組合や企業、自治体と綿密な協議を重ね、漁業や観光に影響を与えないところを選定するなど、洋上風力発電=漁場を奪うものではなく「海の利用を高度化するもの」としての道を歩んだのです。

さらには、水面下の浮体部分に海草などが付着して繁茂し、新しい藻場(幼稚仔魚の隠れ場所や産卵場となる、海草や海藻の群落)が生まれているそう。「風車の見学を観光資源に!」という声も出てきているそうで、五島における洋上ウィンドファーム文化の発展に期待できそうです。

ただ、今回実用化した五島洋上ウィンドファームは、浮体式洋上風力発電施設としては、世界の標準からするとまだ小規模だとか。会見で戸田建設・大谷清介社長は「他社の例にもれず、本プロジェクトも円安、資材高騰で苦しい思いをしています。でも、地元のみなさんのご協力のおかげでここまでたどり着くことができました。これで満足することなく、今回の成功を皮切りに、大型化、規模の拡大にも挑戦していきたい」と話してくれました。これからさらなる開発に期待大です。

日本の洋上風力による再エネはこれからです!

◇そして、五島にはまだまだ素晴らしいサステナビリティがありました。4月18日公開の記事で詳しくお伝えします。

写真・文/園田徳一郎

「再エネって本当にいいの?」浮体式洋上風力発電で水産業も雇用も人も元気になった「五島の奇跡」