母はモデル、いじめも…「10万円とカバン一つで上京した」池田エライザ(30)の転機〉から続く

 きょう4月16日、池田エライザが30歳の誕生日を迎えた。福岡出身、13歳でモデルデビューを果たした後、俳優としても次々主演を飾るように。さらに近年は映画監督、歌手など多彩な活動を展開しているが、そのきっかけとは?(全2回の2回目)

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池田エライザ。「ショートショート フィルムフェスティバル&アジア2021」のアワードセレモニーで ©時事通信フォト

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 池田エライザは映画やドラマに出演するうち、自分を消して役に体を貸すという、独特ともいえる役との距離感を身につけるようになった。ちなみに彼女は、夢のなかでも自分を客観的に見ているらしい。しかも眠れないときなどは、夢を見ようと思って、キャラクターを自分の頭のなかで動かしているとわりと眠りやすいという。芸人のバカリズムとの対談では、夢がバッドエンドで終わった場合、巻き戻してやり直すこともできると彼女が語ったところ、「当然みたいに話してますけど、よく見られますね(笑)」とツッコまれていた(『AERA』2020年3月16日号)。

 たしかに、たいていの人は夢を見ていても、自分の主観で見ているはずなので、それが池田の場合、客観的に自分の姿が見られ、しかも自由に動かせると聞けば驚くしかない。もともと彼女は、小説を読んでいても、登場人物のキャスティングをしたり、絵を想像してコマ割りをしたりと、頭のなかで映画をつくるようなことを楽しんでいたという。ひょっとすると、夢をコントロールする能力も、そんなところから身につけたのだろうか。

映画監督への挑戦

 そんな池田が映画を撮るのは必然だったのだろう。2020年には初監督作品『夏、至るころ』が公開されている。同作は、映画会社の映画24区が「地域」「食」「高校生」をテーマに、全国各地の自治体と組んで青春映画を制作しているプロジェクト「ぼくらのレシピ図鑑シリーズ」の一企画として、池田が福岡県田川市を舞台に制作したものだ。

 高校生の主人公・翔とその親友の泰我(たいが)の役には、それぞれ倉悠貴と石内呂依と、いずれも新人を起用した。最初に生まれたキャラクターは泰我のほうで、撮影前に田川市を訪れて地元の高校生に夢を訊いたところ、「公務員」と答えた角刈りの子が気になり、理由を問うと「親が喜んでくれるから」との答えが返ってきたことに着想を得たという。主人公の翔は、泰我とは対照的に、手放しに自分の夢や希望について考えることができなくなっている存在として設定し、脚本家の下田悠子と二人三脚でホンを組み立てていった。

 ちなみに泰我の名前とキャラクターは、池田の友人である俳優の仲野太賀から本人の許可を得て使わせてもらったとか。同じく翔の祖父の正勝は、NHK BSの音楽番組『The Covers』で一緒に司会を担当したリリー・フランキーをイメージしながら書き、本人に演じてもらっている。リリーには制作にあたって色々と相談に乗ってもらい、田川出身の大物ミュージシャンである井上陽水を引き合わせてくれたこともあったという。

 同作で彼女は出演はせず、監督に徹した。泰我が翔に怒りを爆発させるシーンでは、演じる石内がいままで怒ったことがないというくらい温厚な性格で、なかなか思いどおりに演じられなかったらしい。そこで池田は「あと1回しか撮らないよ?」とあえてドライに言ったり、主演の倉に「おまえ、そんな芝居でいいのか?」とこっそり言わせたりした。それだけに、彼が感情を爆発させる瞬間に立ち会えたときは泣きそうになるくらいうれしかったという。

〈《そういう演出ができたのは、自分が女優として、いろんな監督の演出を受けてきたおかげだと思いますね。私も厳しくされたことがありますけど、それって「この子はできる」と思ったからこそ、根気強く演出してくれたんだと思うんです。そんなふうに、信じて引き出すこと、それが監督としての1番の務めだと思って臨みました》(『日経エンタテインメント!』2021年1月号)〉

地元福岡に「お礼を返したい」

 倉とは昨年(2025年)公開の映画『リライト』で、今度は共演者として久々に一緒に仕事をした。彼にとって池田は恩師のような存在とあって、このときの撮影には「パワーアップしたところを見せるぞ!」と気合いを入れて臨んだという。これに対して池田は、撮影でカットがかかったあとで、倉が監督の松居大悟ではなく自分のほうを見るので、「監督はあっちだから!」と思うこともあったと明かしている(『キネマ旬報』2025年6月号)。

 池田は映画ファンだけに、初監督作品では尖ったことをしたいという気持ちはあったが、結局、自分がやりたいアート性の強いことは一切封印した。そうやって完成したのは、特産品のパプリカや伝統芸能の和太鼓演奏、かつての炭坑のシンボルである2本の巨大煙突など地元の風物をしっかり盛り込みつつ、主人公たちが夜の学校のプールに忍び込むといった青春映画の王道シーンもあったりと、わかりやすく、あらゆる世代の琴線に触れるような作品だった。リリー・フランキーが「ベテラン監督の作品みたいな質実さを感じた」と評したのもうなずける。池田としては、この作品では尖ったことよりも、《福岡県民だったわたしが、田川市を舞台にして映画を撮ることで貢献して、お礼を返したい、と第一に》考えたのだという(『キネマ旬報』2020年12月上旬号)。

《私は人助けをしたいという気持ちでこの仕事をやっている側面があるんです。人間のこと好きだから》とは池田の最近のインタビューでの発言だが(『GOAT Winter 2026』小学館、2025年)、初監督映画に臨んだときもまさにその気持ちだったのだろう。仕事を通じての“人助け”としてはまた、音楽アーティストとして一昨年にリリースした楽曲「Utopia」は、自分が世話になった人の愛犬が亡くなったと知り、その悲しみと孤独に寄り添いたいとの思いから手がけたという。

 アーティストとしての活動はそもそも、司会を務めた前出の『The Covers』でギターの弾き語りをしたのが呼び水となり、音楽番組で歌を披露するようになった2020年にさかのぼる。翌年に1stアルバム『失楽園』をリリースしてからは、ELAIZA名義で作品の制作にも力を入れている。

 俳優業では、ある時期まで出演するドラマがなぜか深夜やBS、配信ばかりだったのが、近年、TBSの日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』(2024年)など地上波のプライムタイムのドラマにも出演するようになった。今年に入ってからは、TBSの金曜ドラマ『DREAM STAGE』で韓国発のボーイズグループNAZEのマネージャー役を演じたばかりだ。

10年後の目標は…

 10年前、20歳を目前にした池田は、女性誌のQ&A企画での「10年後、どんなふうになっていたいですか?」との設問に、《どんなに忙しくたって深呼吸して、人と人生を大切にしていたい。私のラッキーなところは素敵な人に恵まれているところ。今やっていることが、10年後にどうつながるかはわからないけど、きっと多忙できっと幸せなはず》と答えていた(『anan』2016年3月2日号)。

 多岐にわたって活動を展開する現在を見れば、実際そのとおりになっているといえる。昨年には同じ雑誌で、やはり「10年後の目指す姿は?」と問われ、次のような意外とも思える回答をしていた。

〈《ストイックな部分を手放して、自分のことをもっとかわいがってあげたいですね。あとはギャルマインドを手に入れたい。ギャルってかっこいいじゃないですか。自分の気持ちを潔く吐露してて、知らないものにも『ウケる〜!』と言いながら興味を持つ。その方が人生、もっとおもしろくなりそうだなって思います》(『anan』2025年6月11日号)〉

 ただ、「ウケる〜」とまでは言わないが、知らないものに興味を持つのは、子供のころからヘビーな読書家である彼女の性分ではある。たとえば、2020年に「ブラック・ライブズ・マター(BLM)」運動が起こったときには、聖書や小説、あるいは奴隷制の歴史の本を読んで考えを深めたという。しかし、だからといって「勉強が好きな人が偉い」という風潮はおかしいと異を唱えてもいる。《私自身はすごく子供っぽい感覚を持っているから、「何がすごいのかな? 自分が好きでやっているだけなのに」と思うんです》というのがその言い分だ(『サンデー毎日』2022年10月9日号)。

「ハーフだし、名前も派手なので…」

 こんなふうに子供っぽい好奇心も持ち合わせているところを見ると、何もいまさらギャルマインドを手に入れなくても……と思ってしまうのだが。いや、本人としては、本来は内向的な性格なのに、《ハーフだし、名前も派手なので、華やかな人間だと思っている方もいて。(中略)そんな自分を遠くに感じる》と明かしていただけに(『週刊文春』2020年12月17日号)、そうした実像とイメージとのギャップを埋めるためにも、もっと自分の気持ちをさらけ出す必要があると感じているのかもしれない。 

 映画監督としては、第1作『夏、至るころ』の公開時、《次に撮りたいやつはめちゃめちゃ近未来ものなんですよね》と語っていた(『キネマ旬報』2020年12月下旬号)。第1作とはまったく趣向が異なるが、池田が本来志向するアート性の強い部分を、ギャルマインドをもって堂々と前面に押し出せば、きっとまた新たな展開が待っているはずだ。

(近藤 正高)