記事のポイント
男性のスキンケア需要が急拡大し、Z世代がもっとも積極的に消費を押し上げている動きが示されている
ダヴ メン+ケアとアックスは、成分訴求やスポーツ選手との提携、文化文脈を活かしたキャンペーンで認知と購買意向を高めている
ユニリーバは「SASSY」計画を軸に、男性向け商品を機能性と官能性の両面から進化させ、カテゴリーの再定義を進めている


男性は、もはやグルーミング習慣について受動的ではない。いまや自分自身のためにスキンケアを購入し、ギフトとしても買うようになっている。

ユニリーバ傘下で、いずれも10億8000万ドル(約1080億円)以上の売上を誇るダヴ メン+ケア(Dove Men+Care)とアックス(Axe)にとって、ビジネス上の判断は明確だ。男性のグルーミングは、機能中心からライフスタイルへと転換しているのである。

「スキンケアを気にする男性はごく少数の選ばれた層、というクリシェはもう消えた」と、ユニリーバのメンズパーソナルケア領域を統括するグローバルブランドVP、アウグスト・ガルソン氏はGlossyに語った。

「男性はいま、スキンケアすることにまったく遠慮がない。情報も増え、自信も高まり、これまで関心を持たなかったカテゴリーにも積極的に製品を選ぶようになっている」。

Z世代が男性ビューティ市場を牽引



英バークレイズ銀行の2025年調査によると、Z世代男性は男性ビューティカテゴリーにおける最大の消費層であり、42%が所得のより大きな割合をグルーミングに充てていると回答した。これはミレニアル世代の29%を大きく上回る。

また、2024年のYouGovデータによると、米国では18〜24歳の男性が2024年にセフォラに来店する確率は、2020年の2倍となった。ピンタレスト(Pinterest)の2025年トレンドレポートでは、男性のフェイシャルトリートメント検索数が230%急増したとされる。

さらにターゲット(Target)、ウォルマート(Walmart)、ウォルグリーン(Walgreens)などの小売は過去3年間で多くのメンズスキンケアブランドを取り扱いはじめており、ルミン(Lumin)とドウェイン・ジョンソンのパパトゥイ(Papatui)、トーン(Tone)などが加わった。

市場調査会社アライド・マーケット・リサーチ(Allied Market Research)は、メンズスキンケア市場が2032年に160億ドル(約1兆6000億円)へ達し、年間約8%の成長を続けると予測している。

PwCの2025年ホリデーアウトルックとピンタレスト・プレディクト2025(Pinterest Predicts 2025)によると、男性の「セルフギフティング」とZ世代による新たな発見行動が、この成長を支える主要因だという。これらの潮流が、ダヴ メン+ケアとアックスの現在の製品開発・小売戦略の背景にある。

「巨大な民主化」 SNSが変えた男性の意識



ガルソン氏は、男性のスキンケア意識の変化を「SNSを中心とした情報の巨大な民主化」によるものだとみる。特にインスタグラムとTikTokの影響は大きいという。

「スキンケアの情報は正確なこともあれば、そうでないこともある。しかし人々は、自分に真実を教えてくれそうだと感じる誰かをフォローする。この情報へのアクセスが、選択し購入する自信を生む」。

ダヴ メン+ケアは2024年、8〜10ドル(約800〜1000円)で展開する「ホールボディ・デオドラント」シリーズを投入し、スキンケア主導のボディケア領域へと拡大した。本製品は特許取得のマイクロモイスチャー技術を採用し、軽い皮膜を形成する微細な保湿ドロップを付着させるという。一部製品には、女性向けスキンケアで人気のセラミドも含まれる。

「汗の1%しか脇では起きていない」とガルソン氏は語る。「これまで男性がこの手の製品を使わなかった最大の理由は、身体の特定部位で刺激を感じるのではないかという不安だった。ダヴ メン+ケアは、この市場をつくるうえで最適だった」。

同氏はさらに、スキンケア成分を含む男性向け製品について「女性向けに比べれば採用のペースは遅いが、リピート率は非常に高い」と述べた。「それこそが、どんなイノベーションにおいても核心だ」。

このアルコールフリーかつ成分主導のラインは、米国と欧州の主要小売で、セラヴィ・メン(CeraVe Men)やブルドッグ(Bulldog)といった「ダーモスキンケア」ブランドの隣に並ぶようになった。

スポーツ選手を起用したキャンペーンで認知を拡大



ダヴ メン+ケアは、男性の採用を促すうえで重要な要素である「スポーツ」を活用した。

ローンチ時には元NFLスターであるマーショーン・リンチとそのビーストモード(Beastmode)ブランドが出演し、体臭にまつわるスティグマに挑戦するキャンペーンを展開した。ブランドによると、この取り組みは想起率を76%押し上げ、購買意向を27%高めたという。

一方、欧州ではリンクス(Lynx)として知られるアックスが近年直面していた課題は、ティーン向けボディスプレーのイメージからフレグランス体験ブランドへの再構築だった。

同ブランドは2年前、7〜10ドル(約700〜1000円)で販売する「ファインフレグランス・コレクション」をローンチし、プレミアム香水を思わせる方向へ舵を切った。

「我々はコロンではないし、ただのデオドラントでもない」とガルソン氏は語る。「ハイブリッドだ。マスマーケット価格のまま、ファインフレグランスに近い品質の香りを攻めの姿勢で届けることが目標だった」。

アックスは2025年、文化的関連性をさらに強化した。春には「キャットニップ入りボディスプレー」のキャンペーンを実施。背景には「飼い猫が気に入らない相手とは付き合わない」という、約60%の猫飼育者に見られる文化的洞察があった。

「この『真実』をもとに、リアルなコミュニティとつながり、かつエンターテインメント性もあるアクティベーションをつくった」とガルソン氏は説明する。

キャンペーンではキャットニップの香りつき屋外広告を設置し、TikTok、インスタグラム、YouTubeで合計約16万5000件のオーガニック視聴を獲得。カンヌライオンズではブロンズを2つ受賞した。

アックスはマーケティングにユーモアを取り入れることで知られる。2025年の「ローワー・ボディスプレー」キャンペーンでは、香りを中心とする「パワー・オブ・スウィートネス」キャンペーンの一環として、思わず二度見する『スクラッチ&スニッフ』(こすると香る)屋外広告を展開。

ホリデーシーズンには、人気の香りを詰めた12〜18ドル(約1200〜1800円)のギフトセットも支援した。広告そのものを嗅いでもらうという仕掛けは、フレグランスの物語化における新しい切り口としてカンヌでゴールドを受賞した。

ユニリーバの「サッシー(SASSY)」戦略が生む、男性向け革新



こうした両ブランドの製品とキャンペーンは、ユニリーバが2年前に開始した社内イノベーション計画「サッシー(SASSY[Science, Aesthetics and Sensorials])」が、男性向けポートフォリオの進化を形づくっていることを示す。同計画は、すべての製品について機能的パフォーマンスと感覚的価値の両方を満たすことを求めるものだ。

「常に3〜5年先に何が起きるかを考えている」とガルソン氏は語る。「コア(主力製品)は決して革命的には変えない。進化させるのだ。配合やデザインを更新して、売れ筋ラインを新鮮に保つ。すると、別の領域で『革命』を起こせるようになる」。

たとえばダヴ メン+ケアは主力のボディケアに加えてホールボディ・デオドラントのような新しい層を積み重ね、アックスはファインフレグランス・コレクションでよりプレミアムな領域へ踏み込んだ。「カルチャーのなかにコアを埋め込みつつ、新たなベネフィットでプレミアム側を引き上げる」。

「両ブランドには非常に優れた技術が揃っている」と同氏は語る。「女性スキンケアで培った理解を、いま、男性向けに構築している。技術自体は似ているが、男性に最適化するための成分の組み合わせが変わる」。

めざすのは、両ブランドで「デオドラント、スキンクレンジング、ヘア領域にわたる先進的スキンケア効果」を届けることだという。

「男性は成分についてすべてを知っているわけではない。しかし、製品に何が入っているかを読むことは好きだ」とガルソン氏は語る。「たとえ理解していなくても、調べる。そして学ぶ。彼らが求めるのは、まずベネフィットであり、その次に説明だ」。

[原文:The grooming boom: Men are finally buying skin care for themselves

Zofia Zwieglinska(翻訳・編集:杉本結美)