「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は「宿る」「宿泊」の「宿」。祖先の霊を祀る神聖な場所で、敷物を敷いて眠る人の姿を表した漢字です。



「宿」という字は、家屋を意味する「うかんむり」を書き、その中に「にんべん」を書いて、その隣に「百」という漢数字を書きます。

うかんむりは、祖先の霊を祀る霊廟の屋根の形。

にんべんは人の動作を表す部首で、「百」という字は敷物を描いたもの。

人が敷物の上に寝ている様子を表しています。

つまり「宿」という字は神聖な建物に泊ってお勤めをする、宿直して守る、という意味をもつ漢字なのです。

祭祀が行われる前、儀式などに関わる人々が食事や外出などを慎み、心身を清める「物忌み」と呼ばれる期間を過ごす場所でもあります。

神社や寺院への参拝者や僧侶が寝泊りする場所を「宿坊」といいますが、「宿」という漢字を本来の意味で正しく使った例といえるかもしれません。

江戸時代の物語に出てくる旅人たちは、雨が降り出すと早々に、最寄の宿場で宿を探します。

風邪をひいたり、転んで怪我をしたりしては一大事。

長雨の季節ならしばらく宿暮らしを決め込むのです。

そこで出会った旅人同士、これもご縁と酒を酌み交わし、旅先での体験を披露したり、役立つ情報を交換したり。

まだ見ぬ世界の話を聞いて刺激を受けることもあったでしょう。

旅のさなかの雨宿り。

それは実際の旅に負けず劣らず、味わい深い楽しみだったに違いありません。

ではここで、もう一度「宿」という字を感じてみてください。

突然の雨に降られたら、軒先を借りて雨宿り。

しばし現実を離れ、心身をゆるめる時間です。

雨の香り、雨だれの音、光る雨粒。

五感をすべてひらけば、新たな回路もひらきます。

ずっと前から抱き続けている願いや、前世で自分が誓い、強く願掛けしたことを「宿る願い」と書いて「宿願」といいます。

仮の宿りの現世で自分が何をなすべきか、これからどこをめざせばよいのか。

もしかすると、あなたをこの世に送り出した誰かの魂が、そっと、道を示してくれるかもしれません。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。

その想いを受けとって、感じてみたら……、

ほら、今日一日が違って見えるはず。

*参考文献

『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)

『日本の言葉の由来を愛おしむ ―語源が伝える日本人の心―』(高橋こうじ/著 東邦出版)

7月7日(土)の放送では「婚」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。



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聴取期限 2018年7月8日(日) AM 4:59 まで

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<番組概要>

番組名:感じて、漢字の世界

放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット

放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜7:20〜7:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)

パーソナリティ:山根基世

番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/