『地獄に堕ちるわよ』細木数子はなぜ戸田恵梨香だったのか? 業界人が“大正解”だと感じる3つの理由
そんな中、作品の評価として目につくのが細木数子さんを演じる主演・戸田恵梨香さんへの違和感。ミスキャストだと指摘する声が数多くありますが、はたして本当に“合っていない”のでしょうか?
戸田さんのビジュアルについて、X上では《戸田恵梨香は体重が20キロぐらい足りない》《体型が細木数子のイメージとズレてた》《キャラが違い過ぎるんだよね》《なんで戸田恵梨香にしたんだろう?》……など細木数子さんとのギャップを指摘する辛辣なコメントが多々見られました。
戸田さん本人も、当初「私じゃない方がいいと思います」と制作陣に配役の違和感を訴えていたと、あるインタビュー記事(※)で明かしています。
※2026年4月19日掲載『GINZA』戸田恵梨香×伊藤沙莉 細木数子の半生を描くNetflixシリーズ『地獄に堕ちるわよ』インタビューより
この違和感は、いまだ多くの人の記憶に『ズバリ言うわよ!』(TBS系/2004年〜2008年)で活躍した細木さんが60代の頃の強烈なイメージが残るゆえ、仕方ないことなのかもしれません。ただ、まず強調すべきは『地獄に堕ちるわよ』は、再現ドラマではないこと。ドラマの冒頭にも「この物語は事実に基づいた虚構である」と明記されています。
◆似すぎている俳優を起用するリスク
今でも細木数子さんの人生がベールに包まれており、語り手によって人物像が異なることは『地獄に堕ちるわよ』内でも示されています。それは悪意・悪印象を持つものがほとんどで、結局、彼女の真実は謎のままであることが多い。
実名を使用しているだけあって、リアリティを強調すると作品で描かれていることが真実だと世間に思い込ませるリスクをはらんでしまいます。だからこそ、戸田恵梨香さんという細木数子さんとは印象が離れた俳優が演じることによってフィクションであることを訴えているのではないでしょうか。
◆迫力だけではない、愛らしい細木数子の一面を表現
戸田恵梨香さんといえば、ドラマ『大恋愛〜僕を忘れる君と』(TBS系)や、永野芽郁と母娘役を演じた映画『母性』、NHK朝の連続テレビ小説『スカーレット』などでの鬼気迫る名演が印象深い演技派俳優です。『地獄に堕ちるわよ』でも、細木数子の妖艶で鬼気迫る存在感を見事に表現しています。
華奢な身体の中にある太い芯と、華やかな容貌に隠れたおどろおどろしい欲望――戸田さんのビジュアルだからこそ、まるで対極にあるような細木氏の内に秘められたものを浮かび上がらせ、際立たせているのではないでしょうか。
迫力に欠けるという意見も見られますが、それこそが完全で完璧なヒールになり切れない『地獄に堕ちるわよ』の世界の中に生きる、細木数子としての愛らしさを感じさせます。
◆10代〜40代を演じ切る貴重な俳優
また、戸田さんの自然に目が奪われるような容姿は、クラブが繁盛したり、数々の男が惹きつけられる過程を最低限の描写に収める効果を生んでいます。
そもそもこの作品は、細木氏が占い師として表舞台に登場するころまでの10代〜40代前後の年代をメインとして描いていもの。だからこそ現在、30代の戸田さんが演じても不思議ではありません。むしろその幅広い年代をカバーできる俳優さんは希少なのです。
◆細木数子の娘も驚いた再現度
賛否の声が多い60代を演じているパートでも、ところどころ戸田さんが実際の細木氏に見えてしまう部分が多々ありました。とくに、ホストクラブで伊藤沙莉演じる小説家に対峙し、「あたしはここで男に復讐しているの」と怪しげに訴える場面。
煌びやかさを背にした逆光の不気味な照明もあいまって、まるでそこに細木数子が蘇ったかのような不気味な存在感がありました。
実際に細木数子さんの娘である細木かおりさんも《テレビでは映っていなかったような「ふとしたしぐさ」まで再現されていて、むしろ「なんでその癖知ってるの?」って驚いた場面も》とXに投稿するほどです。
◆意外性=ギャップも一因か
制作と主演のキャスティングが発表された際も、「全然イメージにあっていない」などという声と共に、戸田恵梨香がどう演じるのか? という期待で注目を集めました。
つまり、ここまで『地獄に堕ちるわよ』が話題になり、ヒットしているのは、細木数子という存在の求心力と、演じる戸田恵梨香さんのギャップと意外性があったからこそ。
その点においても、細木数子=戸田恵梨香でなければならなかった理由のひとつだったのかもしれません。
<文/小政りょう>
【小政りょう】
映画・テレビの制作会社等に出入りもするライター。趣味は陸上競技観戦

