救いなき怪異


【漫画】本編を読む

火の玉のような光が布団を周回し、凄まじい速度に達した瞬間、眠っていた子どもは電子レンジで焼かれたような死体へと変わる。枕元に立つ少年の亡霊、転がり落ちる頭部、そして、長年祀られていたはずの「神像」の失踪。

さかいめがみ(@shindelmegami)さんが描く『さいの神様がいるシリーズ』は、人間の願いを叶える存在でありながら、その結末に救いのない残酷さを孕んだ、土着信仰的な恐怖を描く連作短編だ。長年温めてきたという「さいの神様」の構想と、その裏側にある「綺麗ごとを排除した」創作への覚悟について話を聞いた。

■「自動書記のように生まれた存在」。創作人生の守り神をメインに据える決意

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逃げた02


逃げた03


本作の主人公とも言える「さいの神様」は、作者のさかいめがみさんが漫画を描き始めた当初、最初に出てきたキャラクターだという。

「ほとんど自動書記のように、自分の手から勝手に語られていく物語に魅了されました。以来、私の創作における守り神のように大切にしてきた存在です」

pixivの初期投稿や他シリーズの端々に「お守り」として忍ばせてきたこの神様を、満を持してメインに据えた本作。これまで磨き上げてきた画力と自信を背景に、日頃から温めていたホラーのアイデアを「さいの神様」の世界観へと昇華させた。

モザイク版が「伏線」に。読者の心理を逆手に取った前代未聞の演出

第2話には「怖そうなシーンを隠したモザイク版」が存在する。ホラーが苦手な読者への配慮かと思いきや、実はそこには巧妙な仕掛けが施されている。

「ただ同じ話を置くのはつまらないと思い、後の第5話・6話への伏線にしました。このシリーズにおける黒いモザイクは、『見なくていいよ』というさいの神様のお節介な優しさの現れ。不吉な何かが隠されている実感を味わってほしかったのです」

■「綺麗ごとをどける」。理不尽な死と暴力に真正面から挑む

本作でさかいめがみさんが一貫して意識しているのは、既存のホラーにありがちな倫理的なストッパーを外すことだ。

「今回はあえて、むやみに人が惨たらしく死んだり、村ぐるみで老人を見捨てたりと、シビアな描写を恐れずに描きました。自分の中の綺麗ごとを一旦どけないと、人間よりも大きくて深いものは描けないと思ったからです」

第3話では、「お地蔵様」と混同されがちな「神像」の正体を、ギャグからホラーへと急落させる得意の演出で表現。温度差で読者を風邪をひかせるような、鮮やかな作風が光る。

■完結よりも「ライフワーク」として。最強の霊能力者も登場予定?

「さいの神様」は物語の完結を急ぐのではなく、作者のやりたいことを全て詰め込むライフワークとして育てていく予定だという。

「今後は、私が考えた最強の霊能力者を出したり、神像が厳重に保管されていた理由を描いたりと、私自身もワクワクしながら制作を進めています。読者の皆さんも、私と一緒にこの不可解な世界を楽しんでいただければ幸いです」

人間の願いを歪んだ形で叶えるさいの神様。次にその神像が微笑むとき、誰がどのような犠牲を払うことになるのか。目を逸らしながらも読み進めてしまう、抗えない魔力がそこにはある。

取材協力:さかいめがみ(佐海暝一)

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