また再び会えることを願って――青山吉能、バースデーツアー“青山吉能 Birthday LIVE「明日、ふり合うも多生の縁。」”のファイナル公演をレポート
2026年5月16日(土)、神奈川・横浜ランドマークホールにて、青山吉能のバースデーツアー“青山吉能 Birthday LIVE「明日、ふり合うも多生の縁。」”のファイナル公演が開催された。
ソロアーティストデビューから5年目、バースデーライブも5回目、更に30歳というメモリアルな節目に、初めてツアーという形で行われた今回のバースデーライブ。本公演を境に、青山の音楽活動は一旦“小休止”となるが、この夜を包んでいたのは別れのムードではなく、また同じ縁で巡り合えることを信じるような、晴れやかな明るさであった。その模様を振り返る。
PHOTOGRAPHY BY 北島凜音
TEXT BY 逆井マリ
“小休止”前の集大成的ライブ
90年代J-POPがSEとして流れるなか、「よぴぴん家BAND」メンバーである=木原良輔(g、バンドマスター)、杉 直樹(key)、 前田逸平(b)、山崎 慶(ds)、石井裕太(sax、flu、per)、小幡康裕(ギター、キーボード)がステージに登場。深い青の光に包まれていたステージが、やがてピンク、紫へとゆるやかに移ろい、エメラルド色のような照明を浴びながら青山吉能が登場した。
オープニングを飾ったのは、to-kichiと馬瀬みさきが手掛けた、シティポップテイストの「Grown Up」。艶やかなサックスの音色を軸としたラグジュアリーなアレンジで、会場の空気を大人びたムードへと染めていく。赤い照明に変わったかと思うと、日食なつこが提供した「ルーガルー」へ。青山の力強い歌声に合わせて、客席で拳が上がる。タンバリンやフルート、サビ前の間合いに差し込まれる青山のフィンガースナップといった細やかなアクセントが、楽曲に更なる躍動感を与えていた。
序盤を盛り上げたところで「“明日、ふり合うも多生の縁。”、夜の部へようこそ〜!」と明るく呼びかけた青山。このライブが一旦の区切りになることに触れ、「私の今までのすべてを詰め込んだライブにしたかった」と語る。昼公演とは“まるっきり”始まり方を変えたこと、バンドメンバーにも違うセットリストを覚えてもらったことを笑い混じりに明かした。
そして、「私事ですが、先日30歳になりました〜!」と報告。客席から「おめでとう!」の声が飛び「ありがとう!」と返しつつも、「……めでたいですか?」と夢から醒めたような表情でぽつり。年を重ねることにあまり前向きな気持ちを持てなかったことも明かしながら、それでもこのライブがあるからこそ、「生きるのを続けることが、そんなに悪くないのかな」と思えるようになったと話す。「え〜ん、初っ端からこんな話〜最悪〜!」などと自身で茶化しながらも、重くなりすぎない語り口だからこそ、不意に胸に届くものがあった。もっとも、しんみりした空気だけで終わらせないのが彼女らしいところ。「ひとまず私のバースデーライブは始まったばかりということで!普段皆さん、色々なライブに行っていると思うのですが、私の楽曲群は、“イエーイ!”という、イントロが響いた瞬間に膝から崩れ落ちるタイプではないので」と冗談めかしながら、観客に求めたのは“それとない顔”(笑)。
というのも、ステージから見える客席の表情が、思った以上に「笑っていない」のだという。「それがもう、私の生前葬ですか?と思うような感じなんですよ。でも、ノレないんだよ!という気持ちもわかるので」と理解を示しつつ、このツアーでは観客に“それとない顔”をお願いしてきたという。青山はその見本を自ら示しながら、「そうすると演者の士気も上がり、より良い演奏をお届けできて、みんなもっと良いことになって、ウィンウィンじゃないですか」と笑わせる。
「次の曲もそんな感じのテンション感で聴いてもらえたらと思います!」と披露したのは、「My Tale〜moshi mosh」のスタイリッシュなRemix。デジタルな質感をまとったサウンドのなかで、青山の表情や身のこなしもどこか憑依的に変化していく。続く「イツカ」は、洗練されたサウンドの中に少しビターな余韻を漂わせる1曲に。そこから「Sweetly Lullaby」へ移ると、ウッドベースとサックスの音色が心地良く重なっていく。ビタミンカラーの照明の下、最後にポーズを決める姿は、どこかミュージカルのワンシーンのようだった。
「皆さん、それとない顔がお上手でした」と観客を褒める一方で、「楽器ってすごいですよね」と、ギターやベース、管楽器などを自在に持ち替えながらステージを彩るメンバーたちに改めて感嘆。そして、そのなかでピアノ1台を前にツアー全公演を支えてきた杉へのリスペクトを語った。仙台、大阪の昼公演の内容にも少しだけ言及したが、その詳細は「門外不出」ということで、このツアーに足を運んだ人だけの思い出としてそっとしまっておくことに。
表情豊かな歌声と音で季節を巡った中盤戦
そしてここからは、季節の移ろいを描くようなアコースティックブロックへ。ピアノとアコースティックギターのみで紡がれる「あやめ色の夏に」は、元々の温度感を残しながらも、夏の日陰から眩しい場所をそっと見つめているような、しっとりとした静けさをまとったアレンジに。
その空気を引き継ぐように、今度は「終点のない列車」へ。バンドサウンドが少しずつ加わっていくなかで、タンバリンや管楽器の音が冬の景色を広げていく。爽やかなアコースティックギターの響きに導かれ始まったのは、ソロデビュー曲であり、青山自身が作詞を、矢吹香那が作曲を手掛けた「Page」。アイリッシュ/ケルト音楽を思わせる軽やかなサウンドで、春の風景が遠くまで開けていく。青山も「一緒に!」と呼びかけながらステージを端から端へと移動し、観客との一体感を高めていった。
一連の曲を終えると「夏から冬へ、そして“Page”で春へというのがやりたかったの!嬉しい!本当に嬉しい!」と声を弾ませる。季節や景色が少しずつ移ろっていくように構成された中盤の流れは、バンド編成だからこそ描ける豊かな音の旅でもあった。
「データを組み合わせてライブで届けることはなかなか難しいので、バンドがいないとできないんです。(ピアノの)杉さまの負担がデカすぎるのですが……本当にいつもありがとう」とお礼を言いながら、バンドメンバー紹介へ。
サックスを主にしながら、フルート、シェイカー(この日は4つ用意)、バスクラリネットまで操る石井、バースデーライブ5年連続皆勤賞のベース・前田、キーボードだけでなくギターもこなす小幡、年齢非公開のミステリアスなドラムの山崎さんと、愉快なよぴぴん家BANDとのやり取りが続く。演奏力の高さはもちろん、青山のトークを受け止め、時に広げていくバンドの存在が、このライブを支えていた。
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声優としてお芝居をすることに、ちゃんとマジになりたい
「次は皆さんと一緒に(ライブを)作っていこうかな」と客席に一歩近づき、小幡が作詞・作曲を手掛けた「メイド・バイ・ユー」に。バンドメンバーのソロも挟みながら、ステージにはハッピーなムードが満ち溢れ、客席には自然とハンズクラップが広がっていく。その甘やかな一体感を、燃え盛るような赤へと塗り替えたのが「オクビョウヒーロー」だった。真っ赤に染まるステージで、異色のロックナンバーを前のめり気味に歌い上げる青山。観客の拳も自然と高く上がり、会場の熱量は更に増していく。そこへ「ハンズクラップする準備はできてますかー!」と畳みかけるようにポップに弾ける「STEP and CLAP」へ。青山自身もクラップをして、ジャケットを彩る白いレースの花が揺れるなか、“その優しさの裏側を抱きしめてあげたい”のフレーズで客席へそっと手を向け、抱きしめるようなジェスチャーを見せた。そして、曲のラスト、「せーの!」の掛け声を合図にジャンプでフェードアウトするかと思いきや、そのままハッピーバースデーソングへ突入。青山もすぐさま反応し、自ら「ハッピーバースデーよっぴー!」と歌い出す。祝われているはずなのに、誰よりも楽しそうにその流れに乗っていったかと思えば、歌い終えるなり「なんか疲れちゃった……」とぽつり。祝福の空気すら軽やかに笑いへ変えてしまう、その緩急もなんとも青山らしい。ステージにはこれまでのジャケット写真がプリントされたケーキが登場。
青山が喜んでいると「これだけだと思われたら困る」とバンマスの木原からサプライズでプレゼントが。封筒を手渡され「……まさか株?」と、期待と警戒が入り混じるような反応をしつつ、蓋を開ければ、なんと人間ドックのチケット!しかも“上限金額なし”という太っ腹な内容で、30歳を迎えた青山への愛情と健康祈願が詰まったプレゼントとなった。木原はひょうひょうとした口調で「30歳になるんだから健康が一番でしょ。長生きしなさい」とひと言。更に「予約してあげようか?」と伝えると、青山は慌てたように「いや、マジで大丈夫です」ときっぱりと返し、観客を笑わせた。
人間ドックの話の流れから、人間ドック経験の有無を観客&バンドメンバーに尋ねると、未経験者はおよそ半数。バンドメンバーの中にも受けたことがない人がいるとわかり、青山は「結構いるじゃん!」と驚く。笑いに包まれたやり取りではあったが、自分だけでなく、観客にも健康でいてほしいという思いから、「みんなも人間ドック行こー!」と呼びかけ、自分が健康であることがファンの幸せにも繋がるのだと語った。
更に、今回のバースデーライブが一区切りになる理由についても言及。「深い理由があるというわけではなくて、声優としてお芝居をすることに、ちゃんとしっかり向き合いたいと思っていて。音楽やライブに対しても、手を抜きたくないですから。今のままだと、どこかで妥協しなきゃいけなくなる。それだったら、一旦お休みしてみるか!と、無理を言って(所属する)テイチクエンタテインメントにお願いして……」。冗談めかした言い方の奥には、どちらの表現にも誠実でありたいという想いが伝わってくる。
そして、これまで多くの作品に出会い、“命”を吹き込むことができたのは「昔から私をなぜか信じて、応援してくれるワグナーの人たち」がいたからだと語る。“ワグナー”という言葉に客席が沸くと、その反応に「ヤバい!今、なんか墓から(蘇ってきた)」と叫び、ドッと笑いが広がった。その光景を微笑ましく眺めていた青山だったが、声色を少し引き締め、「でも、本当にそう思っているんです。これからも、色々な作品に出会っていくと思います。それでまた新しい自分になって、知らなかった自分を見つけて、もっともっと強くなった状態で、皆さんにまた招集をかける日がくると思います。私がまた、ライブをやりたいな、音楽を作りたいなってなった時に、今日繋いだ縁が、ビビビッと共鳴して、“呼ばれた気がする”って、また遊びに来てもらえるように。そういう関係になれたらと思います」と笑顔を見せた。
そうした思いを込めて歌われたのが、日食なつこが書き下ろした最新曲の「lull」。旅の途中にある自分たちへ、「今日は休もう」と柔らかく語りかけるこの曲には、“小休止”もまた、次の場所へ向かうための前向きな休息なのだと感じさせる響きがあった。
ラストの曲に進む前に、デビューからこれまでの道のりを振り返る。2013年に“声優・青山吉能”として人前に立ち、2014年1月10日に声優としてデビュー。そこから13年。「ええっ、13年!?衝撃!(笑)」と自分で言いながら苦笑する。
「あの頃は無敵でした。何も知らないからこその強さがあったし、今は色々なことを知ったからこその弱さがある」。そう語ったうえで、その弱さもいつか強さになると信じて歩んでいきたいと伝え、改めて感謝を述べたのだった。
そして「出会えたのは偶然ではなく、必然だったと思います。また再び、同じ縁で出会えると思っていますので、その日まで、どうかお元気で!」と明るく約束。その言葉の最後の一音に重なるようにイントロが鳴り始め、ステージを照らすライトも一段明るくなり、ラストナンバー「帰ろうよ」へ。笑顔で歌いながらも、“本音は聞かないで 涙が溢れそう”のフレーズには、いつも以上の情感が宿っているように感じる。もちろんその歌声は寂しさだけにとどまらない。明るく手を振り合う景色の中で響いた「帰ろうよ」は、また会うための約束の歌だ。
「皆さん、絶対に幸せになってくださーーーーい!」と叫んだあと、「やりきりました〜!」と晴れやかな表情を見せる。そして最後にはマイクを通さず、「本日、そしてひとまず!これまでの青山吉能のライブをありがとうございましたー!」と客席へ深々と頭を下げた。軽やかでありながらも、集大成的なライブであった。今後、新しい作品、新しい自分との出会いを重ねた先で、青山吉能が再びどんな音楽を鳴らすのか。それぞれの日々を元気に歩んだ旅路の先で、「おかえり」と言える日がくることを楽しみに待ちたい。
<セットリスト>
01. Grown Up
02. ルーガルー
03. My Tale〜moshi moshi (Remix)
04. イツカ
05. Sweetly Lullaby
06. あやめ⾊の夏に
07. 終点のない列⾞
08. Page
09. メイド・バイ・ユー
10. オクビョウヒーロー
11. STEP and CLAP
12. lull
13. 帰ろうよ
関連リンク
レーベル公式サイト
https://www.teichiku.co.jp/artist/aoyama-yoshino/
公式X
https://x.com/Yopipi555
公式YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCzzJMl1tE4qZOWG355Ji0dQ
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